THE BEAT GARDEN「六本木クラス」挿入歌とともに、愚直に歩んできた10年のその先へ (2/2)

Gaho特有の歌とトラックの距離感

──Gahoさんの「START」をカバーするにあたって、どんなことを心がけましたか?

U まずはオリジナル曲をひたすら聴き込んで、韓国語の歌詞を見ないでも歌えるくらいに完コピしました。Gahoさんって、歌がうまいのは当然として、すごくマイルドな歌声なんですよ。決して歌い上げたり声を張ったりするのではなくて、それでも聴いていると高揚感を掻き立てる……そういう不思議な魅力がある歌を歌う方なので、それを僕らが日本語でどう表現したらいいかをとても悩んで、今の形になるまでに試行錯誤を繰り返しました。

──例えば?

U 例えばビブラートを細かくしすぎてしまうと演歌っぽくなってしまい、この曲のテイストに合わないんです。そういう細かいニュアンスは壊さないよう気を付けました。トラックもよく聴き込むと、サビでBPMが上がっているなど精密に作られているのですが、Gahoさんはその上ですごく伸び伸びと歌っている。そういう歌とトラックの距離感みたいなものを意識しました。

MASATO Gahoさんの表現って役者っぽいというか、言語がわからなくても感情が伝わってくるような歌い方をされる方なんです。これはきっと声のニュアンスやトーンなどで、心に秘めた熱い思いを歌声に込めているからなのかなと僕らは思って。だからこそシンガロングの部分も、聴く人たちが自然と声を出したくなるのかもしれないなと。

MASATO

MASATO

──この曲の日本語詞はUさんが担当したそうですね。どういった形で制作していったのでしょうか?

U まずは韓国の友人に手伝ってもらってオリジナルの歌詞を直訳して、それをもとにオリジナルに忠実な歌詞にすべきか、日本語ならではのニュアンスを積極的に入れていくべきか悩みました。最終的には僕らしい日本語を積極的に入れていくことになったのですが、それを再び韓国語に訳し直したときに、あまり大きなズレが起きないようには気を付けました。

──「Uさんらしさ」は、具体的にどんなところに表れていますか?

U さっきREIが言ったように「梨泰院クラス」の中で恋愛ストーリーは重要な要素ですし、そこは「六本木クラス」でも変わらないと思ったので、例えば原曲にはなかった恋愛の要素を日本語詞では随所にちりばめました。

次は自分たちのオリジナル曲で

──REIさんとMASATOさんは、Uさんが書いた歌詞の中で特に気に入っているフレーズなどありますか?

REI 「もう見失ないたくないんだ 自分を」という部分ですね。ここは僕が歌っているのですが、THE BEAT GARDENのメンバーとして活動していく中で、自分を見失いそうになる瞬間が何度もあったので、そういう過去の自分の気持ちをこのフレーズに込めて歌っています。

MASATO 僕は「時に誰かに希望を 引きずられ恨んでしまっても」というフレーズがすごく好きです。「~してしまっても」という歌詞がすごく自分たちらしいなと思います。たとえ失敗しても、たとえ無理だとわかっていても、それでもやる。常にその精神で逆境を乗り越えてきたのがTHE BEAT GARDENなんだなと改めて思わせてもらった歌詞です。

──全国ツアー「in your tour 2022」のファイナル公演で「Start Over」をライブ初披露されました。そのときの手応えはいかがでしたか?

U 「今日、初披露となるあの曲を……」とMCで紹介しただけで大きな拍手が沸き上がって、ファンのみんなの期待が伝わってきました。このドラマや楽曲への思い入れが強いんだなと思いましたし、その拍手を受けて僕らはこんなにも愛されているんだなって思えて。

REI イントロが鳴った瞬間、フロアの高揚感を肌で感じて「ああ、ヒット曲ってこういうことなんだ」と思いました。すごくうれしかったのと同時に「次は自分たちのオリジナル曲でこういう反応をもらわなければ」という気持ちにもなりました。

MASATO みんなが知っている曲で、日本では僕らが唯一そのオフィシャルカバーを許されたわけですから、しっかりと受け継いでいかなければと強く思いましたね。

THE BEAT GARDEN

THE BEAT GARDEN

──「Start Over」は、THE BEAT GARDENにとってどんな曲ですか?

U 僕らTHE BEAT GARDENの、これまでの道のりを認めてくれた曲になったと思っています。この曲を通して僕らの存在を知ってくれた人も本当にたくさんいるし、そこから僕らの過去曲を掘り下げて聴いてくださっている人も少なくないんですよね。しかも僕らの曲に対してもいい反応がたくさんあって、自分たちを信じてここまでやってきて本当によかったと思えました。きっと昔からファンでいてくれた人たちも、「THE BEAT GARDENを信じて応援してきてよかった」と思ってくれているんじゃないかなと思います。

自信を持って届けていくことが次の10年につながる

──THE BEAT GARDENは、結成からは10年、メジャーデビューを果たして6年という月日が経ちました。そんな中でコロナ禍に突入し、メンバー脱退もあっていろんな試練で苦しんできたと思います。それでもTHE BEAT GARDENを続けてこられたのはなぜだと思いますか?

MASATO 僕自身は、「この2人がいたから」と思っています。僕らは友達から始まって、一緒に歌っているだけで楽しかった音楽がいつしか仕事に変わっていって……。もちろん、迷いや葛藤もこの10年の間にあったんですけど、それでもこの2人とだったら大丈夫だとずっと信じていたし、何か1つ試練を乗り越えるたびに「この2人でよかった」と毎回感じていたんです。その積み重ねがこの10年になったんだと思いますね。

U 僕らは3人とも、何にもできないんですよ。最初は曲も作れなかったし、歌詞も書けない状態からのスタートで。だからこそ必死にやってきたのがお客さんにも伝わって、みんなも応援してきてくれたんじゃないかなと。僕らは誰も今まで聴いたことがないような、革新的な曲が書けるわけではないけど、それでも出会った人たちの心を「決して離したくない」という熱い気持ちとか、路上ライブで目の前にいる人の心を「絶対につかみたい」という思いとかがあるので、それをしっかり受け止めて、ずっと泥臭くつながってきてくれたファンや仲間たちがいてくれるんだと思います。そういう出会いが少しずつ広がっていくことへの希望を追いかけ続けてきたからこそ、ここまで続けてこられたのかもしれないです。

──全国ツアー「in your tour 2022」も無事完走し、今後はどのような活動をしていきたいですか?

MASATO 今回のツアーを通じて、今のチームならもっと勝負ができるという実感があったので、自分たちじゃないとできない活動、自分たちじゃないとできない音楽を、これからはしっかりと自信を持って届けていきたいです。その積み重ねが、次の10年、20年につながっていくんじゃないかなと。

REI ちょうど最近「THE BEAT GARDENは今、やりたいことをどんどんやっていいフェーズに入ってきているよね」という話をメンバーでしていたところだったんです。これからはさらに視野を広げていきたいし、僕はトラックメイキングも担当しているので、そこでもやりたいことにどんどん挑戦していきたい。例えば歌モノとは別に、もう少しサウンドやトラック重視の楽曲にもトライしてみたいです。

U コロナ禍になって直接会えなくなっても、ファンはみんな音楽で自分に共感してくれたり、つながったりしてこられたからこそ今もずっと一緒にいてくれていると思うんです。彼らのことはもちろん大切に思い続けるし、「Start Over」で僕らを知ってくれた人たちとの縁もどんどん広げていきたい。まだまだひよっこの僕らがこんなことを言ったら先輩たちに怒られてしまうかもしれないけど、「イドエンターテインメントと言えばTHE BEAT GARDEN」と認識されるようになりたいです。それも事務所への恩返しの1つなんじゃないかと今は思っているので。

THE BEAT GARDEN

THE BEAT GARDEN

プロフィール

THE BEAT GARDEN(ビートガーデン)

大阪の専門学校で知り合ったU、MASATO、REIからなる3人組ボーカルユニット。EDR(エレクトリックダンスロック)という音楽スタイルを掲げ、東京を中心に活動している。2015年に1stフルアルバム「WILL」をリリースし、2016年7月にユニバーサルシグマよりシングル「Never End」でメジャーデビュー。その後もコンスタントにリリースを重ね、2017年8月に「I'm」、2019年3月に「メッセージ」とアルバムを発表。2020年1月に東京・新木場STUDIO COAST(現 USEN STUDIO COAST)でワンマンライブを成功させた。結成10周年を迎えた2022年の8月4日にドラマ「六本木クラス」の挿入歌「Start Over」を配信リリースした。