TEAM SHACHIインタビュー|全力でしゃち誇り、愛にあふれた13年。

TEAM SHACHI、2025年12月に解散──。

2012年の春、愛知県は名古屋城のふもと、ご当地アイドル・チームしゃちほことして“路上デビュー”を果たした秋本帆華、咲良菜緒、大黒柚姫、坂本遥奈。デビュー当時13歳と14歳だった彼女たちはまもなく27歳と28歳になる。2人のメンバーの卒業やグループの改名、長年タッグを組んできたレーベル・unBORDEとの別れ、プライベートレーベル・ワクワクレコーズの設立など、13年も続けていればさまざまなことが起きる。それでも4人は歩みを止めることなく、これまで全力で駆け抜けてきた。

何度も話し合いを重ねて決定したという解散は、残念なことではあるが、取材に参加した4人の表情はどこか晴れやか。1万字を超えるこのインタビューでは、いつでも前向きで全力だったという13年間を振り返り、9月22日にリリースされた最後のEP「DERA Journey!!!!」の収録曲に込めた思いを聞きつつ、彼女たちにとってTEAM SHACHI、そしてチームしゃちほことはなんだったのか、そしてタフ民(TEAM SHACHIファンの呼称)はどんな存在だったのか、話を聞いた。

取材・文 / 清本千尋撮影 / 曽我美芽

愛のグループと言えばシャチ

──いやー、解散……ですか。永遠に続くものはないですが、インディーズ時代からずっと取材させてもらっていたので、すごく寂しい気持ちです。2012年4月にチームしゃちほことしてお披露目されてから13年。当時、秋本さん、咲良さん、大黒さんは中学3年生になりたての14歳、坂本さんは中学2年生になりたての13歳だったので、人生の半分をチームしゃちほこ改めTEAM SHACHIのメンバーとして過ごしてきたことになります。

坂本遥奈 13年って小学校1年生だった子が短大を卒業するくらいの年数なんですよ。

大黒柚姫 26歳になったんだもんね……。

咲良菜緒 え? 柚姫サバ読んでる?

大黒 ハル(坂本遥奈)の話だよ!

秋本帆華 あはは。

TEAM SHACHI

TEAM SHACHI

──チームしゃちほこ時代は「人間50年、アイドル5年、尾張名古屋にしゃちほこあり」というキャッチフレーズを掲げていて、「気付いたら5年を超えてましたね」なんて話をしたこともありましたが、アイドルを13年続けてみて、今はどんな思いがありますか?

秋本 続けてきて正解だったよと、チームしゃちほこを始めた頃のまだ何もわからなかった頃の自分に言ってあげたいです。いろんな苦楽をメンバー、スタッフさん、そしてファンのみんなと一緒に経験したからこそ、解散までの期間をハッピーラストイヤーって言えると思うので。

大黒 1つのことを13年も続けるなんて、この先もなかなかないと思う。仲間たちと一緒に目標地点に到達するにはどうしたらいいのか、全力で考えて精一杯向き合った13年で、かけがえのない時間だったと思います。

咲良 大人になった今、これまでの活動を振り返るとずっとずっと本当に愛にあふれたチームにいさせてもらったんだなと感じます。事務所もレコード会社もみんな私たち1人ひとりのことを考えて、「こんなことまでやらなくていいのに」ってことまでやってくれたと思うんです。このチームじゃなかったらここまで気持ちよく続けてくることはできなかったなと思います。

坂本 チームしゃちほこ時代はスタッフさんが用意してくれた“大きな壁”を必死で乗り越えていたなと思います。TEAM SHACHIに改名してからは、私たちが先頭に立って引っ張っていくぞという意識に変わって、10年以上同じチームでも常に新しいことをやらせてもらっていたので、その経験が糧になって、人間的にすごく強くなったと実感しています。

──傍から見ていると、初期の頃は大人が用意したトリッキーなものに10代のメンバーたちが全力でぶつかっていって、その化学反応が面白いグループという印象でした。スタッフたちも楽しんでいたからこそ、さっき咲良さんが言ったように「やらなくていいことまでやってくれた」のではないかと推察します。普通に生きてきたら急に直面する壁も、愛があるからこそわかりやすく提示してくれた。だから、メンバーも楽しく乗り越えることができたのだなと思います。

坂本 本当にそうだと思います。さっき菜緒が言ったように愛にあふれたチームだった。いろんな方の愛と支えがあってのグループ……その代表だと思います。うん、愛のグループと言えばシャチだと胸を張って言えると思います。

「鯱詣」は大きなターニングポイントだった

──その愛にあふれたチームが解散という道を選ぶことになった、その核心にも少し迫りたいと思います。いつ頃そういった話題が出てきたんでしょうか?

大黒 3年前じゃない?

咲良 それくらい前になるね。

──理由やきっかけは?

秋本 現状維持というか、このまま続けていくことは可能だったんです。でも、TEAM SHACHIの未来、そして各々の未来を考える中で、アイドルシーンにおいてこういう存在でありたいというビジョンがあって、この4人の負けず嫌いな性格上、現状維持で続けていくのは違うなと思ったんですよね。この決断に至るまでも本当にがむしゃらにやらせてもらって、1つも悔いがないとは言えないけど、やれることはやったうえで解散を決めました。

秋本帆華

秋本帆華

──TEAM SHACHIになってからのわかりやすい目標と言えば、「また日本武道館でワンマンをやりたい」ということですよね。それがもっと早いうちに叶っていれば、また違う未来があった?

咲良 そうですね。目標に向かって着実にステップアップしているなら続けるべきだと思うけど、無謀に追い続けるのはちょっと違うなって。「この夢を叶えるためにはこれが必要だよね」とか、そういうことをずっと考えてきて、例えば年明けにやったTOKYO DOME CITY HALLでの「鯱詣」も、その要素の1つだったので、成功させようと必死でした。あのライブは自分たちにとって大きなターニングポイントだったと思います。あの必死さに薄々こういう未来を察していたタフ民(TEAM SHACHIファンの呼称)もいたと思うし、だからこそすごい追い上げでチケットが売れたんですよね。ありがたかったです。

坂本 私たちももう気付けば20代半ばで年齢的にも将来を考える時期になってきて、夢に期限を付けたというか。「この時期までには武道館公演を成功させたい」という強い思いがあったので、みんな納得したうえで解散を決めました。

はちゃめちゃだけど、本当に面白かった

──TEAM SHACHIにインタビューするのはこれが最後になるかもしれないので、この13年で印象的だったエピソードなどを聞きたいと思います。音楽ナタリーはチームしゃちほこ時代から皆さんの活動を追ってきました。今回はこれまでに掲載した記事を見ながら活動を振り返ってみたいなと。最初の記事、そして初めて取材に入ったのがこの記事ですね。

秋本 懐かしい!「名古屋メジャーデビュー」って何?と思いました(笑)。

大黒 「10冠王ツアー」とかもやってたよね。で、3冠多く取っちゃったからデビューを3カ月遅らせますとか言われて(笑)。

咲良 あったー(笑)。

咲良菜緒

咲良菜緒

秋本 はちゃめちゃだけどさ、本当に面白かったよね(笑)。

──そして2013年6月19日にシングル「首都移転計画」で“日本先行メジャーデビュー”をします。

坂本 日本先行メジャーデビューって何? メジャーデビューということで話をしますね(笑)。今年の6月19日もタフ民たちが「『首都移転計画』の日だ」と盛り上がっていて、ひさびさにミュージックビデオを観たんですよ。そしたらめっちゃ面白くて。

秋本 なんか硬い飾りを頭に付けて衣装もかわいくないんだよね。「合ってる?これで?」と思った(笑)。

大黒 全身金ピカのスパッツみたいなの着てね(笑)。

坂本 そうそう。「愛の地球祭」のMVではメンバーが増えたりもしてさ。最初の頃のMVは本当に攻めてるよね。今観ると自分なのに自分じゃないみたいで、客観的に見て、「こんなグループがいたら推すわ」と思う。ほかのグループにはない面白さがあったよね。

──ももいろクローバーZや私立恵比寿中学の後輩で、姉たちの恩恵に預かろうと妹キャラ全開、そしてかなりエッジの効いた音楽性のチームしゃちほこの出現は、アイドル戦国時代におけるセンセーショナルな出来事だったと思いますよ。

咲良 (笑)。本当に変なことばっかりやってましたよね。

坂本 「愛の地球祭」とか「いいくらし」みたいな曲を最初のほうに出すってやっぱり変だよね……?

──普通のアイドルはアシッドハウスの曲を出さないですからね(笑)。当時のインタビューではアシッドハウスの名機・Roland TB-303に触れてもらいました。しかもMVは坂本さんが高校受験のためにお休みしていて、代わりにエド・はるみさんが出演していますし。

大黒 「いいくらし」、本当に変な曲だけどめちゃくちゃ刺さってる層がいたよね。

──先ほどから「変」という言葉がたくさん出てきますけど、「首都移転計画」「愛の地球祭」「いいくらし」あたりの曲はリリース当時も変だと思っていたんですか?

秋本 やるとへんてこりんな空気になる曲だと思っていました。

大黒 でも菜緒は「いいくらし」が大好きだったよね。

咲良 うん、大好き。でもキーが高すぎるんだよね。当時のしゃちはなぜか裏声禁止で、地声で歌うように言われていて本当にキツかった(笑)。