TEAM SHACHI「待ち合わせに、飽きもと。」インタビュー|TikTokバズから生まれた“踊れる”EP

2023年夏、TEAM SHACHIは「待ち合わせに、飽きもと。」というTikTokアカウントを素性を隠した状態で開設し、街中で全力で踊り出す動画を投稿。1000万回再生を突破する動画を生むなど大きな注目を浴びた(参照:TEAM SHACHI、正体隠してTikTokで大バズり!ネタばらしまでの裏側を、自ら仕掛けたメンバーが語る)。それから約1年、今年8月7日にTikTokアカウントと同じタイトルが付けられた新作EP「待ち合わせに、飽きもと。」がリリースされた。

本作の収録曲に一貫するテーマは、男女問わず誰もが楽しく踊れる楽曲。中華風のサウンドや楽曲終盤の“炒飯タイム”が印象的な「のんあるすいけん feat.炒飯」、TikTok「待ち合わせに、飽きもと。」がバズったきっかけの「タキオのソーラン節」をカバーした「TEAM SHACHIのソーラン節(南中ソーラン)」、名古屋を舞台にした踊りの祭典「にっぽんど真ん中祭り」の総踊り曲「まつりびと~カキツバタ~」、ライブの鉄板曲としてすでに定着している「沸き曲」の4曲が収められている。

音楽ナタリーではTEAM SHACHIの4人にインタビュー。TikTokで得た手応えを振り返ってもらいつつ、EPの収録曲について1曲ずつアピールしてもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 佐々木康太

まだまだ可能性ってあるんだ

──TikTokアカウント「待ち合わせに、飽きもと。」が始動してから約1年が経ちます。この試みを振り返ってみて、どのような手応えを感じていますか?

秋本帆華 正体を隠した状態でハル(坂本遥奈)が「ソーラン節」を全力で踊る動画が最初にバズって、1000万回再生を記録したんですけど、そのときは「狙ってバズれるものって本当に存在したんだ!」とびっくりしました。TikTok経由でシャチのことを知って、そこから初めて現場に来てくれる方がいるという現実を目の当たりにすると、全部がつながってるんだなとうれしくなります。

咲良菜緒 しかも、TikTokの試みから「沸き曲」という曲が生まれて。フリーライブやフェスでパフォーマンスすると、私たちのことを知らない方も「沸き曲」が始まった途端にゾロゾロと前のほうに集まってくれるんですよ。もっと言えば、シャチ自体のことよりも先に「沸き曲」を知ってくれていて、「なんか聴いたことあるなあ」と思っている様子がお客さんからうかがえます。本当にTikTok効果は絶大だなと感じています。

大黒柚姫 TikTokを撮影していて「『待ち合わせに、飽きもと。』さんですか?」と声をかけていただくことも多くなりました。最初にそうやって声をかけられたのはTikTokを始めてすぐの頃で、そのときは「知ってくれている人がいるなんて信じられない!」という気持ちだったのに、そこから徐々にそういう機会が増えていきました。正体を明かしてからは「ずっと動画を観ていたんですけど、アイドルだったんですね」と声をかけてくださる方もいて、「待ち合わせに、飽きもと。」の広がりと同時にシャチの名前も少しずつ広まっているんだなと実感しています。

坂本遥奈 TiKTokを始めたときは、さすがにそこまでは想像できていなかったもんね。

TEAM SHACHI

TEAM SHACHI

咲良 アカウント名まで覚えるってかなりのことじゃないですか。動画を流し見して、映ってる人の顔とかを視覚的に覚えることはあるけど、アカウント名まで認識してくれているのはちゃんと動画を観てくれているからだと思います。

──大半の動画で踊っている坂本さんは本当に大活躍ですね。

秋本 ハルがいなかったら成立しなかったもんね。

坂本 いやいや。チームしゃちほこからTEAM SHACHIに改名して以降、メンバーとスタッフさんが一緒に話し合うことが増えたんですけど、そこで決めたことの1つがTikTokについてでした。「絶対に1000万回再生いくようなアカウントを作ろう!」と話していたので、ほーちゃん(秋本)と一緒で「本当に夢って叶うんだ!」と。しかも結成13年目の私たちにそれができたことがすごくうれしくて、まだまだ可能性ってあるんだなと思ったし、シャチらしい要素の強いダンス動画でバズれたこともうれしかったです。

咲良 待ち合わせをするスタイルにたどり着くまでいろんな撮り方を試したんですけど、こういう形になったのは必然だったのかな。ネタバラシも含めいろいろいい流れも作れたし、何よりもメンタルが鍛えられました(笑)。

──一般の方を巻き込んでいく面白さもありますよね。

咲良 ノリのいい方が本当に多くて。

坂本 いろんなところで撮影して感じたんですけど、東京の方はちょっと慣れてますよね。あまり驚いてもらえないというか(笑)。一番手応えがあったのは大阪かな。

大黒 目の前にいた家族が立ち止まって、「えっ?」みたいなリアクションをしていて。

坂本 「踊りがいがある!」ってワクワクしました(笑)。

──ちなみに、アカウント名はどのように決めたんですか?

大黒 最初にスタッフさんから「これはどう?」と提案されて。

咲良 動画を観てくれた人たちもそう感じたと思うんですけど、最初は「なんだこの名前は?」って(笑)。句読点が含まれているアカウント名もなかなかないですし。「飽きもと。」をほーちゃんの名字とかけていたりとキャッチーなので、今となっては本当にいい名前だなと思います。

──最近は一般の人たちのみならず、土佐兄弟さんやパパラピーズのじんじんさんも巻き込んでいますよね。

秋本 これはテレビ番組(メ~テレ「パパラピーズのスゴイじゃんTV!!」)でご一緒させていただいたことがきっかけで。

秋本帆華

秋本帆華

坂本 もともとは名古屋でのライブに合わせて出演させていただくことになったんですけど、「シャチが出るならTikTokのバズをテーマにしよう」と番組の内容を急に変えていただいて。さらに、番組収録が終わってから「ちょっと1本いいですか?」とお願いしたら「全然いいよ、撮ろうよ!」ってTikTok用の動画を一緒に撮ってくださったんです。

──TikTokアカウント「友達がかわちぃ」発のグループで、TEAM SHACHIと合同フリーライブツアーを行ったSharply #やFlutter ♭も含め、TikTokを通じて新しい出会いがどんどん増えていますね。

秋本 ファンの方もそうですけど、TikTokを始めていなかったら出会えなかった方々とたくさんつながることができましたし、シャチのことを知ってもらうという点においてはすごく大きなきっかけになりました。

「踊る」というテーマが4曲すべてに共有している

──TikTokで踊った「ソーラン節」や「沸き曲」からいろいろなつながりが生まれ、そこからEP「待ち合わせに、飽きもと。」誕生へと至りました。今年2月発売のフルアルバム「笑う門には服着る」は「さまざまなジャンルの服(=曲)を着たTEAM SHACHI」というテーマで、TEAM SHACHIの“最新版カタログ”のような内容でしたが、今回のEPは「踊る」という大きな軸が存在しているから統一感が強いですね。TikTokでの皆さんの姿を知っている方からしたら、どんな内容かすぐに伝わると思います。

坂本 ちっちゃい子から大人まで、男女問わずみんなが楽しく踊れるという今作のテーマは、TikTokにつながっていると思っていて。「のんあるすいけん feat.炒飯」は槙田紗子さんに振り付けていただいているし、「まつりびと~カキツバタ~」は名古屋のお祭りのための曲だし、「踊る」というテーマが4曲すべてに共有しているので、私たちの強みを生かした1枚になっていると思います。

──今のTEAM SHACHIを語るうえでの名刺代わりになる1枚だと思いました。ここからさかのぼってアルバム「笑う門には服着る」を聴くと、TEAM SHACHIの広がりをより一層楽しめますし。

坂本 確かに、そういう順番で聴いてもらえるともっとシャチのことを深く知ってもらえると思います。

──ここからEPの収録曲についてじっくり伺いたいと思います。まずは「のんあるすいけん feat.炒飯」から。

秋本 TikTokと同じく、タイトルからして「なんだこれは?」って思いますよね。ノンアルなのに酔拳、しかも「feat.炒飯」という(笑)。

咲良 炒飯さんって人が参加してるのかなって思われそう(笑)。

秋本 楽曲終盤の“炒飯タイム”で曲調がユーロビートに変わって、みんながパラパラを踊る中、私は中華鍋を持ちながら炒飯を作る動きをするんです。その踊りを見て「ああ、そういうことだったのか!」とわかると思います。全体的にはかわいらしい中華テイストの曲なんですけど、シャチらしさもあるコミカルな曲になっています。

大黒 「のんあるすいけん feat.炒飯」というタイトルと“炒飯タイム”の要素が先に決まっていて、それをもとにいろんな作家さんから曲を募ったんですけど、この楽曲が満場一致で「シャチに合いそうだね」と。イントロからインパクトが強かったので、即決でした。

咲良 楽曲コンペでは特撮ドラマのテーマっぽい曲やバトルをイメージさせる曲もあれば、もっとキラキラなアイドルソングもあって。いろんな作家さんがめっちゃ個性を発揮していました。

咲良菜緒

咲良菜緒

大黒 ゴリゴリのダンスナンバーもあったし。聴き比べるのも面白かったよね。

咲良 でも、TikTokでかわいく踊れる曲が欲しいよねということで、今回はこの曲調になりました。終盤のパラパラも含め、いろんな遊びが盛り込まれているからパフォーマンスしていて楽しいです。

坂本 パラパラが入っていることでよりシャチらしい曲になっていると思います。

──この曲を歌うとき、皆さんの中でどういうことを意識しましたか?

大黒 私はハイパーかわいく歌おうと決めてレコーディングに挑みました。普段はかわいく歌うことをあまり意識してないんですけど、自分自身、かわいい歌声もカッコいい歌声もいろいろ出せるアイドルさんを推しがちなので、私もそうなりたいと思って今回は“カワボ”に挑戦しています(笑)。

坂本 この曲は「あなたに酔ってるよ」ということをかわいらしく伝えている印象があって。ノンアルだからお酒での酔い方とは違うけど、テンション的にはふわふわしている女の子をイメージして、いつもより甘めな感じの歌い方をしています。

──坂本さんの「ねえねえ、聞いて」「酔っちゃった~」というセリフもかわいらしいですね。

秋本 このパートはグループ内のオーディションで勝ち取ったんだよね。

坂本 セリフパートは2カ所あるんですけど、聴いた人をキュンとさせられるようにがんばりました。

──ミュージックビデオもかわいらしい仕上がりで、繰り返し観たくなります。

秋本 いいですよねー。

坂本 撮影が超楽しかったんですよ。

咲良 シャチらしさがめっちゃ詰まっていて、いいMVだよね。

大黒 私も何回も観てます。

──メンバー1人ひとりのキャラがしっかり伝わってきます。

坂本 MVの中に登場する必殺技も4人の個性が出ているし。

大黒 シャチのことをよく知らなくても、こういう立ち位置なんだろうなって想像がつくよね。

秋本 戦っているシーンなんて、本当に素の私たちだから(笑)。

咲良 全然作ってない。

坂本 基本長回し撮影で、机の上にあるノンアルの缶を巡ってバトっていくんですけど、ほぼアドリブなんですよ。ほっぺを引っ張ったり、唐辛子を振り回したり、いろいろやってます(笑)。

大黒 リップシンクとの対比が効いていていいよね。普段のわちゃわちゃしたシャチの雰囲気もあれば、ほろ酔いっぽい感じの女の子らしい表情もあってめちゃくちゃ見応えがあります。

大黒柚姫

大黒柚姫

秋本 観てるだけで笑顔になっちゃう。

──その楽しさが、終盤の“炒飯タイム”でさらに増幅します。

大黒 わちゃわちゃした感じで終わっていくのかなと思ったら、いきなりギャルが出てくるという急展開(笑)。

秋本 この曲ができたとき、「MVを作るなら最後はみんなでギャルになってパラパラを踊りたいよね」ってメンバーと話していたんですよ。

坂本 その希望を叶えていただきました(笑)。

──MVの中では、秋本さんが本物の中華鍋を振っています。

秋本 初めて持ちましたが、めちゃくちゃ重くて、調理する方は本当にすごいんだなと実感しました。ライブのときはさすがに中華鍋は持たないですけど、実物を使ってイメージできたので、今後のパフォーマンスにも反映されるんじゃないかと思います(笑)。

大黒 ためになるMVだったんだ(笑)。

坂本遥奈が踊りに徹するソーラン節

──EPの2曲目「TEAM SHACHIのソーラン節(南中ソーラン)」はTikTokの動画から生まれた、民謡のカバーです。

咲良 TikTokアカウントの名前からEPのタイトルが付けられているし、今作で「ソーラン節」を歌いたいねと話していたんですけど、実際歌えるかはわからなくて。曲の一部に「ソーラン節」のメロディを乗せるとか、それぐらいになるのかなと思っていたんです。

坂本 カバーするにあたってマネージャーさんがいろんな方と掛け合ってくれて、許可をいただくことができました。

坂本遥奈

坂本遥奈

咲良 ここまでストレートにカバーできたのはうれしかったですね。あと、振付も「南中ソーラン」を実際に手がけている春日流さんがシャチ用のオリジナルバージョンを作ってくださって、先日振り入れしてきたところなんです。「ソーラン節」自体かなり歴史が長いじゃないですか。その「ソーラン節」が今の時代に合わせたノリになり、いろんな人に踊ってもらいたいという思いから春日流さんが新しい振付を作ってくださったので、私たちはその使命を背負ってこの曲を広めたいなと思っています。

坂本 そうだね。どんどん踊っていきたいね。

大黒 やっぱりこの曲は、今回のEPには欠かせないから。

咲良 実はこの曲、ハルがまったく歌っていないんですよ。

秋本 マイクを置いて、踊りに徹しています。

坂本 これは私からの提案だったんです。ちょうどパート的にもわかりやすく3つに分かれていたし、「だったら私は踊りに徹したほうがいいんじゃないかな?」とマネージャーさんに伝えて。だから、この曲ではTikTokと同じようにひたすら踊ります(笑)。

──サウンドにはロック的なアレンジが施されていて、しかもベースが強調されているからファンキーさが際立ちますね。

咲良 この曲、生演奏で披露したらめちゃめちゃ気持ちよさそう。

秋本 絶対に合うと思う!

TEAM SHACHI

TEAM SHACHI

大黒 ハルはバンドセットでもセンターで踊るんだよ?

坂本 バンドを背にして「ソーラン節」を踊るの? いつか絶対にやってみたい!

咲良 「海外でライブをしたいね」という話をメンバー同士でよくしているんですけど、海外公演を実現させて、日本を代表するこの民謡を世界に広めたいです。

坂本 あと、春日さんが「この曲で『NHK紅白歌合戦』に出てほしい」と言ってくださったんですよ。一般的に知られている曲というのは強いと思うし、何より楽しい振付になっているので、日本中のみんなを巻き込めたらいいなと思います。