Tani Yuukiインタビュー|ロックバラード「最後の魔法」で表現する“思い出せない切なさ” (2/2)

自分の背中を押したいのかもしれない

──11月から12月にかけては「Tani Yuuki Hall Tour 2023 "kotodama"」の開催も決まっています。前のZeppツアーからTaniさん自身は見せ方をより意識するようになったということですが、次のツアーに向けてどんな構想を練っていますか。

僕の中でいずれはすごくコンセプチュアルなライブをやりたいというのがあって。そこに向けて、今回のツアーでは単純にセットリストを組んでそれを演奏して届けるだけじゃなく、もうちょっと物語調というか、没入できるようなセクションが作れたらいいかなという話はしています。

Tani Yuuki
Tani Yuuki

──ホールツアーは初めてとのことですが、ホールならではの演出として何か考えていることはありますか?

ホールの響き方にはこの曲が合うんじゃないかとか、いろいろ考えています。ホール会場のいいところを最大限生かしたいですね。

──「kotodama」というツアータイトルに関してはどうでしょうか。

アーティスト写真やツアービジュアルには英語が入っているんですけど、その文字には今まで作った曲だったり、リリースしていないけれど昔作った楽曲の要素がちりばめられているんです。自分の思いを込めた曲をホールで歌って、聴いてくれるお客さんがいる。それによって歌が届いたと実感できるんですよね。

Tani Yuukiのアーティスト写真

Tani Yuukiのアーティスト写真

──今の自分のクリエイティブやアーティストのモードとして“言霊”という言葉が重要なものになってきていますか?

言霊って、口に出していると叶うということじゃないですか。実際にライブのときに口にするのかはわからないですけど、漠然と「ドーム公演がやりたい」とか「スタジアムでライブがやりたい」とか僕の願いを口にすることで現実になればいいなと思います。聴いてくれる人を後押ししたいとは思いつつ、自分の背中を押したいのかもしれないです。目標を言葉にすることが実現のきっかけになればいいな、みたいなことは思います。

昔ほど火が燃えてない

──ここからはさらに先の話についても聞かせてください。漠然としたものでいいんですが、次のアルバムや、この「最後の魔法」という曲の先に作っている曲について。来年にかけてのTani Yuukiはどこに向かっているのか、どういうアーティストになろうとしているのか。そのあたりってどうでしょうか? 未来に向けてのイメージはどうですか?

今言ったように「ドームに立ちたい」「スタジアムに立ちたい」というのはあるんですけれど、それはまだまだ漠然としたぼやけたもので。もっと身近なところで言うならば、今回のツアーで“言霊”に込める意味みたいなことを、スタッフと話したりもしたんです。ステージに立つ意味ってどういうことなんだろうと考えていて。

──というと?

今まで僕は誰かに認めてほしいとか、共感してほしいみたいな思いを曲を作るうえでの燃料にしてきたんです。でも、言ってしまえば、今はいろんな人に共感してもらえた状態で。その思いが叶ったんですよね。だから昔ほど“渇き”がないというか。でも、そういう渇きがない状態で、自分はアーティストを続けていく決断をしているし、続けるためには何をしたらいいんだろうかっていう。違うところが渇いている。目先の明確な目標が、正直、今の僕の中では曖昧なんだろうなと思っているんです。昔ほど心の中の火が燃えてないような感覚というか。

Tani Yuuki
Tani Yuuki

──まだ何者でもなかった時代の掻き立てるような衝動みたいなものは、今はもうなくなっている。そのうえで、アーティストとしての未来を思い描くタームになっている。

そうですね。去年から今年の前半までは、ライブをまずは駆け抜けてみようという目標があったんですよ。だからすごくがんばれたんですけど、Zeppツアーを終えたときに、その燃料が尽きた感があって。でも、ステージに立つとやっぱり楽しいし、込み上げるものがある。

──Taniさんの場合は、ここ1、2年で着実に状況は変わりましたからね。ヒットチャートに曲を送り込んだわけだし、周りから求められることは増えている。その一方で、初期衝動というものが満たされた段階にある。だから単にドームとかスタジアムでやりたいということよりも、なんでそれをやるのかという必然が芯の部分になっていくというか。

そうですよね。やっぱり、僕がライブをする理由は、求めてくれる人がいて、僕の曲や声を聴いてくれる人がいるから。自分のためというより、自分以外のためという感覚はあります。

──求められるものを背負う覚悟というか、その答えをどう探していくかというか。それこそライブを通して見えてくることもありそうですね。

そうですね。熱が冷めたってわけじゃないんです。今はニュートラルな状態なので、次のホールツアーで見えてきたらいいなと思います。また新しい発見がある気はしているので。

Tani Yuuki

ツアー情報

Tani Yuuki Hall Tour 2023 "kotodama"

  • 2023年11月3日(金・祝)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2023年11月10日(金)福岡県 福岡サンパレス
  • 2023年11月23日(木・祝)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年12月1日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2023年12月8日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年12月13日(水)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2023年12月22日(金)大阪府 フェニーチェ堺
  • 2023年12月24日(日)東京都 TOKYO DOME CITY HALL

プロフィール

Tani Yuuki(タニユウキ)

1998年生まれ、神奈川県茅ヶ崎出身のシンガーソングライター。配信シングル「Myra」「W/X/Y」がティーンを中心に支持され大ヒット。その優しく切ない歌声と、恋愛に思い悩む日常を描いた歌詞がSNSで人気を集めている。2021年12月に初のアルバム「Memories」を配信リリースし、2022年4月にはタワーレコード限定でCD盤を発表。2023年3月に2ndアルバム「多面態」をリリースした。最新作は10月配信の「最後の魔法」。11月から12月にかけて自身初のホールツアー「Tani Yuuki Hall Tour 2023 "kotodama"」を行う。