田村ゆかりインタビュー|8年ぶりアニメソングは重厚なバラード (2/2)

5拍子の「Pocket World」、ドラマチックな「ふたりになろうよ」

──ひさびさのシングル制作に関してはいかがでしたか?

なんだろう? 単純に「曲が少ないな」っていう。

──(笑)。

大昔にシングルを出してた頃は、カップリング曲も多かったので。

──確かに、田村さんのシングルというと4曲入りがスタンダードになっていたので、3曲とはいえ制作の感覚としては「少ないな」と感じるかもしれないですね。今作はカップリングの2曲もサクマ&川島コンビが手がけていますが、こちらは近作のストックではなく、書き下ろしで?

はい。もともと2人には秋のファンクラブツアー(2025年10月から11月にかけて行われた「田村ゆかり Fanclub Tour 2025 Soundrops II」。参照:田村ゆかり、全国6都市巡る初のファンクラブツアー開催)で歌える新曲をとお願いしていたんです。でもタイミング的に難しかったので、ライブのことは意識せず、「カメリア」のカップリング曲として作ってもらいました。だから2曲とも最初の発注とは全然違う曲になりましたね。

田村ゆかり

──2曲目の「Pocket World」はどういうオーダーを?

私からは「エモい曲を」と。ただ、エモーショナルの捉え方って人それぞれじゃないですか。お二人がイメージしたのはバンドサウンドっぽい感じだったんですけど、私が考える「エモい曲」はちょっと風変わりというか……結局エモにはそこまでこだわらず、変拍子が入ったりする曲をとお願いしたら。

──5拍子の曲が上がってきたと。

ライブで聴いてると「あれ、おかしいぞ?」ってなるやつですよね(笑)。

──ポップスにはあまりない5拍子で最後まで通しているのに、一聴して極めてキャッチーなのがすごいセンスだなと思いました。途中で「あれ、これ本当に5拍子なのか?」とカウントして確認したくなるくらい。

そうなんですよ! 私もレコーディング中に「これ5拍子で合ってます?」って確認しました。

──普通ならもっとトリッキーな印象になりそうなところですけど、朝、窓、太陽……みたいな、ひたすら爽快な画が浮かびます。

シングルのバランスとしてもすごくいい感じになったし、「Soundrops II」に合わせなくて正解だったなと思いました。

──そしてもう1曲の「ふたりになろうよ」はバラードですが、「カメリア」ともまた違う、シンプルにラブを歌うバラードですね。聖歌的なコーラスがすごく印象に残りますけど、低いパートはどなたが?

コーラスは主に自分で重ねてるんですけど、これは亮祐さんかな……入ってない? 私だけ? 「カメリア」のコーラスは亮祐さんにも入ってもらってますけど、こっちは私だけでした(笑)。亮祐さんとは声の相性がいいなと思っていて、声質のどこかが似ているのか、自分でもどっちの声かわからないときがあるんですよ(笑)。このコーラス、デモではシンセの音で入っていたんですけど、自分の声でやりたいと伝えて差し替えてもらいました。

──アレンジのダイナミックレンジも広く、すごくドラマチックですね。

そもそもリョウさんのアレンジがドラマチックなんですよ。「カメリア」もそうだし。ドラムとか、打ち込みじゃなく生で録っている楽器が多いのも効いているのかもしれないです。

予定通りにいかなかった「Soundrops II」

──12月24日には昨年のホールツアーの模様を収めたライブ映像作品「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」がリリースされました。非常にポジティブな空気感のミニアルバム「Felice」を携えた“Wonderful”で“Happiness”なツアーということで、どんな内容になるのか?と前回のインタビューでお話ししましたが、実際はどうでしたか?

どうだっけ……? あれ、全然覚えてない(笑)。楽しいライブに……なってたのかな。そのあとに「Soundrops II」もあったから、終わったことはどんどん忘れちゃう。

「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」Blu-rayジャケット

「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」Blu-rayジャケット

──(笑)。映像化するうえで観返したりもしますよね?

何回か観ましたけど、そんなにいつものツアーとガラッと変えたわけでもないし……セットリストは、「Felice」からの曲をたくさんやりたかったのと、あまりライブでは歌っていない、イベントとかでは歌っていたけどツアーではやってない曲を中心に選びましたね。言うほど明るい感じでもなく、かと言って暗い感じでもなく、いつもの感じ。お客さんの感想としては「めっちゃ明るくて楽しかった」という声が多かったけど、そうでもなくない?っていう(笑)。タイトルの印象に引っ張られてるところもあるんじゃないですかね。

「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」DVDジャケット

「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」DVDジャケット

──田村さんは新作を出してツアーを回る、という活動を、なんならバンドマンでもここまで毎年きっちりやってる人はいないというくらい精力的にやっていて、別のスタイルへのシフトチェンジは考えていないのかという話を前回のインタビューでしたときに、実はすでに別のスタイルのライブが決まっているというお話をされていたんですよね。それがのちに発表されたファンクラブ会員対象のライブハウスツアー「田村ゆかり Fanclub Tour 2025 Soundrops II」で。

そうですね。ただ「こんなはずじゃなかった」というのが実際のところで……。

──理想はどうだったんですか?

「Soundrops」の1回目をやったときはコロナ禍で、そのときはアコースティックライブだったんですよ。椅子を置いて指定席で、こじんまりと……とはいえZeppなのでそれなりの規模ですけど。また「Soundrops」をやろうというのは前々から決めていたんですね。それで早々に「Soundrops II」をやろうと会場を押さえたんですけど、蓋を開けてみたら「椅子を置いたら大赤字だぞ」とスタッフさんに言われて(笑)。

──コロナ禍とは状況が違うので難しいでしょうね。チケット代をむちゃくちゃ高くするしかない。

それも違うなと思うんですよね。でもやっぱり、スタンディングでアコースティックだときっとみんな疲れちゃうし、どうしようかなって。それに、うちのお客さんは普段ライブハウスにあまり行かない人が多いから、ライブハウスというと地獄絵図みたいなイメージの……。

──モッシュ!ダイブ!みたいな。

阿鼻叫喚!みたいなイメージがあるから、ライブハウスでスタンディングだって発表しただけで「うわああ、暴れるぞおおお!」って(笑)。「Soundrops」だって言ってるのに。

──やむなくスタンディングとなると、選曲を変えざるを得なかった?

そうなんですよ。ある程度の折り合いをつけるしかなくて。もともと「Soundrops II」でやろうと考えていたおとなしめの曲は前半に固めて、後半はアンコールという形でオマケとして盛り上がりそうな曲を入れて組みました。前半のほうも、ちょっと明るめなキャラソンの曲を入れたりして折り合いをつけたんですけど、こんなはずじゃなかったんだよなーという思いはありますね。

──お客さんにはじっくり耳を傾けてもらって、田村さんも客席を煽ったりするわけではなく歌を届ける、というのが本来「Soundrops」でやりたいことなんですよね。

そう。まあライブは楽しかったし、結果的にこの形でやってよかったなと思いましたけど。ただ、今回Zeppでやったのは一応考えがあって……(オフレコ情報につき割愛)。

──ああ、それは楽しみですね。

その前にまたツアーがあるので。

──6月から9月にかけてホールツアーが決定しましたね。ツアーがあるということは、またアルバムを作ろうとしている?

作りたい気持ちはあるんですけど、まだ何も。まあツアーが発表されたのでみんな予想はしてるでしょうけど、これから準備します。

命を大事に

──2026年はどんな1年にしたいですか?

それも特にないですけど……命を大事にしていきたいですね。

──命を大事に。

もう50歳になるんですもん。そりゃ命を大事にしたいですよ。20代の子と同じことを望まれてもできませんから。

──節目の年でもあるし、なんなら翌年にはデビュー30周年を控えているわけじゃないですか。

そうなんですよ。でもあんまり周年を打ち出す気もなくて。

──これまでの作品を振り返ったりということもなく。

はい。だって、じゃあ本当の最初の頃の曲をみんな聴きたいのかと言ったら、別にそんなでもないよね?っていう。みんなが聴きたいのは「You & Me」(2009年リリース)とかじゃないですか(笑)。

──(笑)。

初期の頃があって、そのあとなんとなく王国民!みたいな形ができて……みんながイメージするのはやっぱりキングレコードの頃だと思うんですけど、なんだかんだでキングを離れてからもけっこう経ってるんですよ。

──Cana ariaレーベルを立ち上げたのが2017年ですからね。来年はそちらも設立10周年を迎えます。

今ライブに来ているお客さんはそのあとから聴き始めてくれた人も多いんですよ。だから軽く「周年イヤー」と言う程度で、ふわっとちっちゃく盛り上がってるくらいの感じにしたいなあ。

公演情報

田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2026(仮)

  • 2026年6月13日(土)埼玉県 さいたま市文化センター 大ホール
  • 2026年6月14日(日)千葉県 森のホール21 大ホール
  • 2026年6月21日(日)茨城県 水戸市民会館 グロービスホール
  • 2026年6月27日(土)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2026年7月4日(土)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2026年7月5日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2026年7月11日(土)栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
  • 2026年7月18日(土)千葉県 市川市文化会館 大ホール
  • 2026年7月19日(日)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2026年7月25日(土)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2026年7月26日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2026年8月6日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
  • 2026年8月9日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
  • 2026年8月11日(火・祝)大阪府 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
  • 2026年8月16日(日)山梨県 YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール) 大ホール
  • 2026年8月22日(土)宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
  • 2026年9月5日(土)東京都 SGC HALL ARIAKE
  • 2026年9月6日(日)東京都 SGC HALL ARIAKE

プロフィール

田村ゆかり(タムラユカリ)

2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる東京・日本武道館公演を行った。2017年に自身のレーベル・Cana ariaを立ち上げ、同年11月にCana aria第1弾作品となるミニアルバム「Princess ♡ Limited」を発表。以降もコンスタントに作品をリリースしている。2026年1月に最新シングル「カメリア」をリリース。6月から9月にかけて全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2026(仮)」を行う。