ナタリー PowerPush - 田村ゆかり

記念すべき?10枚目のフルアルバム メルヘンな“THE ゆかりん”のさじ加減

田村ゆかりの最新オリジナルアルバム「螺旋の果実」が完成した。声優として多忙な日々を過ごしながらも、コンスタントにアルバムを作り続けてきた彼女。記念すべき通算10枚目のフルアルバムとなる今作は、既発のシングル曲のほかに新曲を12曲も収めたボリューム満点の作品となっている。

ナタリー2度目の登場となる今回のインタビューでは新作「螺旋の果実」の話題を軸に、歌手としての姿勢やアルバム制作に関するこだわりなどについて深く話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃

自分がアルバムを買うなら新曲が多いほうがいい

──今作が10枚目のフルアルバムになりますが、ベストアルバムを挟んで少し間が空いたりしつつも、だいたいいつもほぼ1年ちょっとで1枚、オリジナルアルバムをリリースされているんですよね。声優としてお仕事しながら、こんなにコンスタントにアルバムを発表されていたんだなと、過去のディスコグラフィを確認して改めて思いました。

田村ゆかり

そうですねー。気が付けばたくさん出していました!

──アーティスト活動1本でやられている方でも、こんなに充実したディスコグラフィはそうそうないかなと思って。

まあ自分で曲を作ってるわけではないですからね(笑)。アーティストさんは産みの苦しみがあるから大変だろうなと思いますけど。

──しかもアルバムには既発のシングル曲以外に新曲が12曲も入っていて。シングルのカップリングなどを入れて、言うなれば“薄める”ことも可能だと思うんですけど、そのあたりは前回のインタビュー(参照:田村ゆかり「Fantastic future」インタビュー)でお話されたカップリングの話と同様、ファン心理として新曲を多くしたいということなのでしょうか。

はい。自分がアルバムを買うなら知ってる曲が入ってるよりも、新曲がたくさんあったほうがいいかなって。今回のアルバムは、一度ベストアルバムを挟んでいるから少し間が空いたこともあって、シングル曲が3曲も入ってしまっているので……。

──入ってしまっている(笑)。

それで結局、全部で15曲という多めな曲数になってしまいました。何作か前から新曲はだいたい11~2曲入れるようにしているんです。そこは減らしたくなかったので。極端に売り上げが落ちて予算がガタッと減ったら話は別ですけど(笑)、アルバムを作るならこのぐらいは新曲が欲しいんです。

──アルバムを作るときはいつもどのような方法で作られているんですか? 例えば最初にコンセプトを決めたりとか。

コンセプトはいつもないですね。今歌いたい曲を歌う、というだけで。

──先にタイトルを決めて、それをテーマ的に定めたりするのでもなく。

そうですね。今回のタイトルは制作の途中で決めましたけど、だいたいいつも全体が見えてきたところでタイトルを決めるので。毎回こういう作り方をしてる、というルールはまったくないです。

「記念すべき10枚目のアルバム」

──「10枚目のアルバム」に対する気構えや感慨はありますか?

……それがね、ないんですよ。(過去のディスコグラフィ年表を見ながら)こうやって並んでいるのを見ると確かにたくさん歌ってきたなとも思うんですけど、でもそんなにいっぱいあるようにも思わないし(笑)、なんか「ああ、10枚目なんだな」ぐらいにしか思ってないんですよ、実は。

──そういうアニバーサリー的な区切りは、好きか嫌いかで言うとどちらですか?

うーん、嫌いではないですけど、じゃあ10枚目だから何か祝われたかというと何もなくて(笑)。スタッフのみんなも10って数字に何も感じてないと思う。

──プレス向けの資料には一応「記念すべき10枚目のアルバム」って書いてありますけど(笑)。

(スタッフに向けて)なんか書かなきゃいけないから書いただけでしょ?

──確かにこういう区切りはレコード会社的にはありがたいですよね。

別に「おめでとう」とか一言もくれないじゃん!

スタッフ おめでとうございます。

──取って付けたように(笑)。じゃあ今回も通常通り、新しいアルバムを作ったと。

はい。10だからどうというよりは、ほかのプレッシャーのほうが大きかったです。「田村ゆかりと言えばこれ」って言えるものって、なくはないけど明確にあるわけじゃないので。「テーマもなくやりたいことをやる」というのがある意味テーマなんですけど、だから楽曲はバラバラなんです。10枚目にもなると目新しいこともそんなにないし、そうなると何をやっても「この曲はあのアルバムのあれと同じ」って言われちゃうじゃないですか。だから……つらいなっていう(笑)。

──それは枚数を重ねるごとに増えていくつらさですよね。

そうなんですよ。1枚目のときはすべてが新鮮だから目新しさだけでも評価されるけど、10枚目となるとみんな勝手に「10」に対して期待するだろうし(笑)。……だからもしかしたら「10」を意識して意識しないようにしてたのかも。

ニューアルバム「螺旋の果実」/ 2013年11月20日発売 / KING RECORDS
初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 3990円 / KICS-91969
初回限定盤 [CD+DVD] / 3990円 / KICS-91970
通常盤[CD] 3000円 / KICS-1969
収録曲
  1. スパークリング☆トラベラー
  2. Moonlight secret
  3. キャンディスターにお願い
  4. Fantastic future
  5. 微笑みのプルマージュ
  6. アジュールの実
  7. LUNATICA MARE
  8. ナルシスが嘘をつく
  9. Passion Error
  10. PINK AQUARIUM
  11. 純愛レッスン
  12. 恋と夢と空時計
  13. Papillon
  14. ひとりあやとり
  15. W:Wonder tale
初回限定盤DVD / Blu-ray 収録内容
  • 恋と夢と空時計(MUSIC VIDEO)
  • Fantastic future(MUSIC VIDEO)
  • W:Wonder tale(MUSIC VIDEO)
  • 微笑みのプルマージュ(MUSIC VIDEO)
  • 田村ゆかりとバーチャルデート ~スフィンクスに会いに行くのだ!編~
  • MAKING
ライブDVD / Blu-ray「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE *Cute'n ♡ Cute'n Heart*」/ 2014年1月15日発売 / KING RECORDS
Blu-ray 8400円 / KIXM-149~150
Blu-ray 8400円 / KIXM-149~150
DVD 8400円 / KIBM-406~408
収録内容(予定)

2013年6月22日、23日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2013 *Cute'n ♡ Cute'n Heart*」の千秋楽、6月23日の模様を収録。特典映像には6月22日のみ演奏された楽曲も収録予定。

24thシングル(タイトル未定)/ 2014年2月5日発売 / 1200円 / KING RECORDS / KICM-1494

テレビアニメ「のうりん」(2014年1月放送開始)オープニングテーマ。

田村ゆかり(たむらゆかり)
田村ゆかり

2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる日本武道館公演を行った。2013年4月には通算23枚目のシングル「Fantastic future」、同年11月には10枚目のオリジナルアルバム「螺旋の果実」をリリース。