「『ずっと』ってどこからどこまで？」

──そういうことを日常的に考えてるわけですね、たむらさんは。

考えますね（笑）。あとね、「敵 / 味方」みたいなことについてもすごく考えちゃうんです。敵だってわかっている人にののしられても怖くないんだけど、味方だと思ってる人に否定されるとすごくショックじゃないですか。もしかしたら絶対的な関係を望んでるのかもしれないけど。それがすごく難しいことだってわかってるからこそ、「期待を込めて ハローハロー」（「ぼくの」の歌詞）ですよ（笑）。

──人との関わり方に敏感なんでしょうね。

そうかも。少しでも「守れないかも」って思ったら、約束事とかしないし。怖いじゃないですか、そんなの。

──じゃあ例えば恋愛してるときに「ずっと一緒にいよう」みたいなことを言われても……。

「『ずっと』ってどこからどこまで？」って（笑）。そんなことは言わないですけどね、さすがに。でも、付き合ったときもいきなり「いつ終わるんだろう？」って考えちゃうタイプではありますね。どっちかが死んじゃうまで一緒にいるっていうのが、一番幸せなカタチなんでしょうね、きっと。

──たむらさんのラブソングも独特ですからね。

面白いとか笑えるっていう方向に行っちゃうことも多いし、訥々と自分の感情を歌うっていうことは少ないですね。例えば「ポーズ」という曲にしても「頭ではわかっていても心がついていかない」というちぐはぐな状況を描いているんですよ。もっとシンプルに、頭と心と行動が伴ってるのって、すごくいいなとは思うんですけど……。でも現実的にはそういう状態でいられることって少ないし。

──そういう傾向が恋愛ソングにも反映されている、と。

それを「面白い」って言ってくれる人もいれば「わかりにくい」って思う人もいるっていう。一言でスパッと訴えるような曲のほうが即効性はあると思うんですけど、それはそれで「どんなふうに捉えられたのかな？」って気になるだろうし。

誰かと関わりたいっていう感覚が出てる

──ラブソングではないですが、「知らない」からも、たむらぱんさんらしい視点を感じました。「ロックなんて知らない ポップなんて知らない ファンクなんて知らない クラッシックなんて知らない」っていう。これってジャンルの壁に対するアンチテーゼだったりするんですか？

というより、音楽に対するコンプレックスが反映されていると思うんですけどね。毎日そんなことを考えてるわけじゃないですけど、ちょっとマイナス志向のときって、「特に長けていることがあるわけじゃないし」って思ってしまうこともあって。ただ「それでもできることがあるはず」という可能性とか希望は信じていたいんですよ。あとは「堂々巡りしちゃってるけど、理解してくれる人がちょっとでもいるだけで救われる」という気持ちだったり……。

──その気持ちは「繰り返さざる者は新たにも届くことはないんだけど つまらない人だとは君だけには思われたくない」というフレーズに集約されてますね。

そうですね。そういうふうに描いてる時点で、やっぱり物事は自分ひとりだけでは完結できないんだなって思うし。今回のアルバムってコミュニケーションに対する欲求というか、誰かと関わりたいっていう感覚がすごく出てるんですよね。たくさんの人たちと関われば関わるほど、いろんなことを感じるようになってきたというか。コミュニケーションのツールが増えたことも影響してるのかもしれないけど、「みんなが仲良さそうなのが怖い」とか「いろんな人と出会うけど最後に一緒にいるのはどんな人だろう？」とか「あんまり広がり過ぎないでほしい。狭い世界のほうがいい」とか……まあ、ちょっと考えすぎなのかもしれないですけど（笑）。

──すごく現代的なアルバムなのかもしれないですね。今ほど、人と人との関わり方、コミュニケーションの在り方を意識させられる時代はなかったと思うし。

うん、そうですね。「今」だと思いますよ、まさに。過去のことを歌ってもどんどん取り残される気がするし、すごい未来のことを歌っても、ちょっとバカみたいだし（笑）。「今」感じることを描くっていうのが、一番合ってるんだと思います。

──11月のワンマンツアーも、言葉を伝えることが軸になりそうですか？

はい。もちろん音も大事なんだけど、雰囲気だけで流れていかないようなライブにしたいんですよ。勢いとかノリだけじゃなくて、ちゃんと言葉を伝えるというか、会場に来てくれた人たちのなかに何かが残せればいいなって。