焚吐|大人vs子供、その狭間で生まれたポップソング

焚吐がニューシングル「量産型ティーン」を10月31日にリリースする。

5月にリリースしたミニアルバム「呪いが解けた日」で表現者としてのリミッターを解除した彼が、新たなフェーズに突入したことを実感させる本作。若者の感情をすくいとり、大人からの理不尽な弾圧に対して高らかに声を上げる表題曲に加え、リアルな心情を紡いだ片思いソング「トウメイニンゲン」、亡き母親への思いをピアノ1本を伴奏にした一発録りで注ぎ込んだ「魔法使い」という、クリエイティビティの幅を実感させる3曲が収録されている。

音楽ナタリーでは“呪いが解けた”焚吐に訪れた変化と、新作に詰め込んだ思いについて焚吐にじっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 須田卓馬

呪いが解けたあとの焚吐はどうなるのか?

──今年の焚吐さんは2月にみやかわくんとのコラボシングル「神風エクスプレス」、5月にミニアルバム「呪いが解けた日」をリリースし、7月には東名阪を巡るワンマンツアーを開催と、精力的な活動を行ってきていますね。

今年の冒頭に「2018年は自分らしくいよう」っていうテーマを掲げてここまで活動してきたんですけど、「呪いが解けた日」という作品を作れたことで自分をすごく解放できた実感があって。僕はこれまで、自分の中の仄暗い部分とか負の感情によって動くことが多かったんですけど、そこに対して少なからず疑問点みたいなものもあったんですよね。でもあのミニアルバムを通して、自分の中にあるネガティブなものさえもしっかり受け入れることができたと言うか。そういう意味では、今年のテーマはしっかり達成できつつあるんじゃないかなと思っています。

──ミニアルバムのリリース後も、楽曲制作は継続的に行っていたんですか?

焚吐

はい。今回リリースする「量産型ティーン」もミニアルバムの発売後に作った曲です。ファンの皆さんも「呪いが解けたあとの焚吐はどうなるのか?」みたいな部分が気になっていると思うので、それをしっかりお見せできるようにずっと動き続けてはいますね。

──「呪いが解けた日」以降、制作のスタンスや生まれてくる楽曲に変化はありますか?

とても大きく変化したと思います。今までは自分の中で無意識に制限をかけていたところがあったんですよ。「こういう曲を書いたらみんなが喜んでくれるんじゃないかな」とか「焚吐はこういう曲を歌うべきなんじゃないかな」と考えながら作っていたところもあったし。でも最近は、体裁や世間の評価をあまり意識せず、純粋に今の自分が作りたいものを作り、今の自分が言いたいことをきちんと言い切れるようになったと思うんですよね。

──それこそが自分らしさだと改めて認識できたんでしょうね。

そうですね。「自分らしさってなんだろう?」みたいな部分での葛藤は少なからずあったし、どこか肩に力が入っているところもあったと思うんです。でもそれが今はなくなったので、これまで以上に自由に、好きなように音楽を作れている感じがします。

──ブレーキを踏まなくなったことで表現はより鋭さを増しそうな予感もします。

歌詞に関して言えば、意図的に人を傷つける言葉選びはもちろんしないけど、自分の中で言葉狩りを行うみたいなことはなくなりましたからね。たとえ描かれているものが世間的に褒められた感情ではなかったとしても、人間として模範になるようなメッセージ性を持っていなかったとしても、自分の中から出てきたものは自分にとっての正解だと思うから素直に吐き出そうって。曲の構成なんかにしてもすごく自由になった気がしているんですよ。今まではAメロ、Bメロ、サビという流れがあって、2番もそれに準ずるみたいな作り方でしたけど、そういう決まりきった構成じゃなくてもいいよなって思うようになったんです。今回の「量産型ティーン」もそうですけど、最近はいろいろな展開があって、ころころと景色が変化していくような自由奔放な曲を書くことが多いと思いますね。

幸せを味わうと、その後には落胆してしまう

焚吐

──お話を聞く限り、今の焚吐さんは非常に健やかに音楽と向き合えている状態のようですね。

健やか……どうなんでしょうね(笑)。7月末に終えたツアーがあまりにも楽しかったから、その反動で8月はかなり気が滅入ってはいたんですよ。その時期は曲作りもやってはいたけどあまり気分が乗らなくて、「もうやっていけないわ」くらいの感じで。

──そこまで落ちましたか。楽しさの反動で気持ちが沈んでしまうことはよくあるんですか?

そうですね。リリースとかライブで高揚感や満足感を味わうと、その後にはどうしても落胆してしまうことが多くて。最近よく思うのは、心の中にはいろんな感情を入れておく入れ物があるんだけど、幸せなものが入る容器には底がないんじゃないかなってことで。だから僕は幸せなことをどんどん消費してるイメージが強くなっていって、その分気落ちしてしまうんだと思うんですよ。

──なるほど。でも、底がないからこそ人間は幸せなことを求め続けられるのかもしれないですよね。それが生きるための原動力になると言うか。

確かにそうですね、うん。どんどん流れ落ちていってしまう幸せを渇望するからこそ、僕の場合はたぶん次の曲も生まれてくるんだと思います。そう考えると一長一短なのかな(笑)。

──焚吐さんの場合は、曲を作ることで負の感情を浄化できるタイプのアーティストでもありますよね。

そうですね。あまりにも大きな悲哀みたいなものの場合、すぐ曲に落とし込むことはなかなかできないんですけど。ツアー後の8月くらいに抱えてた感情はようやく今、消化できつつあるような気がしています。気持ち的にはかなり持ち直してきているので大丈夫です(笑)。

焚吐「量産型ティーン」
2018年10月31日発売 / Being
焚吐「量産型ティーン」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
4000円 / JBCZ-4046

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焚吐「量産型ティーン」通常盤

通常盤 [CD]
1000円 / JBCZ-4047

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CD収録曲
  1. 量産型ティーン
  2. トウメイニンゲン
  3. 魔法使い
  4. 魔法使い -Live_Ver.-(※通常盤に収録)
初回限定盤DVD収録内容

ワンマンツアー「焚吐 リアルライブ・カプセル Vol.3~解放運動~」東京・WWW公演の全曲とツアーメイキング映像を収録。

焚吐(タクト)
焚吐
1997年2月20日生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。小学4年生でギターに目覚め、1年後にはオリジナル曲の制作をスタートさせた。2012年、ビーイング主催「トレジャーハント~ビーイングオーディション2012~」において審査特別賞を受賞。2015年12月にはシングル「オールカテゴライズ」でビーイングよりメジャーデビューを果たす。2016年5月には2ndシングル「ふたりの秒針」をリリース。表題曲はテレビアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマとして使用された。その後もコンスタントに作品を発表し、2018年2月にはシングル「神風エクスプレス」をみやかわくんとのユニット・焚吐×みやかわくんとしてリリース。5月にはミニアルバム「呪いが解けた日」をリリースする。2018年10月31日にシングル「量産型ティーン」を発表する。