焚吐|大人vs子供、その狭間で生まれたポップソング

「大人対子供」は避けて通れないテーマだった

──ミニアルバム「呪いが解けた日」はある種、ご自身の内面と向き合った作品でしたが、そこを経て今回届けられた新曲「量産型ティーン」は若者の思いを代弁する内容であり、曲としては広く外を向いている印象がありますよね。

そうですね。自分の負の感情に正直な「呪いが解けた日」のあとに出すものとしては、内省的なものではなく、外に働きかける曲でありたいというモチベーションがありました。“解放された焚吐”を提示するうえでも、このタイミングでリリースするのは正解だなと思いますね。

──この曲で描かれているのは、若者をネガティブにカテゴライズする大人に対する鋭い視線です。そういったテーマが出てきたのには何かきっかけがあったんでしょうか?

大人に対してものすごくムカつくことがあったとか、とどめの一撃的なきっかけは特になくて、日々感じていることの積み重ねから出てきたものだとは思いますね。僕はこれまでも大人に媚びを売ると言うよりは、若い世代特有のもの……という言い方はあまり好きではないんですけど、今の自分の年齢で感じているものを素直に表現してきたつもりで。ただ、あからさまに大人を揶揄するような曲は作ったことはなかったんですよね。

──そこに今回はトライしてみたと。

はい。大人対子供というわかりやすい構図の曲を作ってみたいという単純な興味もありましたし、焚吐として次のステップに進むにあたっては避けて通れないテーマなのかなとも思ったので。

──焚吐さんは現在21歳で、法律的には大人です。でも今回はティーンからの視点で曲を紡いでいますよね。

そうですね。果たしてどっちの目線で書けばいいのかっていう迷いや苦しみは当然ありましたけど、僕自身はまだ大人になった感覚があまりないんですよ。どっちかと言えば、まだまだ子供。そういう意味ではティーンに近い立場でものを言えるんじゃないかなと思ったので、今回は若者に寄せた曲にしました。ただ、21歳の僕が書いたものではあるので、この曲には賞味期限があるなと思ったんですよ。例えば3年後、24歳の焚吐が歌ってもたぶん説得力がないだろうなって。だからこそ今出すべき曲だなと思ったんですよね。

あえてケンカを売るくらいの気持ちで

──焚吐さんが常々感じている大人への憤りってどんなものですか?

僕はネット人間なのでSNSをよくチェックするんですけど、誰かの個人的な発言をすぐに叩いてくるような大人が多い気がしてて。「別にこの人はお前に対して言ったわけじゃないんだから」「この件に対してお前は何の関与もしてないじゃん」とか思うんだけど、それでもこれ見よがしにタコ殴りにしてるっていう。他人の発言に対してそこまで感情移入できるのは1つの長所なのかもしれないけど、「今の若者は」みたいなテンションで言葉狩りしてくる人は結局、自分の首を絞めてるだけのような気もするんですよね。ある意味、かわいそうだなとも思っちゃうと言うか。

──ラストに出てくる「なあ大人たちよ 自分を愛すだけで何を躊躇っているんだい」というラインに大人たちはハッとするべきだなと思いました。

焚吐

大人たちが僕らを弾圧してくるのって、つまるところ自己愛がないからだと思うんですよ。自己愛がないから自分をなおざりにしてしまうと言うか。で、その余波みたいなものが僕たちの世代にも及んできているような気がするんですよね。

──由々しき状況ですよね。だからこそ焚吐さんは今回、あえて鋭い言葉で物申したと。

そうですね。もちろんリスペクトできる大人の方もたくさんいるんですけど、今回はあえてちょっとケンカ売るくらいの気持ちで書きました。僕と同じくフラストレーションを抱えている人、大人に立ち向かいたいけどその一歩が踏み出せない人にとって、この曲が少しでも支えや助けになってくれたらいいなって思いますね。

──焚吐さんの中には、ティーンも含めた同年代の代弁者としての使命感みたいなものもあったりするんですか?

いや、僕はけっこう自分のことでいっぱいいっぱいな人間ですからね。この曲は今の若者を代弁する内容になりましたけど、根本的にはあまり他人のことを考えられる余裕がない(笑)。表現者としてはそこへの葛藤もあったりはしますけど。

──焚吐さんの場合、ご自身がリアルに感じていることを曲にした結果、それが誰かの思いをも代弁することになる、という図式なんでしょうね。代弁することを出発点として曲を作っているのではないという。

そうだと思います。今回も自分が大人にムカついていたことが曲作りのスタートですからね。別に慈善事業として音楽をやっているわけではないですから(笑)。

焚吐「量産型ティーン」
2018年10月31日発売 / Being
焚吐「量産型ティーン」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
4000円 / JBCZ-4046

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焚吐「量産型ティーン」通常盤

通常盤 [CD]
1000円 / JBCZ-4047

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CD収録曲
  1. 量産型ティーン
  2. トウメイニンゲン
  3. 魔法使い
  4. 魔法使い -Live_Ver.-(※通常盤に収録)
初回限定盤DVD収録内容

ワンマンツアー「焚吐 リアルライブ・カプセル Vol.3~解放運動~」東京・WWW公演の全曲とツアーメイキング映像を収録。

焚吐(タクト)
焚吐
1997年2月20日生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。小学4年生でギターに目覚め、1年後にはオリジナル曲の制作をスタートさせた。2012年、ビーイング主催「トレジャーハント~ビーイングオーディション2012~」において審査特別賞を受賞。2015年12月にはシングル「オールカテゴライズ」でビーイングよりメジャーデビューを果たす。2016年5月には2ndシングル「ふたりの秒針」をリリース。表題曲はテレビアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマとして使用された。その後もコンスタントに作品を発表し、2018年2月にはシングル「神風エクスプレス」をみやかわくんとのユニット・焚吐×みやかわくんとしてリリース。5月にはミニアルバム「呪いが解けた日」をリリースする。2018年10月31日にシングル「量産型ティーン」を発表する。