ナタリー PowerPush - 高橋優
「声なき多数派」へぶつける魂のメッセージ
僕の曲が、人生の刺激や助けになることが理想
──表題曲となっている「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」もストレートな歌詞ですよね。
自分の沈黙をなくしたい、遠慮して言わずにいたことを、ちゃんと言いたかったんです。具体的には詞に書いたけど、例えば原子力発電所が日本には50基もある。原発の処理方法が世界的に問題になっているのに、この狭くて地震ばかりの日本に50基ですよ。海外では原子力のゴミ箱を作る計画も進められているみたいですが、日本はそこまで考えているのか疑問でしょ。これが普通にまかり通っていたことはやっぱりおかしいんです。原子力そのものの良し悪しを語るには僕はまだ勉強不足だけど、今の福島の状況がカッコ悪いことなのは明らかじゃないですか。
──しかも2年経っても状況が変わっていないですからね。
ほかにも言いたいことはたくさんあって、日本は戦争での死者より自殺者のほうが多いのもそうです。ちゃんと考えたら意味わかんないんですよ。それでも平和ぶっていることに腹が立つ。「世界はこんなに平和ですよ」ってメディアが言えばみんなそう思っちゃうんだろうけど、それは間違ってる。社会はどうなっていて、自分はどうするべきかを考える必要があるはずなんです。でも「じゃあ僕はできてるの?」って疑問も浮かんできたから、それを曲にして表現してみようと。
──そのタイミングがなぜ今だったんでしょう? 例えば原発なら、地震の直後からずっと話題にはなっていましたよね。
当時はもっと楽観的に考えていたのかもしれない。地震はたくさんの犠牲が出た大変な出来事だったけど、原発に関してはもっと早くカタが着くと思ってた。そこまで深刻ではないと思いたかったのかもしれない。でもいまだに解決しない現状があって、それでもサイレントでいる日本人ってなんだろうと。海外ではデモなんて普通だし、声を上げるとうるさいと言われるけど、黙っているより全然マシなんです。やっぱり沈黙はただの無関心であって、もっとも卑怯な手だと思うから。
──言いたいことを堪えるのに慣れてしまっているけど、それではもうダメだと。
沈黙が美徳だと言われることもわかるんです。でもいろんな人が自分の意見を言い合って、ちゃんと議論することも大切。叩かれる人、支持される人も出てくるけど、そうなった結果また考えられることもある。何もしないよりは絶対にいいハズなんです。僕は今まで自分の気持ちを歌えばいいと思っていたけど、今は「僕はこう思うけど、君はどう思う?」ってもっと歩み寄りたい。「みんなはどう思うんだ!」ってしつこく聞いてみたいんです。
──自分のメッセージを伝えるだけでは満足しなくなったんですね。
というか、物足りないのかな。ほこりをかぶった言い方をすれば、人と人との間にはやっぱり絆があってほしい。今は実際に顔を合わせなくても会話ができるし、家に引きこもっていても快適だし、名前を伏せて好き勝手言うのが一番ラク。でもちゃんと生身の体で勝負して、結果として傷ついたっていいじゃん!って言いたくなった。それで僕は反対意見の人ともつながっていきたいし、自分が正しいとか、総理大臣になろうとかは全然思ってない。もし世界を変えられるなら、みんなで協力してやっていきたいんです。
──それは具体的には、もっと意見が欲しい、ライブで一緒に盛り上がりたい、ということですか?
ライブはもちろんですけど、音楽はどこで聴いてもいいし、シチュエーションによって聞こえ方は違いますよね。満員電車でももいろクローバーZを聴けば「週末ヒロインもがんばってるから僕もがんばろう!」って思う人もいるだろうし。だから僕の曲が、人生を歩む上での刺激や助けになることが理想ですね。
殴られて鼻を骨折する覚悟で臨みました(笑)
──この曲はアレンジとレコーディングにBRAHMANも参加しています。その経緯は?
まずこの曲に関しては、どんな完成形になるかまったく想像できないものをやりたかったんです。例えばアコースティックをメインでやっている方との共作だったら、予定調和なイメージを持たれちゃうと思ったし、僕自身も曲が想像できちゃう。そうじゃなくて、爆発させたかった。
──意見をぶつけ合うような相手とやりたかった?
予想しない場所から意見が飛んでくることは期待しましたね。ガシガシ感を求めてたんです。それで誰かと一緒にやることを決めたら、もうTOSHI-LOWさんしかいなかった。「JAPAN JAM」や「風とロック」のフェスでセッションしたこともあって、僕が勝手に運命的なものを感じてたんです。TOSHI-LOWさんと一緒にやったらすごいものができるだろうっていう確信があった。それで自分で電話をしてお願いしました。
──TOSHI-LOWさんから何か要望はあったんですか?
恐れずに歌詞を書いてほしいとは言われました。テレビで流せる詞にしようとか、偉い人に「もっと柔らかい内容にして」とか言われるかもしれないけど、そんなことは気にすんなと。
──BRAHMANはずっと好きだったんですよね。
僕のヒーローですよ! だから一緒にやるにあたって、ミーハーでいちゃいけないなと気合いを入れましたね。「あのBRAHMANが!」なんて思ってたら食われちゃうし、噛み付き合って作品を作らないと意味がないと思ってたから、殴られて鼻を骨折する覚悟で臨みました(笑)。
──実際スタジオに入ってみて、いかがでした?
めちゃくちゃ楽しかったですね。まず、譜面を見てしゃべらないんです。すごく感覚的で「こっちのほうがウワッってなるよね?」「もっとワーッてやろうよ」みたいな(笑)。僕はそういうミュージシャンが大好きで、BRAHMANの音楽って聴いていると本当にワーってなるじゃないですか。その感覚をスタジオで味わえたのはすごくうれしかった。 PVを撮ってくれたショウダユキヒロ監督もそうだったけど、作品を作っていて1を投げたら10で返ってくる感じがものづくりの醍醐味なんです。僕の言ったことがそのまま全部採用されて、お互いにどんどん「まあいっか」が重なってしまう作り方はつまらない。刺激し合って意見をぶつけたほうが絶対にいいものになるんです。ショウダ監督は本当に変わった人で、今作のジャケットを見て、「人の顔がたくさんあるように見えるよね」って言ったんです。
──顔には見えないですけど……。
そりゃそうですよ、字ですから! かなりイカれてましたね(笑)。でもそんなところが好きだし、PVもすごく気に入ってます。
- 2カ月連続シングル第1弾「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」[CD] 2013年4月10日発売 / 1260円 / unBORDE / WPCL-11357
- 2カ月連続シングル第1弾「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」
収録曲
- (Where's)THE SILENT MAJORITY?
- オナニー
- 野に咲く花になるまで
※初回プレス分のみ封入特典
高橋優2013ライブハウスツアー「BREAK YOUR SILENCE」購入者限定 先行抽選予約
- 2カ月連続シングル第2弾「同じ空の下」 / 2013年5月15日発売 / unBORDE
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1575円 / WPZL-30598~9
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1575円 / WPZL-30598~9
- 通常盤 [CD] / 1260円 / WPCL-11419
※初回プレス盤のみ封入特典(初回限定盤・通常盤共通)
高橋優2013全国ホールツアー「BREAK OUR SILENCE」購入者限定 先行抽選予約
高橋優(たかはしゆう)
1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始める。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月に初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でデビュー。2011年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」はロングヒットを記録する。その後もコンスタントに作品を発表し、2013年4月には「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」、5月には「同じ空の下」と2カ月連続でシングルをリリースする。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声で、支持を集めている。