ナタリー PowerPush - SuG
武瑠「Lollipop Kingdom」全曲解説
11「きたないことば」解説
──戦争を想起させる3曲が終わると、ストリングスが印象的なバラードナンバー「きたないことば」が始まります。歌詞は戦争の愚かさを歌っているようですが。
お菓子の国のお姫様は繰り返される戦争の虚しさや悲しみに対し、「こんな世界なんて生きていたくない」と言って「辞世の句」ならぬ「次生の句」を書いていく。それが「きたないことば」なんです。
──「次生の句」ですか?
はい。「辞世の句」はこの世を去るときに残す言葉ですが、「次生の句」は次の文明に残す言葉なんです。このへんはちょっと小説を読まないと収拾が付かないレベルの話で……戦争の終わりの曲、戦争に対して深い悲しみや虚しさを覚える曲って言えばいいのかな。
12「不完全Beautyfool Days」~13「DOKI DOKI TV CREW」解説
──そしてここで最新シングル「不完全Beautyfool Days」が出てくるわけですが、この曲はこの位置でなければいけなかったんですね。
そうですね。ここで「誰か愛して 誰か憎んで 誰か裏切る 何故どうして?」という問いに対して、おもちゃの国の王子様は「もうめんどくせえな。意味なんかないから、もう好きなことだけやろうぜ。どうせ不完全なんだから」という答えにたどり着くんです。ぶっきらぼうでパンクっぽい適当な言葉で命とかそういったことに触れてますけど、伝えたいテーマはわりと重かったりするんですよ。
──そこから、ハッピーな曲調の「DOKI DOKI TV CREW」へと続きます。
この曲は物語の大オチで、おもちゃの国の王子は国を救わなきゃいけない立場なのに全部投げ出して「戦争なんかめんどくせえ、敵国の王女だろうがなんだろうがそいつを好きだからそいつを救う」と言って、「ロミオとジュリエット」よろしく自殺した王女を王子が救う。「でも、それって本当に自分の国を捨てたことになるけど大丈夫?」みたいなプレッシャーの中、彼はドキドキしながら行動に移すんですけど、救ったら「ドッキリ大成功!」みたいな感じでテレビ局の人間が出てくるんです。実は、この戦争自体が王女と王子をくっつけるためのヤラセで、そのネタばらしが「DOKI DOKI TV CREW」。真剣な2人の表情や戦争の様子を全部カメラに収めて、どれだけドキドキしたかを番組で流すんです。
──そういうオチだったんですね(笑)。
しかも、そのテレビクルーはゴーストたちなんですけど、ゴーストはドキドキを集めることが自分たちのハッピーにつながる。だからわざわざ八百長の戦争に荷担してたわけです。
──確かにこの曲にはハッピーエンド感が表れているというか。
出てますね。「不完全Beautyfool Days」と並べることで、最後は明るく終われる。この流れも素晴らしいと思うし、どっちか1曲がなかったらきれいに終われないっていう。小説を読んでからアルバムを聴き直してもらったら、もっと深く楽しんでもらえると思います。
14「Fancy Cake Yum Yum Show」解説
──「Fancy Cake Yum Yum Show」のタイトルは2曲目「Pastel Horror Yum Yum Show」と対になってますね。
この曲は「これは全部脚本のあるロックミュージカルでした!」っていう、出演者全員が手をつないだカーテンコールからアンコールへの流れですね。「Lollipop Kingdom」という国で起こった一連の戦争が、王女と王子をくっつけるための魅力的な嘘だった、それがすごく愛に満ちた「Yum Yum Show」だったと。「なんて魅力的な嘘かしら」っていうフレーズが全てを象徴してると思います。
──この曲でストーリーがいったん終わると、ミュージカル感がより強まるなと思います。
この曲じゃなきゃダメだったんですよ。この曲は最後に付け足したもので、こういう曲が絶対に必要だったんで、それをメンバーに相談してyujiに作ってもらって。こんな曲、いきなり作れって言われても無理だと思うのに、よく完成させたなと思いますよ。こっちがお願いしておいてアレですけど(笑)。
15「ときどきすてきなこのせかい」解説
──そしてインタビュー冒頭にも話題に上がった「ときどきすてきなこのせかい」。意外だったのが、この曲は通常盤にしか入ってないんですね。
「ときどきすてきなこのせかい」はライブのアンコール曲、ミュージカル映画のエンドロールみたいなものですね。本当は「Fancy Cake Yum Yum Show」で物語は一度全部終わるんだけど、物語を通じて言いたかった、いろんなところに散りばめられた言葉が濃縮されてるんです。最初にも言いましたが、この曲が物語のプロットになっていて、ここからストーリーが広がっていったんです。アルバム全体のテーマを改めて振り返ってる感じですね。
──「Fancy Cake Yum Yum Show」で終わるのもハッピーエンド感があって良いですが、「ときどきすてきなこのせかい」が加わるとまた印象が変わりますね。
「ときどきすてきなこのせかい」は俺の好きな言葉が濃縮されてるなって思います。中でも「ぶっちゃけ 死ぬ甲斐がねーだろ」っていうフレーズが、今回のアルバムを通して一番伝えたメッセージかもしれない。このくらい単純でいいのかなって。SuGにはHEAVY POSITIVE ROCKってっていうコンセプトがあるんですけど、重いことを軽く言う、不完全なことを適当に笑い飛ばしていきたいんです。「ときどきすてきなこのせかい」という言葉をファッションやラブストーリーで色付けしていって、完成したのが「Lollipop Kingdom」。アルバムトータルで聴いても、曲単位で聴いても楽しめる多面的なアルバムになったと思うし、最高傑作ができたなと心から思ってます。
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Lollipop Kingdom」メンバーインタビュー
- 39GalaxyZ only Live ADDICT Vol. 1(FC限定ライブ@恵比寿Liquid Room / 2011.12.24)
- Chakulza CM映像
- Chakulza CM撮影舞台裏 in Thailand
ブックレット
「Lollipop Kingdom -episode 0-」
グッズ
SuG特製トレーディングカードホルダー(過去のトレカが収納できる“武瑠デザイン”のカードホルダー第2弾)
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
- ときどきすてきなこのせかい ※通常盤のみ収録
[初回限定盤] DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video撮影メイキング
- 「Howling Magic」Music Video
- 「Howling Magic」Music Video 撮影メイキング
[初回限定盤] フォトブック
「Lollipop Kingdom」(全20P)
[通常盤] 特典
初回生産分封入:トレーディングカード(全10種のうち1種)
SuG(さぐ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名は黒人のスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。HEAVY POSIVIVE ROCKというコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手掛ける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに、2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。