音楽ナタリー Power Push - SuG×Tom-H@ck
バンドとアレンジャーの愛ある関係
ヘヴィロック、ファンク、パンク、エレクトロなどを融合させたカラフルなサウンドや、フロントマン武瑠(Vo)のビジュアルセンスによって独自のポジションを得ているSuGが、ミニアルバム「VIRGIN」を3月9日にリリースする。初期衝動をテーマに掲げ、武瑠が「シングルにできるクオリティの楽曲だけを入れた」と語る本作は、このバンドのポテンシャルの高さを改めて示す充実作に仕上がっている。
今回音楽ナタリーでは、SuGのメンバー全員とアレンジャーおよびプロデューサーとしてバンドに関わっているTom-H@ckとの対談を企画。「VIRGIN」の制作をフックにしながら、SuGの音楽制作について幅広く語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介
SuGに対してはすごく愛がある
──まずはSuGとTom-H@ckさんの関わりから教えてもらえますか?
Tom-H@ck SuGの楽曲制作に携わるようになったのは、メジャーデビュー(2010年1月)のタイミングだから……。
masato(G) もう6年以上になりますね。
Tom-H@ck そうだね。きっかけは映画だったんですよ。
武瑠(Vo) 僕がインディーズ時代に出演した映画があるんです。「ビートロック☆ラブ」っていうバンドものの作品だったんですけど、その劇中歌をTom-H@ckさんが担当していて。
Tom-H@ck それを武瑠くんに歌ってもらったんですよね。あのときは大変ご迷惑をおかけしました。難しい曲で……。
武瑠 いえいえ(笑)。
Tom-H@ck で、当時のSuGのディレクターの方から話をもらって、アレンジャーとして関わるようになったんです。
──映画の楽曲の手応えがよかった、ということですか?
武瑠 その頃の僕は、アレンジの良し悪しがわかるレベルじゃなかったんですよね。だから「信頼しているディレクターが言ってるから、いいのかな」くらいで。
yuji(G) 僕らからしたら、当時はアレンジャーが入ること自体が初めてだったから。
Chiyu(B) そう、どんな感じになるかも全然わかってなかった。
yuji Tom-H@ckさんのすごさがわかったのは、もう少しあとになって、ほかのアレンジャーの方と仕事をしたときですね。あまり詳しいことは言えないですけど……。
武瑠 ある曲のアレンジが上がってきたときに「ダメだな」って思ったんです(笑)。
Chiyu 全員一致で(笑)。
shinpei(Dr) そのとき「Tom-H@ckさんにアレンジをお願いできるって、恵まれてることなんだな」と思って。
masato Tom-H@ckさんからアレンジが上がってきて「これはイヤだな」って思ったことは1度もないですね。演奏テイクの問題で「こうしたら、もっとよくなる」と思うことはあるけど、アレンジはいつも素晴らしいですから。
Tom-H@ck ありがたいですね。僕はいろんなジャンルの仕事に関わらせてもらってますけど、SuGに対しては特に愛があるんですよ。それは作業中の集中力にも反映されていると思いますね。付き合いが長いからメンバーの性格とかもわかってるし、「がんばってほしい。俺もがんばるから」という気持ちがすごくあるんです。
アレンジが上がってきたら、まず笑っちゃう
──SuGのカラフルなポップ感とTom-H@ckさんのアレンジのセンスは、確かに相性がいいですよね。Tom-H@ckさんはもともとギタリストだったので、特にギターの2人に対する要求は高いんじゃないですか?
Tom-H@ck アレンジャーとしては全体を見てますけど、「2本のギターをどう配置すればカッコよくなるか?」ということは常に考えてます。当時のディレクターからも「そこはしっかり見てほしい」って言われてたし。
yuji 僕らはド素人から始まって、叩き上げでやってきたバンドですからね。
Tom-H@ck 叩き上げっていうと?
yuji 音楽の理論みたいなことを全然知らないところから、実践を重ねてここまで来たってことですね。Tom-H@ckさんにアレンジをお願いするようになってから、いろんなテクニックを知ることができましたし、少しずつ理論的なこともわかってきて。
shinpei うん。最初は理論的なことが本当にわからなかった。
yuji 偉そうに言うつもりはないですけど、年数を重ねていく中で「吸収しているな」って感じることがどんどん増えてるんですよ。「プレイが変わってきた」とか「こういう曲も作れるようになったんだ」って思うことも多いですし。
masato Tom-H@ckさんのアレンジを通して新しいコードを覚えたり、アレンジの知識も増えたんです。それはバンドメンバー以外の人が入ってくれないとわからないことだし、いつも勉強になってます。
Chiyu ずっと自分の手癖でやってたんだけど、そこを上手く変えてくれたという感じもありますね。自分の中にはないフレーズもどんどん入ってくるし。手こずってましたけどね、最初の頃は。
──Tom-H@ckさんのアレンジは、ベースラインもかなり派手に動きますからね。
Chiyu そうなんですよ。常に動いているというか、動かされてます(笑)。
Tom-H@ck (笑)。ドラムとベースは、すごいことになってますね。自分でも「なんでこんなに難しいんだろう」って思いますから。
Chiyu 「BLACK」(2015年3月発売のアルバム)のレコーディングのときに、すごく難しい曲があったんですよ。「絶対にやり切ろう」と思って必死に練習して弾いたら、Tom-H@ckさんに「演奏できると思ってませんでした」って言われて(笑)。
Tom-H@ck あそこまで完璧に弾いてくれると思ってなかったから、感動したんですよ。バッキバキでしたからね、あのベース。
──Tom-H@ckさんは「けいおん!」の音楽を手掛けたことでも知られていますが、「けいおん!」の楽曲も演奏のレベルはすごく高かったですからね。アレンジする段階では、再現性はあまり考えないんですか?
Tom-H@ck もちろん考えてるんですけど、その水準をかなり上げているのは確かですね。テクニック的にもだいぶ難しいだろうなとは思います。
yuji Tom-H@ckさんが普段、スタジオミュージシャンとばかり仕事してるからですよ。俺らはそこまでうまくないですから(笑)。
shinpei 「これは2~3日練習したくらいでは叩けないな」ってこともよくありますからね。32分音符のフレーズが細かく入ってたり……。
Chiyu Tom-H@ckさんからアレンジが上がってきたら、まず笑っちゃいますから。「今回もすごいな」って。
Tom-H@ck 相当がんばってくれてる感じは、こっちにも伝わってきてます(笑)。あと、武瑠くんが楽曲のビジュアル、世界観をしっかり話してくれるのが、僕としてはイメージがつかみやすくて助かってます。
武瑠 そういう話はよくしてますね、確かに。
Tom-H@ck やっぱりバンドですからね。武瑠くんとか、メンバーがやりたいことがあって、その水準を上げていくのが僕の役割なんです。楽曲が上がってきたときに「これは僕の発想にはないな」と感じることもすごく多いんですよ。彼らの個性を失わないようにしながら、さらに楽曲をよくしていくってことはいつも意識してますね。
次のページ » 「teenAge dream」以降は距離感をぶっ壊した
- SuG ミニアルバム「VIRGIN」 / 2016年3月9日発売 / ポニーキャニオン
- LIMITED A [CD+DVD] 4860円 / PCCA-04344
- LIMITED B [CD+DVD] 3240円 / PCCA-04345
- STANDARD [CD] 2000円 / PCCA-04346
CD収録曲
- teenAge dream
- SICK'S
- 桜雨
- 純・不純異性交遊
- 無限Styles
- In the shadow
- Smells Like Virgin Spirit
LIMITED A DVD収録内容
- ヨーロッパツアードキュメンタリー
- ライブ「VersuS 2015」ドキュメンタリー
LIMITED B DVD収録内容
- 「桜雨」Music Video
- 「Smells Like Virgin Spirit」Music Video
- 「SICK'S」Music Video
- 「teenAge dream」Music Video
- 「桜雨」Music Video Shooting OFFSHOT
SuG「SuG TOUR 2016 SLVS」
- 2016年3月12日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2016年3月13日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2016年3月18日(金)千葉県 DOMe Kashiwa
- 2016年3月20日(日・祝)宮城県 darwin
- 2016年3月21日(月・祝)福島県 郡山CLUB #9
- 2016年3月27日(日)北海道 cube garden
- 2016年4月2日(土)広島県 SECOND CRUTCH
- 2016年4月3日(日)香川県 DIME
- 2016年4月9日(土)兵庫県 神戸VARIT.
- 2016年4月10日(日)大阪府 umeda AKASO
- 2016年4月14日(木)神奈川県 横浜BAYSIS
- 2016年4月16日(土)山梨県 KAZOO HALL
- 2016年4月17日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2016年4月23日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2016年4月24日(日)長野県 LIVE HOUSE J
- 2016年4月29日(金・祝)熊本県 熊本B.9 V2
- 2016年4月30日(土)福岡県 DRUM Be-1
SuG(サグ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」や「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいたミュージックビデオ、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の東京・国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが、2013年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを開催した。2015年3月にはアルバム「BLACK」をリリース。さらに2016年3月にミニアルバム「VIRGIN」を発表する。
Tom-H@ck(トムハック)
サウンドクリエイター、プロデューサー。編曲家としてSuG、ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、T.M.Revolutionといったアーティストの楽曲制作に携わっている。2009年に放送がスタートしたアニメ「けいおん!」のオープニングテーマ「Cagayake!GIRLS」の作曲と編曲を手がけ注目を集める。また2014年にはTom-H@ck featuring 大石昌良名義でアニメ「ダイヤのA」のオープニングテーマ「Go EXCEED!!」を発表した。このほかOxTやMYTH & ROIDの一員としても活動している。