ナタリー PowerPush - SuG
武瑠「Lollipop Kingdom」全曲解説
05「No! More! War!」解説
──5曲目の「No! More! War!」は非常にストレートなタイトルですが、アレンジがバンドサウンドとは一線を画するもので。
サビがキャッチーじゃなかったら、アルバムには入れてないだろうな。メンバーと話したときも「シングル以外の曲はとにかくアルバムの世界観を広げるためにマニアックな要素を入れよう」ってことだったんで、みんなちょっと変わった曲ばかり持ち寄って。そこで最終的に、歌詞と雰囲気で統一感を出すのが自分の使命だと思ってたんです。
──この曲もいろいろ遊び心をくすぐられる内容ですね。
この曲のAメロで歌われているセリフは、今書いている小説の中にそのままセリフとして出てくるんです。それはもう最初っから使おうと思って書いてるんですけどね。要は八百長の戦争なんで、実際に戦争は起こんないわけで、戦争が起こらないのにずっとトレーニングしてるのがつらい(笑)。一等兵Aは「早く戦争させてくれよ」って愚痴を言い、中間管理職である軍曹Aは上からも下からも文句を言われて「もうこうなったら、無許可で開戦宣言しちゃいたいなあ」と言う。それを最終的に「飲もう」と……あ、「No! More! War!」とのダジャレなんですけどね。みんな「飲もう! 飲もう!」って酒を飲んでるんだけど、上官が来たら「いや、みんな『No! More! War!』って言ってたんですよ」ってごまかす(笑)。ネタの要素は強いけど、小説の中で絶対に必要な部分でもあるんです。
06「crispy.」解説
──「crispy.」はロックというよりはソウルやシティポップに通ずるものがあるサウンドで、その意外な曲調に驚きました。
「crispy.」は何回も聴き返したいと思う曲で、とにかくサビがいいし、単純に好きなんです。物語において重要なシーンで、お姫様と王子様が恋に落ちていくところを歌ってます。このストーリーは「ロミオとジュリエット」を基盤にしてる部分もあるんですよ。結ばれちゃいけない2人が恋に落ちるという意味では、古典的な物語じゃないですか。そういう意味で、この曲と次の「Howling Magic」ではしっかり恋愛的要素を出していかないと、それに続く戦争のパートが軽くなってしまうんで。2曲しか尺がない中で、ちゃんと恋愛の深さを出せるか大変でした。
──恋に落ちるパートは最初から2曲で表現しようと考えてたんですか?
はい。長くなり過ぎちゃうとまたちょっと違うな、2曲くらいのバランスがちょうどいいなと思っていて。とにかくこの曲はすごく好きです。空間的なサウンドが、森の中にいる感じを演出しているし。
07「Howling Magic」解説
──続く「Howling Magic」は「crispy.」から一転して、情熱的なロックナンバーですね。
アルバムを象徴する曲を作りたいとメンバーと話したとき、「不完全Beautyfool Days」や「ときどきすてきなこのせかい」に出てくる「不完全」っていう言葉と、「Lollipop Kingdom」という2つのワードから連想ゲームをして、「不完全な魔法」というフレーズに辿り着いて。この「不完全な魔法」を英訳しようと考えたとき、ギターのハウリングに「不完全な音」っていうイメージがあるよねと。そこから「Howling Magic」というタイトルが生まれたんです。
──なるほど。この曲は武瑠さんが作曲も手掛けていますが。
初めてギターで作った曲なんですよ。自分はいつも打ち込みだけで曲を作ってるから、今回は新鮮で楽しかったですね。パンクっぽいパワーコードから始まって、Bメロでラップが入り、そこからサビでロマンティックな展開に突入する。パンクにかわいさとゴシック感がプラスされて、なおかつラップが入ってるのに、ちゃんとSuGっぽい感じの曲に仕上がってますね。
──「Pastel Horror Yum Yum Show」とこの曲はビデオクリップも制作しましたよね?
そうですね。特に「Howling Magic」はシングルとしてイケる曲だと思ったんで。そういうキャッチーな曲と「Pastel Horror Yum Yum Show」っていうマニアックな曲の2曲で「Lollipop Kingdom」ですって言いたくて、あえてPVを作りました。「Howling Magic」に関しては最後に「A sweet dream will be finished if this night breaks.」っていう意味深なフレーズで終わるんですが、これは小説の中で起承転結の転に当たる言葉で。2人の甘い夢は夜が明けたら終わってしまう、朝になったらついに戦争が始まるんです。
08「sleazy ARMY blood」~10「SWEET COUNT DOWN」解説
──そして8曲目の「sleazy ARMY blood」から戦争シーンに突入します。ここから3曲はヘビーな曲が続きますが、この曲調は戦争をイメージしたものですか?
そのとおりです。駆け抜けるように戦争シーンを描きたくて、特に「sleazy ARMY blood」と「yellow strider」は曲の尺を短くして。
──特に「yellow strider」は1分半程の曲中、ツーバスが連打されてるので、ガーっと駆け抜けていく感じが一番表現されてるなと思います。
このパートは小説で読むとただの戦争というわけではなくて、実は「人類はずっと同じ過ちを繰り返してる」っていうことに対する悲しみやむなしさが表現されてるんです。実は「Lollipop Kingdom」の時代背景は、今自分たちが生きてる文明が終わったあとの文明ってイメージで。だから小説の冒頭は「昔々のお話」じゃなくて「未来、未来のお話」って始まるんです。今の俺たちの文明が終わったことを歴史上の出来事として「SWEET COUNT DOWN」と呼んでいて、そこを境にASCD(After SWEET COUNT DOWN)1年と年号がカウントされていく。この物語自体はASCD1590年代の話なんですけど、それって現世でいうと「ロミオとジュリエット」が書かれたと言われている年代なんです。要するに、そういった人間の業の繰り返しを表現したかったんです。
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Lollipop Kingdom」メンバーインタビュー
- 39GalaxyZ only Live ADDICT Vol. 1(FC限定ライブ@恵比寿Liquid Room / 2011.12.24)
- Chakulza CM映像
- Chakulza CM撮影舞台裏 in Thailand
ブックレット
「Lollipop Kingdom -episode 0-」
グッズ
SuG特製トレーディングカードホルダー(過去のトレカが収納できる“武瑠デザイン”のカードホルダー第2弾)
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
- ときどきすてきなこのせかい ※通常盤のみ収録
[初回限定盤] DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video撮影メイキング
- 「Howling Magic」Music Video
- 「Howling Magic」Music Video 撮影メイキング
[初回限定盤] フォトブック
「Lollipop Kingdom」(全20P)
[通常盤] 特典
初回生産分封入:トレーディングカード(全10種のうち1種)
SuG(さぐ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名は黒人のスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。HEAVY POSIVIVE ROCKというコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手掛ける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに、2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。