ナタリー PowerPush - SuG
武瑠「Lollipop Kingdom」全曲解説
SuGのニューアルバム「Lollipop Kingdom」がついにリリースされた。前作「Thrill Ride Pirates」から約1年ぶりに発表される本作は、アルバムを通じてひとつのストーリーが展開されていくコンセプチュアルな作品集。まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのような、さまざまなタイプのサウンドとキャッチーなメロディ、そして印象的なフレーズの数々をたっぷり楽しむことができる。
今回ナタリーでは、バンドのブレーンである武瑠(Vo)にインタビューを敢行。アルバムに込められたテーマや制作過程に加え、軸となるストーリーとともにアルバムの全収録曲について解説してもらった。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 平沼久奈
重いテーマをキャッチーかつカラフルにデザイン
──今回のアルバム「Lollipop Kingdom」は非常にカラフルでバラエティに富んだ作品だと思いました。「砂糖菓子の王国で起こる、最高に不完全なラヴストーリー」というアルバムのコンセプトはどのようにして生まれたんですか?
元々は「ときどきすてきなこのせかい」(アルバム通常盤のみ収録)の歌詞を書いたところから始まりました。いつも作詞するときはアルバム全体のストーリーを考えつつ、ところどころの伏線を活かしていくんですけど、もっと本能的に歌詞を書きたいと思って作ったのが「ときどきすてきなこのせかい」なんです。そうしたら、「悪魔と天使が×××して 生まれた人間なんだから ズルく優しく寂しがって 矛盾だらけに生きちゃダメなの?」っていうフレーズが自然と出てきて。そこから「人間は天使と悪魔のハーフで、最初から不完全であるってことをテーマにしたアルバムを作ってみよう」って思い付いたんです。
──なるほど。
で、それとは別に「☆Gimme×Gimme☆」と「Toy Soldier」っていうシングル曲が先にあったんですけど、この2曲はそれぞれお菓子の国とおもちゃの国のことを歌っているんです。これらの要素から、「人間は不完全である」という重いテーマをキャッチーかつカラフルにデザインしていこうと思い、このアルバムの制作をスタートさせました。
──先にシングルとして発表された「☆Gimme×Gimme☆」と「Toy Soldier」も、アルバムの中の1曲として聴くとまた違った印象があります。
アルバムを構成する上で、この2曲にもちゃんと意味があることをわかりやすく打ち出すために、「☆Gimme×Gimme☆」と「Toy Soldier」のジャケットにはちょっとした遊びも取り入れていて。実はシングルのジャケットデザインはそれぞれお菓子の国とおもちゃの国の国旗になっていて、アルバムジャケットにも使われているんです。
──(「Lollipop Kingdom」3939BOXのジャケットを観て)本当だ、気付きませんでした。こうやってアルバムに向けて長期間一貫したコンセプトで創作活動を行うアーティストって、日本では珍しい気がします。
海外にはDREAM THEATERやTOOLみたいにコンセプチュアルな作品を制作するアーティストはいますけど、確かに日本では珍しいかもしれませんね。でも、俺らはそっち方面に偏りすぎるのもちょっと違うかなと。それは避けたいと思っていて。コンセプトを優先しすぎることによって難しい方向に走って、曲がキャッチーじゃなくなることもありますよね。そもそも俺たちの音楽にジャンルというものが存在してるかわからないですけど、ヒップホップだったり明らかに違うジャンルのサウンドを取り入れるときは、シングル曲って言えるレベルに達さないと発表しないっていう考えがバンド内の共通認識としてあって。今回のアルバムにはそのハードルを超えた曲しか入ってないと思います。
「Lollipop Kingdom」の構想は前作発売前からあった
──では、取っ掛かりになる「ときどきすてきなこのせかい」があって、そこからシングル曲を経て、今作の世界観にどんどん広がりが出たと。
そうです。でも、全然偶然じゃなくて、ゆっくり考えながら作ってきたからこういう作品に仕上がったんです。そもそもシングル曲にしても、いい曲ができたから先に出してあとでアルバムの流れに組み込もうってことではなく、アルバムの仕上がりまでを逆算して考えて出してるんですよ。
──曲順も早い段階から決めているんでしょうか? つまり、本作では1曲完成するたびに「この曲はアルバムのこのあたりに入れよう」と考えたんですか? それともアルバムを制作してる最中に「アルバムのこの位置にはこういう曲が欲しい」と考えて、それに見合った曲を作っていったんでしょうか?
後者ですね。アルバム全体のストーリについては先にメンバーには話して、あとで曲を持ち寄って選曲会をするという。例えば戦争のパートではこういう曲が欲しいとか、戦争の終わるきっかけを「不完全Beautyfool Days」で歌って、その後はどういう曲を配置するとか、1年かけてゆっくりとまとめていきました。
──そうだったんですね。
はい。で、それとは別に「Lollipop Kingdom」っていうタイトルは前作「Thrill Ride Pirates」がリリースされる前からあって。いつもそうなんですけど、アルバムが発売される3カ月くらい前にはもう次のアルバムのタイトルが出てきて、次第にストーリーや大まかなイメージが自分の中に浮かんでくるので、そこに向かって制作を進めていくんです。なので、前のアルバムからは1年しか経ってないけど、構想自体は1年半くらいなんですよ。
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Lollipop Kingdom」メンバーインタビュー
- 39GalaxyZ only Live ADDICT Vol. 1(FC限定ライブ@恵比寿Liquid Room / 2011.12.24)
- Chakulza CM映像
- Chakulza CM撮影舞台裏 in Thailand
ブックレット
「Lollipop Kingdom -episode 0-」
グッズ
SuG特製トレーディングカードホルダー(過去のトレカが収納できる“武瑠デザイン”のカードホルダー第2弾)
CD収録曲
- Lollipop Kingdom
- Pastel Horror Yum Yum Show
- ☆Gimme×Gimme☆
- Toy Soldier
- No! More! War!
- crispy.
- Howling Magic
- sleazy ARMY blood
- yellow strider
- SWEET COUNT DOWN -Album Ver.-
- きたないことば
- 不完全Beautyfool Days
- DOKI DOKI TV CREW
- Fancy Cake Yum Yum Show
- ときどきすてきなこのせかい ※通常盤のみ収録
[初回限定盤] DVD収録内容
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video
- 「Pastel Horror Yum Yum Show」Music Video撮影メイキング
- 「Howling Magic」Music Video
- 「Howling Magic」Music Video 撮影メイキング
[初回限定盤] フォトブック
「Lollipop Kingdom」(全20P)
[通常盤] 特典
初回生産分封入:トレーディングカード(全10種のうち1種)
SuG(さぐ)
2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名は黒人のスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。HEAVY POSIVIVE ROCKというコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手掛ける。また、武瑠は俳優として2009年春公開の映画「ビートロック☆ラブ」に出演。2010年3月には自身のファッションブランド「million $ orchestra」を立ち上げ、同年12月発売の女性ファッション誌「KERA」では表紙を飾った。さらに、2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。