菅田将暉|憧れだった正義のヒーロー

菅田将暉が4thシングル「ロングホープ・フィリア」を8月1日にリリースする。映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」主題歌、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」エンディングテーマとして制作されたこの曲は、秋田ひろむ(amazarashi)の作詞作曲によるエモーショナルなロックチューン。カップリングには菅田自身が作詞し、仲間たちと作曲した「ソフトビニールフィギア」が収録されている。音楽ナタリーでは菅田に単独インタビューを行い「ロングホープ・フィリア」「ソフトビニールフィギア」の制作、今後の音楽活動などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 草場雄介

いつもとはかなり違う感覚で過ごしていました

菅田将暉

──初のライブツアー「菅田将暉 Premium 1st TOUR 2018」から約半年が経ちました。

早いですね。あっと言う間に平成も終わりますね。

──ホントですね(笑)。アルバムをリリースして、ツアーをやってみていかがでしたか?

めちゃくちゃ印象に残ってますね。まず“役に入ってない時間”を過ごすのがひさびさだったんです。役になりきる必要がないから、誰かの感情や人生を考えなくてもいい時間だったと言うか。役者はそのときに演じている役のことを常に考えているし、プロモーションのときも含めて、自分自身のことからは一歩引いて生活しているんです。でも音楽をやらせてもらっているときはそうじゃなくて、「PLAY」の制作からライブにいたる時期は役者の活動とはかなり違う感覚で過ごしていました。

──ライブのMCで「スタッフに『菅田くんにはこういう時間が必要なんだね』と言ってもらった」と話していましたね。

そういうことを言ってもらえるのはありがたいと思ったし、「この先どうするか」みたいなことはひとまず考えず、「とにかくやろう」という環境があるのはホントにうれしくて。役者業ってすごく一方通行な世界だと思うんですよね。こちらが表現したものを作品として提示して、それをお客さんが選択して観てくれるわけですけど、直接会わないとわからないことがあるなとも思うんですよ。ライブの場合は役に入っていない自分がいて、いつも応援してくれている人たちがいる。だからこちらがやろうとしてることがどれだけ伝わっているか確認できると言うか。あと普段は赤の他人同士の人たちが集まって、一緒に歌って、ジャンプして、叫んで、笑う時間が純粋に好きだなって思いました。

──ツアーの前は「最後までライブをやり切れるかどうかわからないですよ」と言ってましたけど、大丈夫でしたね。

微妙なところでした(笑)。歌うのって普段とは全然違う体力を使うから。ペース配分を考えずにやってしまったけれど、まあそれはそれでよかったかなと思っています。

僕はヒーローでもなんでもない

菅田将暉
菅田将暉

──ニューシングル「ロングホープ・フィリア」は、映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」エンディングテーマとして書き下ろされた楽曲です。「ヒロアカ」とのコラボレーションが決まったときはどう思いましたか?

「僕のヒーローアカデミア」は連載が始まったときから読んでいたので、うれしかったし、びっくりしました。「週刊少年ジャンプ」は男の子がいろんなことを学ぶ場所だと思うんです。僕も小学生の頃から毎週発売日を楽しみにしていたし、少年ジャンプの作品に自分が関われるのはすごくうれしいことなので。映画「暗殺教室」に出演して初めて「少年ジャンプ」に自分の記事が載ったときはうれしくて写真を撮りましたから(笑)。実写映画「銀魂」にも出演させてもらっているし、「少年ジャンプ」の作品に関わる機会はけっこうあったんですよね。

──しかも「ヒロアカ」は「少年ジャンプ」王道のストーリーの作品ですからね。

そう、まさに“友情、努力、勝利”をテーマにしたマンガ。僕はそういうマンガが大好きなんです。正義感の強い普通の子……なんなら劣等生がヒーローになっていくストーリー。「ヒロアカ」の主人公のデクもそうですけど、特に目立ったところはない主人公が成長して、いつの間にか周りを巻き込んでいきますからね。デクがオールマイト(「ヒロアカ」の世界で絶大な人気を誇るヒーロー)に能力(“ワン・フォー・オール”)を譲ってもらうシーンなんて「よし!」(右手でガッツポーズ)みたいになってましたから(笑)。

──(笑)。男性はやっぱりヒーローへの憧れがずっとありますよね。

そうですね。「ロングホープ・フィリア」を書いてくれた秋田ひろむさん(amazarashi)が「(若きヒーローという意味では)菅田君とデクは、僕には重なって見えます。」とコメントしてくれたこともすごくうれしくて。僕はヒーローでもなんでもないけど、こうやって表に出ている身としては、自分より下の世代、自分が死んだあとの世界を含めて、何かを残せたらいいなと思っているので。秋田さんからそういう言葉をもらえたのは光栄でした。

──下の世代に憧れられる存在になるべき、という思いもあると。

はい。僕も学生の頃にドラマや映画を観て「この人、カッコいいな」と思いながら育ってきたので。これからは自分たちがそういう存在にならないと、映像作品がどんどん観られなくなっていく気がするんです。自分は普通の高校生からいきなり仮面ライダー(菅田のデビュー作は「仮面ライダーW」)になってこの世界に入ったんですけど、一時期だけではなくて、ずっと前に出続けることが大事なのかなと思っていて。特に何ができるわけじゃないですからね、自分は。特殊な力があるわけではないし、パリコレモデルのようなスタイルがあるわけでもない。それでもこうやって表に出ていられるのはうれしいことだし、周りに感謝ですね。