STU48の瀧野由美子は2017年に発表されたグループ初のオリジナル楽曲「瀬戸内の声」でセンターに抜擢され、これまでにリリースされた全シングルで選抜メンバー入り。ニューシングル「君は何を後悔するのか?」を含めて計8作のシングルでセンターを務め、グループの顔として活躍してきたSTU48の絶対的エースだ。
そんな瀧野が、今年7月に行われた全国ツアーの初日公演にて、STU48から卒業することを発表。これはSTU48はもちろん、48グループ全体にとって大きなニュースとなった。
11月15日にリリースされた「君は何を後悔するのか?」はSTU48にとって通算10枚目のシングルで、瀧野が参加する最後の作品。音楽ナタリーでは瀧野に10個のキーワードに沿った単独インタビューを行い、卒業を決断した理由、センターとしてグループを背負ってきたことへの思い、卒業後の展望などを語ってもらった。
取材・文 / 左藤豊撮影 / はぎひさこ
①卒業に対する思い
──瀧野さんは今年7月29日、「STU48 全国ツアー2023」の神戸公演で卒業を発表されました。卒業についてはいつ頃から意識していましたか?
STU48に入った瞬間から意識はしていました。もちろんそれは「卒業したい」という意味ではなくて、いつか自分にも必ず卒業する日が訪れるんだという意識です。そして、私が初めて参加した総選挙(2017年6月開催の「AKB48 49thシングル 選抜総選挙」)で渡辺麻友さんが卒業発表される姿を生で見て、「私もいつか渡辺麻友さんのように胸を張って、周りから惜しまれるようなきれいな卒業ができたらいいな」と思いました。そのためにはSTU48で必要としてもらえる存在にならなきゃいけないし、自分の中で「やり切った」と胸を張れるくらいにならないと理想の卒業はできないと思って、ずっとがんばってきたつもりです。
──今回卒業発表をされたということは、つまり「やり切った」という心境なんですね?
そうですね、やり切りました! 特に何か大きな出来事があったわけではないのですが、いろんなきっかけが重なったことで、卒業に向けて動き始めて。ちょうどそのタイミングで「花は誰のもの?」(2022年4月リリースの8thシングル)がロングヒットしてたくさんの人に聴いてもらうことができたので、もう悔いはないなと思いました。そして卒業発表後、こうして卒業シングルとして新曲をいただいたり、卒業コンサートを開催できたり、卒業を記念する2nd写真集の発売が決まったり……自分が思い描いていた以上の理想の卒業ができるんだと今すごく実感しています。
②卒業シングル
──10thシングル「君は何を後悔するのか?」は、瀧野さんが最後に参加する作品になります。
10枚目という節目のタイミングで卒業シングルを作っていただけて、すべてが報われたような気持ちになりました。AKB48での初選抜入りが渡辺麻友さんの卒業シングル「11月のアンクレット」(2017年11月リリース)だったこともあって、卒業シングルというものへの憧れは人一倍大きかったから、とてもうれしいです。
──表題曲の「君は何を後悔するのか?」を最初に聴いたとき、どのように感じましたか?
まず、タイトルや歌詞の中にある「後悔」という言葉に目がいきました。私、STU48での活動に後悔はまったくないんですよ。オーディションを受けたことから今に至るまで、たとえうまくいかないことがある道だったとしても、すべて自分で後悔のない選択肢を選んできたので。ただ今回、秋元(康)先生から「後悔があることは恥ずかしいことじゃない」という言葉をいただき、歌詞を読み込むことで、今まで後ろ向きなイメージしかなかった「後悔」という言葉を前向きに捉えられるようになりました。後悔を踏み台にすることで、新しい一歩を踏み出すきっかけになるのかなって。
──ミュージックビデオは瀬戸内7県で撮影されたそうですね。
はい。7県で撮るのはSTU48最初のオリジナル曲「瀬戸内の声」のMV以来で、シングル表題曲としては初めてです。メンバーごとに各県に分かれ、それぞれ撮影をしました。みんな同じ日に朝から撮影をして、夜に全員集まってダンスシーンを撮影するというスケジュールで。石田みなみちゃんが「みんなに会えて一緒に踊れる喜びをより実感した」と言っていたんですけど、私もまさにその通りだなと思いました。
──MVの中で印象に残っているシーンは?
山口県で撮った朝日のシーンです。MVだけじゃなくジャケット写真も朝日をバックに撮っているんですよ。これから新しい人生の1日がスタートする私の背中を押してもらっているような気持ちになりました。なぁちゃん(岡田奈々)のSTU48での最後のシングル「ヘタレたちよ」(2021年10月リリース)も、MVに朝日のシーンがあったので、そこともリンクしているのかなと思いました。
③メンバーの存在
──瀧野さんにとって、STU48メンバーはどのような存在でしたか?
仲間であり、戦友であり、味方ですね。特に私にとって同期の存在は本当に大きくて。卒業したメンバーも含め、この1期生じゃなかったら私はここまで長く活動できていなかっただろうなと思います。
──同期がいたから続けられたと思える理由はなんでしょう?
私は最初からSTU48のセンターに立たせてもらいつつ、AKB48での活動などもあって、みんなとは違う行動をすることが多かったんです。でも、そんな私が外から帰ってきたとき、いつも同期のみんなは温かく迎えてくれたんですよ。普段通りわちゃわちゃ楽しく接してくれたと同時に、私がいない間のレッスンの内容を教えてくれたりして。きっとみんな「自分がセンターになりたい」とかいろんな思いを抱えていたはずなのに、ずっと私の味方でいてくれました。今改めて振り返っても、それってなかなかできることじゃないなと思います。本当にいろんなところで同期には助けてもらいました。
──では、後輩メンバーのイメージはいかがでしょう?
後輩はとても頼もしい存在。ドラフト3期生はもうほとんど後輩とは思っていなくて、9割ぐらい同期だと思っています(笑)。そして、2期生も今ではあまり後輩という感覚はないかな。特にさーやん(高雄さやか)はかなり前からSTU48を一緒に引っ張っていく存在になっていますし。2期生はみんなもう「自分が引っ張っていくんだ」くらいの気持ちでがんばってほしいですね。2期生は活動期間こそ長いけど、加入してすぐコロナ禍に入ってしまったのでまだ体験できていないことがたくさんあると思うんですよ。だからこそ、これからいろんなところで活躍してほしいです。
④STU48らしさとは
──瀧野さんは「STU48らしさ」を言葉で表すとしたら、いったいなんだと思いますか?
活動しながら「STU48の曲って本当にいい曲ばかりだな」とよく感じています。どの曲も歌詞がとても深いので、メンバー同士で話し合ったり、ダンスの先生にアドバイスをいただいたりしながら曲の世界観を作り上げていくところがSTU48らしさにつながっているのかなって。そして、MVなどを地元瀬戸内のロケーションで撮影しているのもSTU48らしいところですね。
──確かに瀬戸内の7県すべてが拠点というのは、STU48にとって何よりの強みですよね。
はい。ここまでシングル10作のMVを撮ってきましたけど、瀬戸内にはまだまだ素敵な場所がたくさんありますから! あと、瀬戸内7県ってかなり広いんですよ。例えば広島から四国に行くとなると移動時間がかなりかかって、集合時間も早朝だったりする。でもメンバーみんな次第に移動に慣れてきて、今ではそれに合わせて体調をコントロールできるようにもなりました。ここまで移動慣れしているアイドルってそんなに多くはないと思うので、そこもSTU48らしさかな?(笑)
⑤瀬戸内のよさ
──では、瀬戸内のよさや魅力と言うとどういう部分でしょう? 瀧野さんはSTU48加入前からずっと瀬戸内に住んでいますが、STU48の活動を通して知った魅力もたくさんあると思います。
瀬戸内はどんな場所でも景色がきれいですね。私としては、自然と人が共存している感じがとても落ち着くので大好きです。私はずっと瀬戸内から出たくなくて、アイドルになるという夢も早い段階からあきらめていました。そんな中、STU48が新たに結成されると知り、オーディションに応募することを決めて。やっぱり、瀬戸内は私の人生の中心にある重要な場所なんですよね。先日2nd写真集の撮影を広島で行ったんですけど、7年間の活動の思い出がよみがえってきて、本当にいいところで活動してきたんだなとしみじみ感じました。今は当たり前のように瀬戸内のいろんな場所に行っていますが、STU48を卒業したらなかなか行けなくなるのかなと思うとやはり寂しいですね。
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瀧野由美子を紐解くキーワード⑥~⑩