STU48「君は何を後悔するのか?」特集 瀧野由美子ソロインタビュー|絶対的エースが卒業を決めた思い (2/2)

⑥センターを務めるということ

──瀧野さんは「瀬戸内の声」に始まり、シングル10作中8作で表題曲のセンターを務めました。

振り返ってみると、もちろん自分でもがんばったけれど、やはり周りの人たちの支えや助けがあったからこそセンターに立てていたなと思います。決して自分が引っ張ったわけではなく、みんなが私の背中を押してくれて、全員で一緒に進んでいた感覚です。だからこそ私も「みんなのためにがんばりたい」と思っていました。

──初期は「なぜ自分がセンターに選ばれたんだろう」と葛藤を抱えていた印象がありますが、当時と今では心境もまったく異なると思います。

そうですね。私の中で大きく気持ちが変わったのが、メンバー全員選抜のシングル「大好きな人」(2019年7月リリース)のリリースタイミングです。それまではどの楽曲も選抜制で、どんなに多くても16人でしか歌えなかったんです。当時私は「全員でSTU48なのに、なんでわざわざ分けるんだろう」とモヤモヤした感情を抱えていて。しかも、私は高校時代の吹奏楽部でずっと選抜に入れない側の人間だったこともあって、STU48では「選抜に入っていない子たちの分まで私ががんばらなきゃいけない」と自分を追い込んでしまっていました。でも「大好きな人」が全員選抜になったことでその重圧から解放され、さらにみんなが支えてくれる心強さもあり、「自分は1人じゃないんだ!」と思えたんです。ネガティブだったセンターに対する気持ちはそこで大きく変化しました。

瀧野由美子

⑦自身の成長、変化

──STU48で約7年活動したことで、きっと自分自身の変化や成長も感じていると思います。

目に見える部分の変化で言うと、やはりメイクですね(笑)。私、STU48に入るまでほとんどメイクをしていなかったんです。下地を塗ってファンデーションを塗って……という順序も知らなかったし、試供品のメイク道具を使っていたぐらい関心も興味もなくて(笑)。でもSTU48で活動を始めると、ほぼ毎日メイクさんに会いますし、メンバーもそれぞれお気に入りのメイク道具を持っているので、特に勉強しようという意識がなくても自然と覚えることができました。今でこそ当たり前のように自分のメイク道具一式がそろっていますけど、加入当初は考えられなかったことです。

──アイドルは人に見られる職業ですし、とても重要なことだと思います。

はい、見られることの大切さを実感しました。高校時代に吹奏楽部で、サックスの先生に「アイドルが人に見られてきれいになっていくように、あなたたちは人に聴いてもらうことで演奏を磨きなさい」と言われたことがあるんですけど、自分がアイドルになってみてその意味がすごくわかりました。

⑧ターニングポイント

──6年半の活動の中で、ターニングポイントになった出来事を挙げるとしたら何が思い浮かびますか?

私の中で大きな変化があった時期は2回あって。1つは先ほどお話しした「大好きな人」の全員選抜、そしてもう1つがコロナ禍です。ちょうどこの時期になぁちゃんの兼任解除もあり、自分の中でアイドルに対する考え方が変わりました。私は昔から、AKB48の酸いも甘いも全部見せてくれるところが好きでした。きれいごとだけじゃないアイドルの世界を見せてくれるところに興味を持ったんです。でももし自分がファンの立場だったとして、どういうアイドルを応援したくなるのかなと考えたとき、自慢できるアイドルになりたいなって。当たり前のことだけど、ファンの人に対して嘘をつかないとか、されて嫌なことはしないとか、マイナスな行動は取らないアイドルになりたいとその時期に思いました。

──コロナ禍の中で自分と向き合い、改めて自分の理想のアイドル像が浮かび上がったわけですね。

それと同時に、センターに対する考え方もまた変わりましたね。「センター」とか「センターじゃない」とか、こだわるのはそこじゃないなって。あくまで1人のアイドルとして応援してもらえる存在になりたいと思ったとき、センターを務めることへのプレッシャーはもうほとんどなくなりました。

瀧野由美子
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⑨後悔していること、やり残したこと

──先ほど「後悔はまったくない」とおっしゃっていましたが、本当にやり残していることや卒業までにやっておきたいことはありませんか?

福田朱里ちゃんのプロデュース公演に出たい! ただ、新公演ってそんなにすぐ作れるものではないので、自分の残りの活動期間を考えると難しいのかなと思っています。「後悔」ではないけれど、「出たかったなあ」という心境ですね。彼女はもともとアイドルが大好きで、1期生としてずっと活動していてSTU48に詳しいから、彼女が公演を作ればきっとSTU48にとって財産になると思うんですよ。なので、私の卒業後になってしまったとしても、朱里ちゃんからいい報告が聞ける日を楽しみに待っています。

瀧野由美子

⑩卒業後の未来

──STU48卒業後、瀧野さんが思い描いている未来について教えてください。

卒業後は女優さんを目指してがんばろうと思っています。STU48では決して演技のお仕事をたくさんしていたわけではないので、またイチからのスタートになります。それ以外にもモデルさんや、大好きな鉄道に関するお仕事もできたらいいなと思っています。

──女優になりたいという憧れはいつ頃から持っていたんですか?

昔からテレビドラマや映画を観るのが好きだったので、STU48に入る前から憧れはありました。ただ、STU48に入ってからもその思いは持っていたものの、アイドルとしての活動をしているとその憧れに割ける時間がなかなかなくて。でも、卒業後の自分の将来を考えたとき、改めてその夢を目指したいと思いました。

──では、STU48メンバーに伝えたいことは?

グループで活動しているとはいえ、メンバーみんな自分のことを一番わかっているのは自分自身のはず。だから、まずは自分を大事にしてほしい。そして、それと同じくらいファンの人たちを大切にしてほしいです。活動をしているといろんな言葉が聞こえてくると思うけれど、心ない声は受け流しつつ、自分を大切に思ってくれているファンやお仕事で関わる人たちの声をしっかり受け止めてほしいなと思います。

──最後に、これまで応援してくれたファンに向けてもメッセージをお願いします。

私は今「STU48でよかった。オーディションを受けて1期生として加入できてよかった」と心から思っています。約7年間活動してきて、こんなに幸せな卒業を迎えられるのは本当にファンの方々のおかげなので、皆さんには感謝の気持ちしかありません。広島グリーンアリーナで卒業コンサートを行い、卒業シングルをリリースし、自分の目標が最後に全部叶っていくのが今すごくうれしいので、STU48での最終活動日まで感謝を忘れず活動していきたいと思います。本当にありがとうございました。そして芸能界からは卒業しないので、アイドルじゃない瀧野由美子も応援していただけるなら、引き続きこれからもよろしくお願いします!

瀧野由美子

プロフィール

STU48(エスティーユーフォーティーエイト)

国内6番目のAKB48の姉妹グループとして2017年3月に誕生。瀬戸内地方を本拠地とし、1つの海と7つの県を拠点に活動している。2018年1月にメジャーデビューシングル「暗闇」を発表した。同年7月には平成30年7月豪雨の被災地への支援プロジェクト「がんばろう!瀬戸内」を立ち上げ、公演に合わせて街頭募金などを行ったほか、9月からチャリティコンサートツアーを実施。2019年4月には瀬戸内海を舞台にした船上劇場「STU48号」がオープンし、同年11月より初の全国ツアーを行った。2021年1月に東京・日本武道館で単独コンサート「新春STU48コンサート2021~瀬戸内からGO TO 武道館~」を開催。同年5月にSTU48号での公演が終了したが、その後は瀬戸内エリアを中心に会場を固定せずに各地を巡る形で公演が行われている。2022年4月に8thシングル「花は誰のもの?」をリリースし、ロングヒットを記録。2023年11月にSTU48の絶対的エース瀧野由美子の卒業シングル「君は何を後悔するのか?」を発表した。