ナタリー PowerPush - 中田ヤスタカ(CAPSULE)×J.J.エイブラムス

映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」公開記念 日米マエストロ対談

2259年のクラブ

映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」より。(c) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

──そのシーンで描かれていたように、2259年の地球上にも、仲間と集まってお酒を飲んで踊る、クラブのような場所は存在し続けると思いますか?

J.J. まず、「スター・トレック」シリーズは純粋なエンタテインメント作品だからね(笑)。まるで予言書のように未来の地球を描く作品ではないし、科学的な考証を突き詰めて未来の地球を描いたわけでもない。その上で言うなら、2259年の世界でも人間は二足歩行をし続けているだろうし、屋根のあるところに住み続けているだろうし、裸ではなく服を着て過ごしているだろうし、仲間と集まるときにはお酒を飲んで、その場所では音楽が流れていると思うよ(笑)。

中田 特にダンスミュージックは身体に属する音楽だから、現在のダンスミュージックというのは、現在の人間の身体に適したリズムを持っている音楽だと思うんですよ。もしこの先、人間の能力が広がって、超人のような人間が現れたとしたら、そこではその新しい身体に適した新しいダンスミュージックが生まれるんじゃないかな。

──今作で、自宅にいるカークがレコードプレーヤーでアナログ盤をかけているシーンも観逃せませんでした。そこにJ.J.さんのこだわりを感じたのですが。

J.J. その通り(笑)。アナログへのこだわりは僕の中に常にあるものだ。僕はいつも最新技術とアナログの自然な融合を目指しているんだ。次の監督作品となる「スター・ウォーズ」でも、できるだけアナログ的な手法を使うつもりだよ。

──おお! それは「スター・ウォーズ」旧3部作のファンとしてはうれしい発言ですね! J.J.さんは自分の監督作品で、これまでしばしば劇中の音楽を自身で作曲もされてきましたよね。ミュージシャンとしては、どのようなタイプの音楽に影響を受けてきたのでしょうか? 

J.J. もともと音楽は完全に自分の趣味としてやってたんだけど、テレビシリーズの「LOST」や「FRINGE」を作ったときに、20秒から30秒くらいのテーマ曲を作る機会があってね。それがもう、楽しくて仕方なくてね(笑)。いつか自分の映画で、すべての音楽を自分で作曲するのが夢なんだ。シンセサイザーが大好きなので、影響を受けた音楽家としては、ジャン・ミッシェル・ジャールとトーマス・ドルビーと坂本龍一。それと、映画音楽の分野では、ジェリー・ゴールドスミスをもっとも尊敬してるね。

“きゃりーっぽい歌”ではない理由

中田ヤスタカ(CAPSULE)

──今回中田さんが手がけた「Into Darkness」では、ボーカルにきゃりーぱみゅぱみゅが参加していますが、普段のきゃりーの作品におけるボーカルとはかなり歌の音処理の仕方が異なってますよね。今回、きゃりーを起用した理由、そして、いわゆる“きゃりーっぽい歌”ではない歌にした理由を教えてください。

中田 まず、名義が違うというのが大きくて。「きゃりーぱみゅぱみゅ」を僕がプロデュースする音楽ではなく、「中田ヤスタカ」の名義で制作に参加する作品だということ。そして、そもそもこれは映画のための曲であってボーカルプロデュースとはまったく異なります。ほかの人に入ってもらう選択肢もありましたが、そういった曲にあえてきゃりーが参加することで、音楽活動というものの面白さが立体的にいろいろ見えてくるんじゃないかなって。

──J.J.さんは、きゃりーのことは以前から知ってましたか?

J.J. 映画会社が中田さんにオファーをした時点では知らなかったんだけど、今はよく知ってるよ。YouTubeでミュージックビデオを何本か観て、すっかり大ファンになってしまったよ(笑)。

──いつの日か、中田さんの音楽のミュージックビデオをJ.J.さんが監督するようなことがあったら、両者のファンとしてとても興奮するのですが……。

J.J. そうだね。実はこれまでミュージックビデオを作ったことはなくて、3分間の音楽に映像を付ける仕事というのは自分にとっても新しいチャレンジになるから、機会があったらいつかやってみたいね。今ここで新しい音源をもらえたら、すぐにでもイメージが湧くと思うんだけどね(笑)。

左から中田ヤスタカ(CAPSULE)、J.J.エイブラムス。

スター・トレック×中田ヤスタカ(capsule) feat.きゃりー
ミュージック・トレーラー

映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」8月23日(金)よりTOHO シネマズ日劇ほかで全国ロードショー
映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(c) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

監督:J.J.エイブラムス

出演:クリス・パイン / ザッカリー・クイント / ゾーイ・サルダナ / ベネディクト・カンバーバッチ / サイモン・ペッグ / ほか

配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

J.J.エイブラムス、チャールズ・スコット、中田ヤスタカ(capsule)「Into Darkness(Digital Edit)」2013年7月10日発売 / 250円 / iTunes Storeにて配信中
J.J.エイブラムス、チャールズ・スコット、中田ヤスタカ(capsule)「Into Darkness(Digital Edit)」
中田ヤスタカ(なかたやすたか)
中田ヤスタカ

2001年に自身のユニットであるCAPSULEにてCDデビュー。以降、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、アニメ映画「ONE PIECE FILM Z」オープニングテーマ曲や「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラック、テレビ・ラジオ番組のテーマ曲制作など多方面にてに活躍中。昨今は日本人初のカイリー・ミノーグへのリミックス提供をはじめ、映画 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の挿入楽曲に携わるなどグローバルな活動が目覚ましい。その自由奔放かつ刺激的な楽曲群は音楽界のみならず、服飾や美容、映像などクリエイティビティを共有するシーンからも熱い支持を得ている。また自身のレギュラーパーティの主宰・メインアクトを務め、大型フェスやファッションショーイベントなどにも出演している。

J.J.エイブラムス
J.J.エイブラムス

1966年、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。1990年「ファイロファックス / トラブル手帳で大逆転」で脚本家としてデビュー。その後も1991年公開の「心の旅」、1998年公開の「アルマゲドン」の脚本などを手がけ、2006年に「M:i:III」で映画監督デビュー。これが全世界で大ヒットを記録し、2009年に監督2作目となる「スター・トレック」を製作してヒットメーカーの地位を不動のものとした。さらに2015年公開予定の「スター・ウォーズ」新シリーズの監督に就任。また、音楽の才能にもあふれ、「エイリアス / 2重スパイの女」「FRINGE / フリンジ」「LOST」「PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット」「レボリューション」のテーマ音楽を作曲し、「フェリシティの青春」のテーマソングも共同で書いている。