音楽ナタリー Power Push - SPYAIR
再び走り出した4人の結束の証
SPYAIRが約2年ぶりのオリジナルアルバム「4」を完成させた。オリコンウィークリーチャート2位を記録した前作「MILLION」のリリース以降、IKE(Vo)のTwitterでの発言や声帯ポリープ、急性声帯炎に伴う約半年間の活動停止など、「SPYAIRがなくなるかもしれないと思っていました」(KENTA[Dr])という危機を迎えた4人。今年3月にリリースされたシングル「ROCKIN’OUT」で再始動し、夏には山梨・富士急ハイランド コニファーフォレストで1万人規模の野外ワンマンライブを成功させるなど、徐々に活動のペースを上げてきた彼らは、本作「4」によって完全復活を証明することになりそうだ。
今回音楽ナタリーでは、メンバー全員にインタビュー。活動停止中の心境、復活後のバンドの状況を含め、紆余曲折を経てたどり着いたアルバム「4」について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 西槇太一
2年間の一瞬一瞬を切り取ったアルバム
──前作「MILLION」以来、約2年ぶりとなるオリジナルアルバム「4」がリリースされます。2014年の活動停止、今年3月の復活シングルリリースを経て完成した作品ですが、メンバーの皆さんの手応えはどうですか?
UZ(G, Programming) 今回のアルバムは作り方から違ってるんですよ。今までは理想のアルバムのカタチというか、設計図みたいなものを用意してから、それに対して1曲ずつ作っていくやり方だったんです。今回は活動が止まっていた時期を含めていろんなことがあったので、そういうやり方を一度白紙に戻したんですよね。この2年間の中でいろいろな感情が生まれて、その中で曲数がそろってきて。結果的には、この2年間の一瞬一瞬を切り取ったアルバムになりましたね。できあがるまでどんなアルバムになるかわからなかったし、これまでとは違って、設計図にのっとって決められた期間に集中して作ったものではなかったので、正直アルバムが完成したという実感が薄かったんです、最初は。
MOMIKEN(B) 1曲1曲にその時期の状態が出ているし、写真のアルバムに近い感じですよね。
──コンセプトに沿ったものではなくて、ドキュメントに近いのかも。
UZ うん、ホントにそんな感じです。いいっすね、その言葉。
IKE(Vo) それでいきましょう(笑)。
KENTA(Dr) いろんな時期がありましたからね。落ち込んでるときがあって、そこから這い上がろうとする時期もあって。アルバムを聴いていると「この曲のときはこんな感じだったな」って思い出すし、5年後や10年後に聴いたとしても、やっぱりこの2年間のことを思い出すだろうなって。音や楽曲の変化もわかりやすく出ているし、1曲1曲が際立ったアルバムになったと思います。
IKE 最初は「大丈夫かな」っていう不安もあったんですよ。今までコンセプトありきでアルバムを作ってきたSPYAIRが、流れるままに制作を進めていって、ちゃんとカタチになるのかなって。でも曲単位でしっかりと作り込んできた分、すごく聴き応えのあるアルバムになったと思います。みんなが言ったように、いろいろなことがあったからこそストーリー性に富んだ作品になったというか。カラフルな楽曲がそろっているし、実はすごくキャッチーなんですよ。聴いてくれる人にとっても受け取りやすいアルバムじゃないかな。
MOMIKEN カラフルな曲をまとめる言葉が見つからなくて、タイトルもシンプルに「4」にしたんです。
やっぱりバンドを止めちゃダメなんだ
──4枚目のオリジナルアルバムだし、ここからまた4人で始めるという意思も感じられるタイトルですよね。昨年はIKEさんの喉の不調で活動停止を余儀なくされたわけですが、活動が再開したときはどんな感じだったんですか?
IKE 最初はリハビリみたいな感じというか、全力で向き合うだけでしたね。ほかのメンバーのプレイもそうだったと思うけど、「錆びちゃったな」という感じもあったので。レコーディングにもそれまで以上にしっかり練習して臨みました。
UZ 探りさぐりでしたからね、最初は。楽器隊の演奏もそうだし、曲作りや歌詞を書くのもそうだし、メンバーの人間関係もそうだし。
IKE 活動を再開して、最初のレコーディングのぎこちなさはハンパなかったですよ(笑)。
UZ そうだね(笑)。アルバムの曲でいうと「COME IN SUMMER」「Far away」のレコーディングなんですけど、プロデューサーの大島こうすけさんにメンバーのパイプ役になってもらって。
IKE 助かったよね。
UZ うん。いきなりセルフプロデュースは荷が重かったから。
──半年間でそんなに変わるものですか?
UZ 普通に考えたらそんなに長い期間じゃないと思うけど、それまでの俺らはデビューからずっと止まらずにやってましたし。
IKE まったく隙間がなかったからね。
KENTA 空白期間のあとは「自分、(ドラムが)下手になったな」って思いましたもん。ドラムにも全然触ってなかったんですよ。先立つものがないというか、目的がなかったから触る気になれなくて。それ以前に「SPYAIRがなくなるかもしれない」っていう気持ちでいっぱいでしたからね。「俺、何をやればいんだろう?」って。
IKE 虚無だよね。自分自身のダメさを露呈しまったというか、SPYAIRが動いてないと、人間としても低下していくんだなって。
UZ 改めて集まって音を出したときも「俺らはもっとうまかったはず」と思ってしまって。
KENTA ずっと言ってたよね、それ。
UZ 自分たちの勘違いというか、「別にそんなにうまくなかったよ」っていうことかもしれないけど(笑)。でも、「もっとやれるはず」っていうのはしばらくありましたね。
IKE 別に楽器が演奏できないわけではないんだけど、グルーヴが出ているのかどうかわからなくて。
KENTA 実際にレコーディングやライブをやり始めてからだよね、勘が戻ってきたのは。
──春のワンマンツアー、富士急ハイランドの野外ライブの成功も大きかったのでは?
UZ そうですね。お客さんがライブに来てくれたのもうれしかったし、スタッフもすごい舞台を用意してくれて。
IKE ありがたいよね。「やっぱりバンドを止めちゃダメなんだな」ってすごく思いましたね。
次のページ » いろんなジャンルに挑戦しても根本はブレないはず
- SPYAIR ニューアルバム「4」/ 2015年11月18日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤A[CD+DVD]/ 3780円 / AICL-2989~90
- 初回限定盤B[CD2枚組]/ 3996円 / AICL-2991~2
- 通常盤[CD]/ 2916円 / AICL-2993
CD収録曲
- ROCKIN' OUT
- ファイアスターター
- アイム・ア・ビリーバー
- COME IN SUMMER
- Far away
- NO-ID feat. JASMINE
- ダレカノセイ
- EZ Going♬
- Someday, Somewhere
- 4 LIFE
- イマジネーション
- Stand by me
初回限定盤A DVD収録内容
Music Video
- イマジネーション
- ROCKIN' OUT
- ファイアスターター
- アイム・ア・ビリーバー
- Making of アイム・ア・ビリーバー
- JUST LIKE THIS 2015
初回限定盤B 特典CD収録内容
「JUST LIKE THIS 2015」Live at FUJI-Q HIGHLAND 2015.8.8
- 現状ディストラクション
- Rock'n Roll
- OVER
- Last Moment
- Blowing
- LINK IT ALL
- To
- BEAUTIFUL DAYS
- 0 GAME
- Supersonic
- ROCKIN' OUT
- I want a place
- ファイアスターター
- SPYAIR ライブDVD「JUST LIKE THIS 2015」/ 2016年1月13日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤[DVD2枚組]/ 6804円 / AIBL-9329~30
- 通常盤[DVD]/ 5184円 / AIBL-9331
8月8日に山梨・富士急ハイランド コニファーフォレストで開催された単独1万人野外ライブ「JUST LIKE THIS 2015」の模様をDVD化!
SPYAIR(スパイエアー)
IKE(Vo)、UZ(G, Programming)、MOMIKEN(B)、KENTA(Dr)の4人からなるバンド。全員が愛知出身で、2005年に結成される。地元名古屋の野外ライブでキャリアを重ね、デビュー前の2010年6月に行った100本目の野外ライブでは2000人の観客を集める。同年8月、シングル「LIAR」でメジャーデビュー。その後も4枚のシングルを発表し、並行して精力的なライブ活動を展開する。同年12月に初の日本武道館ワンマンライブを開催。2014年5月の全国ツアー開催中、IKEの喉のトラブルによりツアーを中断し約半年間、活動を停止する。11月に初のベストアルバム「BEST」をリリースし、12月に東京・Zepp DiverCity TOKYOにて開催したワンマンライブで本格的に活動を再開。2015年春には復活後初の全国ツアーを行い、8月に山梨・富士急ハイランドコニファーフォレストで1万人規模の単独野外ワンマンライブ「JUST LIKE THIS 2015」を開催した。2015年11月に約2年ぶりのフルアルバム「4」をリリース。12月には2大アリーナツアーを、2016年1月からは全国ホールツアーを開催する。