そらるがニューアルバム「ワンダー」を7月17日にリリースした。
今作にはまふまふ、じん、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、事務員G、はるまきごはん、ナノウといったそらるにとって縁の深いアーティストが作編曲で参加。そらるは計13曲すべての作詞を手がけた。今回の特集では、ボーカリストとしての側面が強かったそらるが作詞を担当することになった理由や、年々規模が拡大する自身の活動について思うことなど、アルバム「ワンダー」の話題を切り口にさまざまなことを語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦
どこか他人事のように「すごいな」
──4月に千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールにて全国ツアー「SORARU LIVE TOUR 2019 -10th Anniversary Parade-」の最終公演が行われました(参照:そらる、10周年ツアーファイナルで自分らしいライブ「夢の続きを見ている感覚」)。会場の規模がどんどん拡大していますが、ご自身では活動の規模感をどのように感じていますか?
あんまり、どうとも感じていないかもしれないです。ライブの規模だけじゃなくて、今の自分の活動に対しても同じことを思っているんですけど「気付いたらこうなっていた」みたいな感覚が大きくて。すごく大きな転機があったわけでもなく、10年間活動していく中で徐々にここまで来たからかもしれないですね。「すごいな」とは思うんですけど、どこか他人事のように感じてしまうんですよ。
──6月に埼玉・メットライフドームで開催されたライブイベント「ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服I@メットライフドーム~」では、機材トラブルに見舞われながらも堂々とその場を乗り切るそらるさんの姿が印象的でした(参照:「革命は成った」まふまふ、最強の14人と“世界征服”への大きな一歩踏み出す)。
大きな会場でライブをすることの恐さはあまりなくなりました。でもそれは3万5000人もいたからであって、もしかしたら30人しか目の前にいなかったら、あんなふうに堂々としてられなかったかもしれないです。3万5000人もいると、自分1人の力なんて本当に大したことないんですよ。自分ではどうしようもできないですから。
──「銀の祈誓」(2018年11月発売のシングル)発表以降、リリースのペースもライブのペースも早くなっていますが、そらるさんはこのペースに無理なく適応できてますか?
この1年、すごく大変だったなとは思っていますけど、自分としてはそこまで問題はないんです。ただ、お客さんに向けてちょっと心配というのは感じていますね。付いてくるのが大変だろうなって。音楽ってけっこうお金や労力のかかる趣味だと思うんですよ。自分のファンの方のうち、おそらく6、7割ぐらいは中高生のリスナーさんだと思うので、CDをたくさん出して、ライブを何回もやると付いて来てもらうのも大変だろうな、というのを感じていて。今作のリリースとライブで10周年にまつわる活動がひと段落するので、やっと心の荷が下りる感じがありますね。
自分の思いを知ってほしい願望
──今作「ワンダー」と前作「夢見るたまごの育て方」(2017年11月発売)との一番大きな違いは、今作の収録曲はすべてそらるさん自身が作詞を担当していることですよね。アルバムに限らず、「銀の祈誓」以降に発表した曲の作詞はすべてご自身で手がけています。なぜ作詞を担当することに?
自分で作詞をする曲をもっと増やしていきたい、挑戦していきたいという思いはもともとあったんですよね。特に自分は思っていることをもっと伝えたい、知ってほしい願望が以前から強くあって、それが自分で作詞を手がけることにつながっているのかな。
──作詞をするようになって、音楽との向き合い方が変わった感覚はありますか?
「作詞をしてるから偉い」とか「曲を作ってるから偉い」みたいなことは全然思っていないんですけど、作詞曲をするようになってから、アルバムが完成するまでの労力がかかった分だけ、完成したときの達成感は大きくなりました。
まふまふと一緒にやる意味が生まれた曲
──今作にはいろんな作家さんが参加していますが「アイフェイクミー」は、そらるさんとAfter the Rainの活動を共にしているまふまふさんが作詞作曲で参加している曲です。曲作りはどのように?
けっこう前に作った曲なんですけど、「アイフェイクミー」はまふまふの家に行って2人で作った曲ですね。「賭ケグルイ」とのタイアップは決まっていたので、ギャンブル用語を調べておいて、言葉を並べながらメロディラインとかを相談しながら作りました。サビはキャッチーなのに、それ以外の部分ではちょっとおかしな展開を入れる曲って、まふまふが得意とするところだと思ったので、「ハッとするような展開を入れたい」と伝えたら、すごくいい形にアレンジしてくれて。
──不協和音を効果的に使うというか、“聴き手に引っかかる違和感”を武器にするサウンドは、まふまふさんが得意とするところですよね。
「アイフェイクミー」は、そういう意味でまふまふと一緒にやる意味が生まれた曲だと思います。この曲は歌詞も一緒に作ったんですけど、まふまふの歌詞を書くスピードが早くて驚きました。今までいろんな曲の歌詞を書いてきて、自分でもけっこう早くなってきたと思っていたんですけど、それでもまふまふには全然追いつけなくて。やっぱすげえなと。
──いろんなコンポーザーと曲作りの経験を重ねていく中で、そらるさん自身が得意な部分はどういうところだと自覚していますか?
今回のアルバムに関して言えば、意識的に自分が書いた曲の曲調が被らないようにしているんです。もちろん得意不得意はあるんですけど、自分の得意や不得意に縛られてしまうのもどうかなと思っていて。できることを広げたいし、挑戦したい気持ちも強かったので。それにアルバム全体でさまざまな側面を楽しんでもらいたかったので、自分で書いた曲はアルバムに足りない要素を入れるような意味合いが強かったです。
──「夢見るたまごの育て方」ではアルバムをまとめる1曲をご自身で作詞作曲なさっていて、そのときのインタビューでも同じようなことをおっしゃっていました(参照:そらる「夢見るたまごの育て方」インタビュー)。作品のバランスを考えて、足りない要素を補う曲を作れることは1つの強みだと思います。
確かに、前もそう言ってたかもしれないです。まだ強みと言うほどのものではないと思うんですけど、「ワンダー」の制作で新たに発見した部分とか、こういう曲をもっと作りたいな、みたいな気付きはいくつかあったんです。やればやるほど「自分はまだまだだな」と思うところもあるし、これから先ももっと成長していきたいですね。
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自分が作詞をする意味
- そらる「ワンダー」
- 2019年7月17日発売 / Virgin Music
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初回限定盤A [CD+DVD]
2700円 / TYCT-69151 -
初回限定盤B [CD+DVD]
2700円 / TYCT-69152 -
通常盤 [CD]
2160円 / TYCT-60142
- CD収録曲
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- 銀の祈誓[作詞・作曲:そらる / 編曲:大西省吾]
- アイフェイクミー[作詞・作曲:そらる、まふまふ / 編曲:まふまふ]
- 幻日[作詞:そらる / 作曲・編曲:じん、堀江晶太]
- アイソレイト[作詞:そらる、ナノウ / 作曲・編曲:ナノウ]
- 海中の月を掬う[作詞・作曲:そらる / 編曲:田中隼人]
- ユーリカ[作詞・作曲:そらる / 編曲:三矢禅晃]
- ありふれた魔法[作詞・作曲:そらる / 編曲:浅野尚志]
- アンサー[作詞:そらる / 作曲・編曲:三矢禅晃]
- 教えて神様[作詞:そらる / 作曲・編曲:はるまきごはん]
- それは永遠のような[作詞・作曲:そらる / 編曲:SUNNY]
- オレンジの約束[作詞・作曲:そらる / 編曲:三矢禅晃]
- 10[作詞・作曲:そらる / 編曲:事務員G]
- ワンダー[作詞・作曲:そらる / 編曲:堀江晶太]
- 初回限定盤A DVD収録内容
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- Music Video:「アイフェイクミー」「海中の月を掬う」
- Music Videoメイキング映像:「アイフェイクミー」「海中の月を掬う」
- 「SORARU LIVE TOUR 2019 -10th Anniversary Parade-」@幕張メッセ:「ゆきどけ」「ビー玉の中の宇宙」
- 初回限定盤B DVD収録内容
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- そらるが贅沢キャンプに行ってみた
- 「楓 -cover-」Studio Session
- そらる
- ボーカリスト、エンジニア。2008年から動画共有サイトにて音楽活動を始める。2012年6月に1stアルバム「そらあい」を、2015年には15曲入りのフルアルバム「夕溜まりのしおり」をリリースした。また2016年よりまふまふと共にAfter the Rain名義での活動を開始し、4月に同名義初のアルバム「クロクレストストーリー」を発表。2017年8月にはAfter the Rainとして武道館公演2DAYを実施した。同年11月にはソロ名義のミニアルバム「夢見るたまごの育て方」を携えた全国ツアー「SORARU LIVE TOUR 2017~夢見るセカイの歩き方~」を開催。11月25日にはツアーファイナルとして神奈川・横浜アリーナで単独公演を行った。2018年11月にはVirgin Musicよりニューシングル「銀の祈誓」をリリース。2019年3月から4月にかけて全国6都市を回る全国ツアーを実施する。ツアーファイナルは千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールにて2日間にわたって行われた。7月には最新アルバム「ワンダー」を発表。11月にはその発売記念イベントとして再び千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールで2DAYSのワンマンライブを開催する。