自分が作詞をする意味

──「幻日」はじんさんと堀江晶太（PENGUIN RESEARCH）さんの共作で生まれた楽曲です。この人選はそらるさんが？

そうですね。もともと堀江さんからはごはんを食べに行った際に「自分でよければ曲を書きますよ」と言ってもらいました。で、じんさんと堀江さんがコラボした「ミリオン/ワンズ」という曲がメチャクチャ好きだったので、以前も曲を書いてもらったことがあるじんさんに声をかけて、堀江さんとの共作で曲を作ってもらったんです。

──2人にはどういうオーダーをしたんですか？

2人のどんな曲が好きかを伝えたうえで、ざっくりとしたイメージをお伝えしたくらいですね。そうしたらじんさんからすごくいいデモが上がってきたので、そのデモをもとに2人に曲を仕上げてもらいました。

──自分が好きな作家さんに曲を書いてもらうことで、作詞に対するハードルは上がりませんか？

上がりますね。曲を好きになる理由って、けっこうな割合で詞が好きだからだと思うんです。じんさんが書く詞も、堀江さんが書く詞も好きなのに、自分が詞を書く意味をどれだけ見出せるんだろうと考えてしまって。

──その答えは見つかりましたか？

難しいですね。ただ、自分のアルバム作品で自分が作詞をする意味を見出せないようじゃダメだと思って、すごく悩みながらも自分が納得する詞は書けました。「できませんでした」じゃダメですから。自分で読み返してみて、「いい歌詞じゃん」と思えるような及第点は自分に出してもいいかなと思っています。

アルバムの多彩さを担う3曲

──今作にはAfter the Rainのライブでバンドマスターを務めている三矢禅晃さんが制作に携わった曲が3曲収録されています。そらるさんの曲作りにおいて、三矢さんはどんな存在ですか？

今作に限らず、いろんな曲で手伝ってもらってきたし、そもそも友人なので、かなり要望を伝えやすくて。しかもアレンジの範疇からはみ出したアドバイスまでしてもらえるので、いつもとても助かっています。信頼関係が成り立っているから、編曲の際に初対面ではなかなか言えないようなことを言っていただいたり。個人で1つの作品をゼロから全部作ることは、まだ今の自分にはできないかもしれないんです。でも三矢さんのような方が作曲面で関わってくれているうえに、いろんなアイデアを出してくれるのですごく助かっています。

──三矢さんは今回「ユーリカ」「アンサー」「オレンジの約束」の3曲に携わっています。

引き出しがすごく多い方なので、こちらの意思を汲み取っていろんな曲に仕上げてくれるんです。今回お願いした3曲はどれも曲調が全然違って、アルバムの多彩さを担ってくれる曲になりました。

思い付くまま詞を書いた「10」

──事務員Gさんが編曲で参加した「10」の歌詞は、そらるさんの等身大の言葉でつづられている印象がありました。

「10」は、本当に何も考えないで書いた曲なんです。いつもならコードとメロを決めてから歌詞を書くんですけど、「10」はピアノ1本で作ることが決まっていたから、歌詞とメロディを一緒に考えることをやってみて。バッと歌詞を書いてそれにメロディを当てていったんですけど、歌詞も深いことを考えずに思い付くまま書いてみたんです。とにかく深く考えないで作った曲ですね。

──ピアノの演奏を担当した事務員Gさんには何か要望を伝えましたか？

特別なことは何も言わなかったんです。長い付き合いで、今までたくさんライブやリハーサルを一緒にやってきてるから、好みも知られているし。今まで伝えてきたことで充分かなと思って、基本的にはお任せで弾いてもらいました。