After the Rainの活動は切っては切れないもの
──アルバム最後の曲「ワンダー」には、これまでそらるさんが発表してきた楽曲の歌詞が含まれていますよね。わかりやすいところで言えば、「10」で書かれている「きず」と「うそ」という言葉が「ワンダー」でも使われています。
ほかの曲では歌詞の言葉が被らないように意識して書いていたんですけど、「ワンダー」は逆に過去の自分の曲で使われている言葉を積極的に使おうと思ったんです。「星空」とか「ヒーロー」とか、「奇跡」とか。あと2番のサビでは「彷徨う僕らの世界紀行」というAfter the Rainで発表した曲の歌詞を引用しているんです。これ、まふまふにも言ってないんですけど。
──なぜAfter the Rainの楽曲の中から「彷徨う僕らの世界紀行」だけを選んだんですか?
「奇跡」といったファンタジー的な意味合いの「wonder」と、「さまよう」という意味の「wander」、どちらも「ワンダー」なんですよ。だから「彷徨う僕らの世界紀行」だけは使いたくて。最初に10周年を記念したアルバムを作ろうと思ったとき、「自分の10年を表す言葉ってなんだろう」と考えた結果、この「ワンダー」という言葉に出会ったんですよね。「奇跡」と「さまよう」がひと言で言い表せることができるなんて、自分にピッタリだなと思ったんです。
──そらるさんの10年を総括する意味合いが「ワンダー」という言葉には込められているんですね。
自分の10年にとってAfter the Rainの活動は切っても切れないものなので、この曲にも触れないわけにはいかなかったですね。自分の10年をまとめた曲になったと思います。
──ストリングスが入った壮大なアレンジも楽曲の1つの特徴ですよね。4月に行われたツアーファイナルのパフォーマンスにも通じる部分があります。
4月のライブのことは意識していましたね。もし次もライブでストリングスを入れるなら、という考えもあって、アレンジをお願いした堀江さんには「ピアノロックでありながら壮大な感じで、最後にふさわしい曲にしてほしいです」とお願いしたんです。そうしたらアウトロがメチャクチャ長くなって返ってきました(笑)。ストリングスは生で録ってもらったんですよ。すごく臨場感のある音にしてもらって曲が生きた感じがしています。
ずっとさまよっている
──今作「ワンダー」はご自身にとってどういう作品になりましたか?
10年の節目に出すアルバムなんですけど、ここで締めくくるのではなくて、先につながるアルバムにしたかったんです。新しい挑戦もできたし、ここから先へと続く期待感のようなものも打ち出せたと思います。応援してくれる人への自分なりの答えとか、言いたいこと言えたかな(笑)。
──ただまとめるだけではなくて、未来につながっている作品であるわけですよね。
「よくできました」でおしまいにしたくなかったんです。そうしたら「10年間がんばりました」で終わっちゃいそうな気がして。節目のタイミングではありますけど、自分では「まだまだ行くしかねーぞ」と思っているから「ワンダー」は自分の決意表明のような曲も何曲か作りました。
──今でもそらるさんには“さまよっている感覚”があるんですか?
ずっとあります。音楽って絶対にやらなきゃいけないものではないと思うんですよ。もちろん自分の人生において音楽は切っても切れないものなんですけど、音楽をやらないで農家になることもできるだろうし、コンビニでバイトをすることもできるし、企業に会社員として勤めるようなこともできるかもしれない。いろんな選択肢がある中で自分は音楽を選んでいるわけですけど、例えば昔一緒に音楽をやってた友人が今は普通に働いている、なんて話いっぱいあるんですよ。それは自分も例外ではなくて、自分が音楽で生きていくかどうか悩むというより、自分が音楽をやる必要があるのかどうか、今でも悩むときがあります。
アルバムのための2日間に
──活動10周年を迎えて大規模なライブも成功させているそらるさんは、シーンを引っ張る存在だと思います。シーンの中での自分の立ち位置をどう感じていますか?
ありがたいことにいろんな活動をさせてもらってますけど「自分が界隈を引っ張っている」というような感覚はあまりないんですよね。「盛り上げていこう」って気持ちはありますけど、個人でできる範囲のことには限られてますから。界隈の最近で言うと、残念なことに昔より新しい人が出てこなくなりましたけど、別にそれもいいのかなと思っているんです。無理して増やすものでもなくて、そのときどきでやりたい人がやればいいようなものだと思うので。自分の活動を見てもらう中で興味を持ってもらえたらうれしいですけど、それぞれやりたいことをやってくれるのが一番だと思っています。
──そらるさん自身はやりたいことができていますか?
概ね、ですね。例えば「音楽」とひと言で言ってもライブ、作詞、作曲、歌など細かくいろんなことに分けられて、その中で得意なことも苦手なこともあるんです。自分に関して言えば、苦手なこともあるけれどだいたい満足できているかなと思っています。
──音楽に限らず、そらるさんが成し遂げたいことというか、実現したいことはありますか?
なんでしょうね。人とのしがらみから解き放たれて、豪邸で執事やメイドに囲まれて一生ネトゲして過ごすとか、家族と田舎で暮らしてなんのストレスもない生活を送るとか、CDがメチャクチャ売れて超大金持ちになり、東京ドームを1週間借りて7日間連続でライブをやるとか……なんか全部方向性が違いますね(笑)。でもいつかどれか実現してみたいですね。
──最後に、11月の幕張メッセでのワンマンライブについても聞かせてください。そらるさんの誕生日に合わせて開催されるこの公演は、どんなライブになりそうですか?
アルバムも完成したので、とにかく今作の曲をライブでやりたいですね。4月のツアーで「10周年記念」の公演はもうやっているので、今回はこのアルバムのためのライブにしたいんです。細かいところはまだ決まってないので具体的なことは言えないんですが、きっと楽しい2日間になると思っています。
ライブ情報
- そらる「ワンダー」発売記念&バースデーライブ
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- 2019年11月3日(日・祝)千葉県 幕張メッセ国際展示場4~6ホール
- 2019年11月4日(月・振休)千葉県 幕張メッセ国際展示場4~6ホール
- そらる「ワンダー」
- 2019年7月17日発売 / Virgin Music
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初回限定盤A [CD+DVD]
2700円 / TYCT-69151 -
初回限定盤B [CD+DVD]
2700円 / TYCT-69152 -
通常盤 [CD]
2160円 / TYCT-60142
- CD収録曲
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- 銀の祈誓[作詞・作曲:そらる / 編曲:大西省吾]
- アイフェイクミー[作詞・作曲:そらる、まふまふ / 編曲:まふまふ]
- 幻日[作詞:そらる / 作曲・編曲:じん、堀江晶太]
- アイソレイト[作詞:そらる、ナノウ / 作曲・編曲:ナノウ]
- 海中の月を掬う[作詞・作曲:そらる / 編曲:田中隼人]
- ユーリカ[作詞・作曲:そらる / 編曲:三矢禅晃]
- ありふれた魔法[作詞・作曲:そらる / 編曲:浅野尚志]
- アンサー[作詞:そらる / 作曲・編曲:三矢禅晃]
- 教えて神様[作詞:そらる / 作曲・編曲:はるまきごはん]
- それは永遠のような[作詞・作曲:そらる / 編曲:SUNNY]
- オレンジの約束[作詞・作曲:そらる / 編曲:三矢禅晃]
- 10[作詞・作曲:そらる / 編曲:事務員G]
- ワンダー[作詞・作曲:そらる / 編曲:堀江晶太]
- 初回限定盤A DVD収録内容
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- Music Video:「アイフェイクミー」「海中の月を掬う」
- Music Videoメイキング映像:「アイフェイクミー」「海中の月を掬う」
- 「SORARU LIVE TOUR 2019 -10th Anniversary Parade-」@幕張メッセ:「ゆきどけ」「ビー玉の中の宇宙」
- 初回限定盤B DVD収録内容
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- そらるが贅沢キャンプに行ってみた
- 「楓 -cover-」Studio Session
- そらる
- ボーカリスト、エンジニア。2008年から動画共有サイトにて音楽活動を始める。2012年6月に1stアルバム「そらあい」を、2015年には15曲入りのフルアルバム「夕溜まりのしおり」をリリースした。また2016年よりまふまふと共にAfter the Rain名義での活動を開始し、4月に同名義初のアルバム「クロクレストストーリー」を発表。2017年8月にはAfter the Rainとして武道館公演2DAYを実施した。同年11月にはソロ名義のミニアルバム「夢見るたまごの育て方」を携えた全国ツアー「SORARU LIVE TOUR 2017~夢見るセカイの歩き方~」を開催。11月25日にはツアーファイナルとして神奈川・横浜アリーナで単独公演を行った。2018年11月にはVirgin Musicよりニューシングル「銀の祈誓」をリリース。2019年3月から4月にかけて全国6都市を回る全国ツアーを実施する。ツアーファイナルは千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールにて2日間にわたって行われた。7月には最新アルバム「ワンダー」を発表。11月にはその発売記念イベントとして再び千葉・幕張メッセ国際展示場4~6ホールで2DAYSのワンマンライブを開催する。