SKE48「心にFlower」発売記念インタビュー|過去、現在、未来の枠を超えて先輩後輩がひとつに

SKE48の通算29枚目のシングル「心にFlower」がリリースされた。

今作の表題曲「心にFlower」は「騒々しい日々の中で、花のように美しく清らかな心と、自分らしさを忘れずに生きていこう」という思いを歌ったメッセージソング。akaneが振り付けを手がけ、手を花のように回転させるデフラワーという技と名古屋弁の“でら”をかけた“でらフラワーダンス”が特徴だ。選抜のセンターは前作「あの頃の君を見つけた」に引き続き、AKB48グループの最年少メンバーで、3月10日に13歳の誕生日を迎える林美澪が担当している(参照:SKE48「あの頃の君を見つけた」インタビュー)。また、シングルには2009年にAKB48グループに加入して以降、約12年間にわたってアイドルとして邁進し続け、30歳を迎える今年4月に卒業する大場美奈のソロ曲「生まれ変わっても」も収録。先輩メンバーと後輩メンバーがバランスよく共存する現在のSKE48を象徴するような作品になっている。

音楽ナタリーではシングルの発売に合わせ、林と大場に、5期生で21歳の江籠裕奈、7期生で20歳の末永桜花という中堅メンバーを加えた4人へインタビュー。林のセンターとしての素質、「心にFlower」の注目点、メンバーにとっての大場の存在などをテーマに話を聞いた。

取材・文 / 小野田衛撮影 / 曽我美芽

12歳・林美澪がセンターに選ばれる理由

──前作に引き続き、「心にFlower」では林美澪さんがセンターを務めています。“ゼロポジション”には慣れましたか?

林美澪 いやー、慣れるということはまったくないです。でも、さすがに「あの頃の君を見つけた」のときよりは気持ちの面で落ち着いていますね。立場的にも前作では研究生でしたが、今回はTeam Eの正規メンバーで。その分だけ少し余裕があると言いますか……もちろん、気を引き締めてセンターのポジションに立たせていただいていますけど。

林美澪

林美澪

江籠裕奈 前のシングルでは、12歳の美澪ちゃんだからこそ出せるキラキラしたフレッシュ感に話題が集まったと思うんです。それに対して、今回の「心にFlower」でカギを握るのはダンスですね。美澪ちゃんのパフォーマンスって、小さい頃からダンスを習っていたこともあって、「踊ることが大好き!」という気持ちが伝わってくるんですよ。

末永桜花 「これで12歳!?」というのが正直な気持ちとしてあります。というのも、私が12歳だった頃は美澪ちゃんとは比べものにならないくらい子供だったので(笑)。「大人」「ちゃんとしている」「堂々としている」「真面目」……自分にはない要素が満載なので、うらやましいです。

大場美奈 「あの頃の君を見つけた」で美澪ちゃんがセンターに立ったのは、間違いなく大抜擢でしたよね。なので、「どんなものなのかな?」と様子を伺うようなところがファンの方にもあったと思うんです。でも、蓋を開けてみたら堂々と先頭に立っていたし、私たちから見ても心配することなんて何もなかった。それはステージ上だけじゃなく、取材やプロモーションの場でも同じです。楽曲の歌詞に込められた意味などを理路整然と話している姿を見てすごいなって感動しました。

 そんな……恐れ多いです。

大場 そうやって周囲の信頼を勝ち取ったうえでの2作目のセンターなので、妙にしっくりきてるんですよ。こうなることが当たり前という感じがします。

──熱心なファンではなくライト層に説明するとしたら、「林美澪がセンターに選ばれる理由」はどのへんにあるという話になりますか?

大場 こればかりは「カリスマ性」としか言いようがないんですよね。持っている人は最初から持っている。持っていない人はがんばっても手に入れられない。その素質が備わっているんですよ、美澪ちゃんには。振り返ってみると、歴代のSKE48のセンターというのは松井珠理奈さんや松井玲奈さんをはじめとして、みんな「なるべくしてなった」という感じがするんです。「ダンスがうまい」とか「ルックスがいい」という話だけでは片付けられない存在感がありましたし。

江籠 それ、すごくわかるな。強いて言葉にするなら、「華がある」とか「オーラがある」ということなんでしょうけど。

末永 私、美澪ちゃんは端にいてほしくないんですよ。あまりにも真ん中に立っている姿がしっくりくるので。

大場 そう考えると、やっぱりセンターに向いているかどうかって技術の話じゃないんですよね。極論を言うと、ダンスの技術力というのは練習すれば誰でも上がるものなんです。でも、それで観ている人を惹き付けられるかどうかは別問題。普通はそのアピールする力というものは何年もかけてステージで身に付けていくんですけど、美澪ちゃんはそうじゃなかった。若手の中でも、人を惹き付ける力がズバ抜けています。

大場美奈

大場美奈

──ベタ褒めコメントが続いていますが、林さんとしてはどんなお気持ちですか?

 今日は1日「心にFlower」のプロモーション日ということで、実は朝からこうしたお話を聞いているんです。うれしい気持ちは当然ありますけど、それ以上に恥ずかしいというのが率直な感想です(笑)。聞いていて途中で泣きそうになることもありました。というか、今も感極まってウルウルきていますから……。

末永 なんだかかわいいね(笑)。

 前のシングルのときは「いやいや、私なんて……」みたいに遠慮する気持ちが強かったんです。でも、それって考えてみたら、応援してくださる方に対して失礼な話じゃないですか。だから今はなるべく意識して自信を持つようにしています。

末永 美澪ちゃん、二面性があるんですよね。こうやってインタビューを一緒に受けていると中1とは思えないくらい立派なのに、楽屋にいるときはアニメの話でキャッキャッと楽しそうに盛り上がっていて。そういう姿を見て、私としてはホッとするんです。「よかった。年相応なところもあるんだな」って。

 恥ずかしいから、あまりバラさないでください(笑)。

江籠 美澪ちゃんが研究生になったばかりの頃、シングルのカップリング曲のお仕事で一緒になったことがあるんです。そのとき、空き時間に2人で原宿の竹下通りに行ったんですよね。スタッフさんから「江籠、林の面倒を見てくれない?」と言われて。

 覚えてます! 私、あのとき竹下通りが初めてで浮かれてたんですよ。

江籠 当時の美澪ちゃんは「鬼滅の刃」にハマっていて、ガチャガチャを見つけては必死で回していました。はっきり言って、その姿は子供そのものでした(笑)。そのあと選抜メンバーに入ったんですけど、きちんと受け答えしている姿を見て「本当に同一人物?」と驚きました。

大場 そんなことがあったんだ(笑)。

江籠 あの竹下通りでの美澪ちゃんは、いまだに忘れられない! 私は美澪ちゃんの無邪気で子供っぽい面も知っているから、「ひょっとしたら背伸びしてがんばっているのかな?」と心配になることもあるんですよ。「いつでも甘えてきていいんだからね」と改めて美澪ちゃんには伝えたいです。

 うう……優しい。

左から大場美奈、江籠裕奈、林美澪、末永桜花。

左から大場美奈、江籠裕奈、林美澪、末永桜花。

新たな挑戦と受け継がれてきた家宝

──さて29thシングル「心にFlower」についてですが、「騒々しい日々の中、花のように美しく清らかな心と、自分らしさを忘れずに生きていこう」というメッセージが込められていると伺いました。こういった世相でもありますし、表現するのが難しいテーマだったのでは?

 意味をシリアスに考えると難しくなるのかもしれませんが、私としてはいろんな年代の人にアピールできる普遍的な曲だと考えています。例えば周りを見渡してみても、私と同じ学年の子ってすごく悩むことが多い時期なんですね。

大場 気になるねー。今の中学生は主に何で悩んでいるの?

 例えば勉強! 周りの子がどんどん勉強のペースを上げているのを見ると、「私は大丈夫かな?」ってめちゃくちゃ不安になったりするので。それに人間関係も! 小学校と違って中1になると部活があるから、そこでいろいろ考えることも出てくるんですよね。

江籠 なんだか微笑ましいなー(笑)。

 そうやって勉強や部活で悩むことがあっても、この曲によって励まされるんじゃないかと思うんです。もちろん悩みを抱えているのは中学1年生だけじゃなくて、大学生やサラリーマンの方もそれぞれ落ち込むことがあるはずじゃないですか。人生のつらいとき、背中を押されるような曲にしたいと考えながらパフォーマンスしています。

──そして江籠さんから「カギを握るのはダンス」とご指摘があったように、akaneさんの手がけた振り付けも話題になっています。

大場 注目していただきたいのは、“でらフラワーダンス”です。これはakane先生による造語なんですけど、「デフラワー」という手を花のように回転させるダンスのテクニックに名古屋弁の「でら(=すごく、の意)」を合わせたもので。デフラワー自体は前からある技なので、練習すれば誰でも楽しく踊ることができるんじゃないかな。

江籠 うーん、でも「誰でも楽しく」っていうのは少し微妙かもしれない。ダンスとしては意外に難しいんじゃないかと私は思っているんですけど……。

 私も難易度は高いんじゃないかと思います。10段階でレベルを表すとしたら、この“でらフラワーダンス”は8か9くらい? というのも、曲のテンポが速いんですよ。ゆっくりしたテンポだったら簡単なのかもしれませんが、このスピードで踊るには手数が多くて。

大場 ごめんなさい、やっぱり「誰でも楽しく」は撤回します! バリバリのダンス経験者・美澪ちゃんが言うんだから、そっちの意見を信じてください(笑)。

末永 やらなきゃいけないことが詰まったダンスというか。ちょっとでも遅れると、取り返しがつかなくなるような感じなんです。

大場 そう言えば、振り入れのレッスンも厳しかったですね。1サビだけがエンドレスで続く音源があり、スタジオではずっとそれが流れっぱなしになっていたんです。私たちはその音に合わせてエンドレスで踊っていて、akane先生は何も言わずにその姿を見つめていて……。メンバーと息を合わせるのにすごく苦労しました。

 akane先生って、ものすごく情熱的な方なんですよ。自分が思ったことを真剣に伝えてくださるので当然こっちも熱が入るし、それによってパフォーマンスが向上していると思います。

末永 熱血という言葉が合っているのかわからないけど、akane先生はメンバーができるようになるまで丁寧に教えてくれるんです。

末永桜花

末永桜花

大場 本当に面倒見がいいんですよね。それで須田亜香里ちゃんも泣いていました。

江籠 私、それ知らないです!

──その話、気になりますね。須田さんに何があったのでしょうか?

大場 本人がいない場で暴露するのは若干はばかられるのですが……(笑)。今回のシングル、ポジション的には林美澪ちゃんと須田亜香里ちゃんの2人が真ん中に立つパートが多いんです。目立つ2人ということで、akane先生としても特に指導に熱が入っていたんですよね。それでレッスン終了後、メンバーがいないところで須田亜香里ちゃんが泣いたらしいんです。私はその現場を見ていないのですが、「先生に言われていることは頭で理解できるけど、もう私は30歳だし体が動かない! でも、何がなんでもやらなくちゃいけない!」という思いからの涙だったそうです。

──須田さんって体も柔らかいし、身体能力が高いイメージがありますけどね。

大場 クラシックバレエもやっていたのでダンス自体は得意なんですけど、いかんせんこの“でらフラワーダンス”は初めての試みですから。それに須田亜香里ちゃんは人一倍責任感が強いので、その分、プレッシャーが重くのしかかったんでしょうね。

──ダンスと言えば昨年はAKB48が「根も葉もRumor」で新境地を切り拓き、大きな話題を呼びました。SKE48は以前からダンスを強みにしてきたグループなので、そのあたりで刺激を受けた面もありますか?

江籠 「根も葉もRumor」と「心にFlower」ではダンスの方向性が全然違うので、比べるのは難しいというのが正直なところです。ありがたいことに今までSKE48はファンの方から「ダンスがすごい」と言われることがありました。でも、そのすごさって正確に言うとテクニックうんぬんよりもダンスに懸けるがむしゃらさだったんですよ。髪を振り乱し、汗を飛び散らせながら踊る全力の姿勢こそがSKE48ダンスのポイントであって。そういう意味で言うと、メンバーの気持ちをひとつにしなくてはいけない今回の「心にFlower」はSKE48らしさ全開の曲と言えるのかもしれません。

大場 (頷きながら)本当にそうだよね。「これぞSKE48!」というダンスになっていると思います。

江籠 自分たちのダンスの映像を観ると、「すごく動きがそろっているな」って自分でも思わず感心しちゃうんです。これは技術よりも気持ちの面が大きいと思うんですよね。一体感があってチームとしてまとまっているというか。

江籠裕奈

江籠裕奈

大場 誤解されがちなんですけど、「SKE48の強みはダンスです」と自分たちで言っていると、ダンスのうまいメンバーがズラリとそろっているようなイメージを持つ方がいるんです。でも、実はそこじゃないんですよ。本当に伝えたかったのはダンスに対する一生懸命さ。特に初期はAKB48と比較してダンスの必死さが際立っていたから、そこが取り上げられる機会も多かったですし。本来はアイドルってかわいい表情をしてかわいい踊りを踊るものだから、髪を振り乱してステージに立つ私たちは異質だったんですよね。

江籠 そこは一貫して変わらないですね。SKE48は結成14年目になるので、その間にメンバーも変わりましたし、スタッフさんもファンの方も楽曲の曲調も変わりました。でも、根本のところはずっと同じなんだと思う。

末永 SKE48というグループにとって、ダンスは家宝みたいなものだと私は思うんです。

 家宝? どういうことですか?

末永 代々受け継がれてきた大切なもの。先輩から後輩に伝えられるSKE48の本質。絶対に忘れちゃいけないこと。

江籠 なるほど! すごくきれいにまとめてくれて、ありがとうございます(笑)。