SIX LOUNGEがニューシングル「キタカゼ」を3月22日にリリースした。
シングルの表題曲は、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」6期第2クールのエンディングテーマ。風が吹く先へと勢いよく走り出していくような、爽快なロックチューンに仕上がっている。カップリングにはアコースティックギターから始まるストレートなラブバラード曲「骨」を収録。異なる色を持つ2曲を通して、バンドの魅力が存分に味わえるシングルだ。
音楽ナタリーではSIX LOUNGEにインタビューを行い、「僕のヒーローアカデミア」に対する印象やシングルの制作過程、昨年にソニー・ミュージックレーベルズへ移籍してからのバンドの現在地について語ってもらった。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 草場雄介
前に進むしかない
──新曲「キタカゼ」がテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」6期の第2クールエンディングテーマとしてオンエア中です。「キタカゼ」はSIX LOUNGEらしさがありながら、アニメの内容にも沿っていると「ヒロアカ」ファンからも好評ですが、実際にオンエアを観たご自身の感想や周りからの反応を教えてください。
ヤマグチユウモリ(G, Vo) すごいっすよね! 自分らの曲がテレビで流れているってだけでもすごいし、そこにアニメの映像が付いているのを観て感動しました。俺はテレビじゃなくてスマホで観てるんですが。
ナガマツシンタロウ(Dr, Cho) 俺はやっぱりテレビで観たいと思って、このためにアンテナコードを買いました。実際にテレビで観たときは感動したっす。
イワオリク(B, Cho) 親戚も喜んでくれてうれしかったな。
──最初に「ヒロアカ」のエンディングテーマを担当するという話を聞いたときはどう思いましたか?
ヤマグチ 純粋に大プレッシャーで。うれしさよりも「いい曲を作らないといけない」というプレッシャーが強かったですね。でも、がんばりました。何曲も書いて、みんなと擦り合わせて。
──もともと「ヒロアカ」にはどんな印象がありましたか?
ヤマグチ “王道ジャンプ”のストーリーなので面白くて。
──そんな“王道ジャンプ”アニメのエンディング曲を担当するにあたり、曲作りはどこから着手していったのでしょうか?
ヤマグチ 俺はまず「ヒロアカ」の歴代オープニングテーマとエンディングテーマを全部聴いてインスピレーションをもらいました。
──歴代の楽曲からはどんな要素をキャッチしましたか?
ヤマグチ まっすぐなところですね。どれも直球で、こういう曲を作りたいなと思いました。
──作詞はナガマツさんが担当されていますが、歌詞作りはどのように?
ナガマツ 俺は「ヒロアカ」のことは知っていたんですけど、アニメを観たことがなかったので、まずはこれまでの放送分を全部観ました。そしたら本当に面白くて、そのままハマっちゃいましたね。歌詞を書くうえでは「何を書こうか?」という苦労はなかったですが、書きたいことをどう表現しようかというのは考えました。
──アニメのタイアップ曲は特に歌詞が重要になってくると思うのですが、ナガマツさんはどこからヒントやインスピレーションを受けましたか?
ナガマツ 原作マンガも読んで、6期のストーリーの中から自分がいいなと思ったところを歌詞に書いていきました。でも、ただアニメに寄せるだけじゃなくて、曲としてちゃんとカッコいいものを作りたいと思っていたので、自分の中にもストーリーを落とし込んで。なので、アニメのエンディングテーマというだけじゃなくて、バンドの曲としてもしっかり勝負できる曲になったと思います。
──「ヒロアカ」のストーリーとご自身やバンドがリンクすると思ったところはありますか?
ナガマツ “やるしかない”というところ。アニメの6期はつらいところもありつつ、「それでも前に進む」みたいな展開で。そういうところが自分らの状況と近いかな。
イワオ 壁に立ち向かっているキャラクターたちの姿勢とリンクするものを感じましたね。でもバンドの今の状況でいうと、窮地に立たされているという感じはなくて、むしろ「ヒロアカのエンディング」というデカい武器をもらった気分です。
ヤマグチ 曲を作っていた時期はちょうどレーベルが変わるタイミングでもあったので、俺的にはちょっと大変な部分もあって。本当に「前に進むしかない」みたいな状況を自分たちで作っていたので、そこはリンクしていたと思います。主人公のデク(緑谷出久)ほど大きなものを背負っているわけじゃないですけど。
俺らの色を強く出していこう
──「ヒロアカ」のエンディングテーマということで、これまでよりも多くの人に楽曲を聴かれる可能性を踏まえて、作るうえで意識したことは何かありますか?
ヤマグチ 特になかったですね。でも、できあがってみたら思った以上にキャッチーなメロディになってた。イントロなしで歌から始まるのも意識していたわけじゃなくて。
──それは自然と?
ヤマグチ 自然とですね。でも、作る前に「ヒロアカ」歴代のオープニングとエンディングだけじゃなくて、ほかのいろんなアニメのテーマソングも聴いてみたんですよ。だから自然とキャッチーなメロディになったのかなと思います。
──歌詞の面ではいかがですか?
ナガマツ もちろん「ヒロアカ」のエンディングテーマとして、アニメに寄り添うことは大事にしましたけど、バンドの曲としてカッコいいものを作りたいという気持ちがそれ以上にあったので、今まで書いてきた曲と並べても違和感はないと思います。
──SIX LOUNGEらしさを大切に。
ナガマツ そうですね。「アニメのエンディングっぽいね」だけでは終わらないように。何よりも自分たちが一番いいと思ったもので勝負したかったんです。せっかくタイアップ曲を作らせてもらえるんだから、俺らの色を強く出していこうと。北風をテーマにしたのも、自分が今までよく使ってきたワードだからで。放送時期が冬だからというのもあるんですけど、昔作った曲に「風が吹いたらそれが合図さ」という歌詞があって(2019年リリースの「DO DO IN THE BOOM BOOM」)。その“風”が今、自分たちに吹いてきたんじゃないかとか。そういうつながりやリンクする部分も入れています。
──多くの人に楽曲を聴かれることを意識したかどうかを聞いたのは、前作「ジュネス」(2022年10月発売)リリース時のインタビューで「わかりやすいものやポップなものを研究して作った」ということを話されていたので、その研究結果が「キタカゼ」に反映されているのかなと思ったからなんです。
ヤマグチ ああ、なるほど。制作期間は「ジュネス」と同時進行だったので、反映したわけではないですね。バンドとして新しいことをしようと思って作った「ジュネス」に比べたら、「キタカゼ」はそれよりも俺らっぽい曲になったなと思います。でも、確かにできあがってみたら、「ジュネス」ほどではないですけどわかりやすい曲なのかなと思いますね。いい意味で。
ナガマツ うん、ストレートだよね。
──ドラムとベースに関してはいかがですか?
ナガマツ ドラムは何度も録り直したんですけど、結局は本番で録ったものよりも勢いのあったデモのテイクを使ってるんです。デモのほうが、フレーズが固まりきっていなくて、いい感じに力が抜けていたんですよね。
イワオ ベースの音も、今までの中で一番気に入っているくらい、いい音で録れたと個人的には思っているので、ぜひ聴いてみてほしいです。いつもは音を整える段階で修正してもらうんですけど、今回は荒々しさがいい感じに曲に合っていて、1テイク目の音をそのまま使っています。
ナガマツ すげーとがった音でカッコいい。
イワオ 高い機材を借りたからというのもあるかも。お金の力っすね!(笑)
──3人ともこの曲にはかなり手応えがあるんじゃないでしょうか。
ヤマグチ はい。もう、ガンガンいってほしいっすね。この曲にバンドを引き上げてもらいたいくらい。
撮影場所に教えてもらった学校が、たまたま堀越先生の母校だった
──ミュージックビデオのコメントでも「『ヒロアカ』から来ました」というコメントがすごく多いですよね。
ヤマグチ すごいですよね。しかも海外からのコメントも多くて。
ナガマツ 「もっと聴かれるべきだ」というコメントもあって「本当それ!」って思いました。
──ミュージックビデオは、「ヒロアカ」の作者である堀越耕平先生の母校で撮影されたんですよね。あれはあえてですか? それとも偶然?
ヤマグチ 偶然なんですよ。校庭で撮影できる学校が東京になくて、「名古屋だったらあるみたい」と教えてもらった学校が、たまたま堀越先生の母校だったという。めちゃくちゃうれしかったですね。しかもジャケットで使っている写真も全部、その学校で撮影したんですよ。体育館にブーツで入ったので「いいんかな」ってちょっと不安になりましたけど(笑)。あ、でもシートが敷いてあったので、傷付けてはいないですからね!
ナガマツ MVの監督さんもその学校の出身だったみたいで。結果、すごく縁のあるビデオになってよかったです。しかも、アニメの6期ではデクたちが学校に戻ってくるところも描かれますよね。そのタイミングで、先生の母校でMVを撮るというのもリンクする感じがあっていいなと思いました。
イワオ 母校で撮ったことをきっかけに先生がMVを広めてくれたのも最高ですね。あそこで撮って大正解でした。
ヤマグチ すげえ数の「いいね!」が付いてたんですよ。よかったです。
次のページ »
ずっと“骨”をテーマにしたラブソングを書きたかった