バズった心境と新たな出会い
──まるで自分たちがバズってないような口ぶりですけど、サイサイだって立派にバズったじゃないですか。
すぅ (小声で)バズったんですよ……! でも、まだ売れてないんですよ……!(笑)
──あれって、活休中でしたっけ?
すぅ 「milk boy」がバズったのはコロナ禍ですね。そのあともほかの曲でジワジワとバズったから、2バズりくらい(笑)。
──特に仕掛けたわけでもないのに。
すぅ まったく仕掛けてないですね。ギャルとかインフルエンサーの子たちが動画にかわいい文字を付けてくれたり、振りを付けてくれたりして。
──バズった当時、まだTikTokに対して違和感があったすぅさんとしては複雑だったんじゃないですか?
すぅ めちゃくちゃ複雑でしたよ! 「チェリボム」とかはわかりますよ? こっちで振りを付けてる曲だから。でも、「milk boy」とか「八月の夜」に振りが付いてるのはもう、違和感でしかなくて。でもそれがきっかけで曲を好きになってくれた子から、「この曲が本当に好きで……」と言われたら、コロッと感情が変わりました(笑)。自分たちの曲を好きって言ってくれるのはどういった角度からでもうれしいから、違和感を感じる部分と「でも、これも面白いかもな」っていう気持ちが両方あって、その割合がどんどん変わっていってる感じですね。
──今の話で、去年サイサイが出演したサーキットイベント「NAKAYOSHI FES.2024」での出来事を思い出しました。あの日、僕はほとんど1日中、会場の1つだったSpotify O-EASTの2階でライブを観ていたんですけど、サイサイの出番になったら関係者エリアにその日出演していたアイドルが集結したんですよ。その光景を見て、「みんな、ずっとサイサイを観たかったんだな」ってグッときたんですよね。それってTikTokでバズった影響も絶対あったと思うんです。
すぅ サイサイの曲をカバーしてくれてるアイドルとか、曲を提供させてもらってるアイドルもいたりするので、アイドルの子たちに支持してもらえるのはすごくありがたいですね。それまでは、「自分たちはアイドルじゃないし」と思っていた時期もあったけど、そういう見られ方も楽しみながらできるようになってからは、「みんなを味方につけたい」って思うようになりました。だから、今ではアイドルも自分たちの仲間だと思って対バンイベントに出させてもらったり、逆に自分たちのイベントに出てもらったりしているので、そういう話が聞けてすごくうれしいですね。
15年の変化とメンバーの成長
──活動再開からドタバタしてる間に結成15周年です。メンバーそれぞれ、この15年でどう変化していますか?
山内 特にすぅは変わったんじゃない?
黒坂 うんうん。
山内 「こんなにしっかりしてたっけ?」って。末っ子っていうイメージが強かったけど、今では朝ちゃんと起きるし(笑)。
すぅ 私、最初がマジで最悪だったんで……やっと人並みになった、みたいな。
山内 私からすると「朝起きられない組」としての仲間意識があったんですけど、気付いたらめっちゃ朝活してるし。なので、少し寂しい気持ちもありつつ「大人になったな」っていう感慨もあります。会社でもいろいろできるようになったし。前は大人に言われたことなんてやらないタイプだったのに。
すぅ てか、めちゃ低レベルな話してる!(笑)
──あはは! ゆかるんさんについてはどうですか?
山内 ゆかるんは変わんないかな(笑)。
すぅ より柔軟になったと思う。おおらかになったし、楽しそう!(笑)
山内 もともと母のような包容力、母性を感じてたんですけど、それが年々増してきてる。
すぅ 実はゆかるんが一番マイルールが多いんですよ。自分で一度決めたことは曲げないというか、正義感が強い。でも最近は、「最初はこう決めたけど、こっちの選択もあるな」とか、選択肢が昔より増えた気がする。感覚的な話だから言葉にするのは難しいんですけど。
──僕もゆかるんさんには一度決めたことを守る完璧主義っぽいイメージを持っていたから、すぅさんの話は理解できますよ。
黒坂 おお、そうなんだあ!
山内 あと、前は受け身だったけど、今はめっちゃ発信するんですよ。社内会議でもめっちゃ発言するし、「のびのびしてるな」ってすごく感じます。
──じゃあ、あいにゃんさんに対してはどうですか?
すぅ にゃんちゃんはね、マジで社交性が高いです。
黒坂 我が社の営業担当です。
すぅ 「趣味を仕事にしよう」というモチベーションがすごく高くて、大人だなって思います。例えばお酒が好きだからそれを仕事にしようとか、この子とは普通に友達なんだけど対バンに誘おうとか。絵も、最初はグッズのデザインをするくらいだったけど、今では個展を開くまでになっていますし。すごく向上心があって、ストイックだなと思います。
黒坂 行動力がめちゃくちゃあるよね。「これ、やりたいな」と思ってから行動に移すまでがめちゃくちゃ早い。
山内 けっこう見切り発車なんですけどね。
すぅ それが大事なんだよ! 車もさ、「この車に乗りたいから免許取る」だったじゃん。
──確かに、活休中の動きを見ていても、あいにゃんさんはスピード感がありましたね。
山内 何か意味を持って動きたい──活動休止したことで、その思いがより強くなったところはあるかもしれない。だから、たとえ手探りでもいろんなことをやってましたね。
──独立すると、自分たちで営業することがかなり大事になってきますよね。
すぅ (力のこもった高い声で)本っ当に大事です!
黒坂 大事ですね。人とのつながりが一緒に何かをやることに結び付く。そういうのが全部、にゃんちゃんから生まれてるんですよね。
山内 みんな役割が違っているからこそ、こうやって褒め合えるんですよ。
すぅ ……私、今のところ「早起きできる」っていうことしか挙がってないけど……?
──確かに、ちょっと少ないかもしれない(笑)。
山内 動画編集、速いじゃん!
すぅ やめて! 次から遅れられないじゃん!
山内 (笑)。あとは、すぅが作詞したり、音楽を軸にした活動をしたりしてくれていたからこそ、私たちも違う動きができていたというか。だからこうやって活動再開できたし、すぅが音楽から離れすぎない立ち位置にいてくれたことが、私にとってはすごく救いでした。
曲作りの変化「本当に大切にできる曲を」
──すぅさんがサイサイの音楽軸を守っていたと。サイサイは楽曲のストックが膨大にあるバンドですけど、活動再開後はどうなんですか?
すぅ 昔作ったやつはけっこうあります。前は週3曲ペースで作ってたこともありましたけど、今はリリースが決まってから1曲ずつ上げていくスタイルになりましたね。過去、日の目を見なかった曲がめっちゃあるんですよ。そういう曲を今になって聴き直すと「やっぱ、いいな」って思うんですけど、「今の自分たちにはできないな」というものも多くて。
──「できない」というのは?
すぅ テンション感とか歌詞の内容が、今の自分たちのマインドと全然合ってなくて。今は思ってないことを言ってたり、「これは自分たちじゃなくて、別のアーティストに歌ってほしいな」と思ったり。だから、今は本当に自分たちが大切にできる曲を、1つずつ作っていくようにしています。
──近いうちにまとまった作品として出たりする予定は?
すぅ 6月22日に新曲が配信されます! リフレインが印象的で、面白いけどカッコいい曲になってます。それこそ、ちょっとTikTokを意識しちゃったり(笑)。過去にバズった、「八月の夜」「milk boy」「スローモーニング」に続いてTikTokで仕掛けられたらと思ってます。ライブの定番曲になったらいいな。
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SCANDALとの初ツーマンに向けた思い