鈴木雅之ソロ40周年&70歳!これぞデュエットの真髄「MARTINI DUET DELUXE」|豪華参加者15人からメッセージ

鈴木雅之のソロデビュー40周年と今年迎える古希(70歳)を記念して、デュエットベストアルバム「MARTINI DUET DELUXE」がリリースされた。

「MARTINI DUET DELUXE」はテーマごとに3枚で構成された、まさにデラックスな作品。Disc 1の「King & Diva」には渋谷凪咲を迎えて33年ぶりにリレコーディングした「渋谷で5時」をはじめ、バラエティ豊かなデュエット曲が収録されている。

古希を迎えるまでの3年を「Step123 season2」と銘打ち、これまでに増して精力的な活動を展開してきたマーチン。彼にとってデュエットとはいったいどんなものなのか? そしていよいよ古希を迎える心境は? じっくりと話を聞いた。

さらに、特集後半には「MARTINI DUET DELUXE」参加者より15人のコメントを掲載。渋谷凪咲、JUJU、篠原涼子、May J.、オルケスタ・デ・ラ・ルス、野宮真貴、松たか子、白石麻衣、国府弘子、鈴木聖美、古賀葵、高城れに(ももいろクローバーZ)、すぅ(SILENT SIREN)、鈴木愛理、伊原六花という豪華な面々からのメッセージをお届けする。

取材・文 / 秦野邦彦撮影 / YURIE PEPE

こういうアルバムが作りたかったのかもしれない

──1986年2月26日にシングル「ガラス越しに消えた夏」およびアルバム「mother of pearl」をリリースし、本格的にソロ活動をスタートされて40年。今の心境はいかがですか?

去年はグループでデビューして45周年だったけど、やっぱりグループとソロでは全然違うものがありますね。グループの場合、リーダーとして全体を見渡しながら最後に自分の歌を乗せる立ち位置だけど、ソロはマイク1本でどう歌を届けられるかだけ考えていればいいじゃないですか。その意味で青春期から大人になっていく中でボーカリスト鈴木雅之を構築しながら、40年という時間が流れたんだなと。ソロになってまず、バラードを丁寧に届けることのできるボーカリストになりたいという思いがあったので、いろいろな切り口でスキルを磨いてきたと思うんです。だけど、ことデュエットに関しては子供の頃に“マイ・ソウル・お姉ちゃん”、鈴木聖美との音楽的な遊びの中から生まれた原初のルーツなんですね。このタイミングでデュエットというジャンルに特化した作品を作ることができたのは、とても意義があることだと思います(参照:鈴木雅之のルーツをたどる)。

鈴木雅之

──今回のデュエットベストアルバム「MARTINI DUET DELUXE」はデュエットに特化し、テーマごとに分かれた3枚組で構成されていますね(※初回盤はDisc 1のカラオケ音源を加えた4枚組)。

ほら、トニー・ベネットがレディー・ガガとかエイミー・ワインハウスといった自分の孫世代の女の子たちと歌い上げたデュエットアルバム(2011年発表の「Duets II」)があったでしょう? 20代、30代の頃は、マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスの「Diana & Marvin」(1973年)みたいなデュエットアルバムを作りたいと思ってたけど、年を重ねていくうちに、トニー・ベネットが余裕でガガたちと一緒に歌い上げるアプローチって素敵だなという気持ちになって。自分も今なら女性シンガーとのデュエットに特化したアルバムを出すのに一番いい状態かなという思いもあったし、2008年の「Martini Duet」はポール・ヤングやゴスペラッツといった男性陣も交えたコラボレーションアルバムとしてのリリースだったけど、自分としてはやはりデュエットの真髄はラブソングであり、男女の関係をメインにしたい気持ちが強かったから、今回の「MARTINI DUET DELUXE」でようやく思いを完結できました。

──どの曲も時代ごとの鈴木さんのエッセンスがちりばめられていて感動します。まずは「King & Diva」と名付けられたDisc 1からお話を伺わせてください。

Disc 1は既存の曲に新録を交えながらソウルディーヴァたちと歌った1枚なんだけど、これだけで充分デュエットアルバムとして成立するものを作れる自信はあったんです。でも鈴木聖美は僕にとって初めてのデュエットパートナーであり、かけがえのない女性ボーカリストだからDisc 2は絶対入れたい。そしてDisc 3も、アニメ「かぐや様は告らせたい」という作品と出会えたことで令和の若い世代に歌声を届けられたから絶対外せない。振り幅を持たせつつ、どの曲もワンアンドオンリーな歌声を持つ人たちと作り上げたものだから、自分としても「こういうアルバムが作りたかったのかもしれない」というところまで到達できたと思いますね。

鈴木雅之

渋谷凪咲の笑顔にヤラレタ

──Disc 1の1曲目は「渋谷で5時(2026 Ver.)<feat. 渋谷凪咲>」。春らしく、ポップで楽しい仕上がりになりましたね。

33年前に菊池桃子、ももちゃんと一緒に歌った「渋谷で5時」を令和版としてよりシティポップ風にしたくて、以前からぜひ仕事したかった亀田誠治にアレンジを委ねてみたんです。オリジナルはソロの初期からアレンジを手がけてくれて3年前に亡くなった有賀啓雄というアレンジャー兼ベーシストが編曲してるんだけど、亀ちゃんのほうから「今回、有賀さんをリスペクトする形でアレンジさせてほしい」と言ってもらえてすごくうれしかった。完成した音も確実に令和版のシティポップになってるんだよね。そこに渋谷凪咲というシンガーを起用することで、ももちゃんとはまた違った色合いも出せるだろうし、何より“渋谷(凪咲)と5時”ってシャレてるでしょ!(笑)

──どういう経緯で渋谷凪咲さんと一緒に歌うことになったんですか?

彼女のことは、髙橋海人(King & Prince)くんと森本慎太郎(SixTONES)くん主演の「だが、情熱はある」(2023年放送、日本テレビ系)というドラマに出ているのを観て、笑顔がすごくかわいい子だなと気になっていたんだ。その後、チューハイのCMでワンダーウーマンみたいな格好してるのを見て完全にやられちゃって(笑)。彼女もグループ出身(NMB48)でしょう? 今回ミュージックビデオも作ったんだけど、その撮影の合間に、オーディションに合格したときの話を聞いたら「私は踊りも歌もほかの人に比べて全然できないのに私を選んでくれたのはなぜですかって秋元(康)先生にたずねたら『君にはすごい笑顔がある』と言われたんです」と話してくれて。それを聞いてすごく腑に落ちたんだ。自分もその笑顔が気になって今回オファーしてるから。セリフの部分も大阪出身だから関西弁でお願いしたら、そこがまた面白かったし、彼女らしい感じになった。この曲を1曲目に持ってくることで「おやっ? 楽しいアルバムだぞ」と思わせてくれるじゃない? 渋谷の街も90年代とは大きく様変わりしてるから、今、令和版として歌うことはものすごく意義がある気もしたし。いろんな意味で、まずみんなに届けたい楽曲になりました。

──渋谷さんのNMB48在籍時のキャッチフレーズは「東京の渋谷といえばハチ公前。ほんじゃ、大阪の渋谷といえば?(なぎさ前!)。これからはずーっと、なぎさ前で待ち合わせやで」でした。

ホントに!? それは知らなかった。すごいな……。やっぱり偶然は必然なんだよ(笑)。

篠原涼子の低音を引き出した「Canaria」、鈴木雅之流バッド・バニー「今夜は離さない」

──テレビドラマ「パンチドランク・ウーマン -脱獄まであと××日-」の主題歌「Canaria」では篠原涼子さんとのデュエットが実現しました。作詞作曲・水野良樹(いきものがかり)さん、編曲・本間昭光さんという布陣は「かぐや様は告らせたい」の縁でもあります。

水野はレーベルメイトの後輩として本当に頼もしいミュージシャンでありコンポーザーだし、アレンジャーの本間昭光との三者の楽曲作りが「かぐや」を通してできあがっている中、このメンツで新たなデュエット曲を作れたらいいなと思ってオファーしたんです。水野は今年いきものがかりデビュー20周年で忙しい中、快諾してくれて、しかも90年代の鈴木雅之的なラブソングのアプローチを試みてくれたおかげで、昔からのファンの人たちも「90年代の頃のマーチンが戻ってきた!」という感想を言ってくれた。そういうリサーチ力もさすがだなと感じたし、素敵なデュエットになったね。涼子とはもともと同じプロダクションで、30年くらい前に「いつか一緒に歌おう」と言ってたことが今回実現したことも感慨深いですね。涼子ってけっこうキー高めで歌うことが多いんだけど、今回はあえて低いところを歌わせてみたかったんだ。彼女自身も初めての経験だったみたいだけど、20代の頃とは違う大人の余裕が出せればいいなと。狙い通り、ものすごくハマったなと思いました。

──この流れで、橋幸夫さんと安倍里葎子さんの「今夜は離さない」のカバーが入るのは意外でした。この曲はオルケスタ・デ・ラ・ルスとのコラボですね。

僕は影響を受けた人たちの楽曲をトリビュートしたいという思いが昔からすごくあって、橋幸夫さんが昨年亡くなられたときも、何かできればと思ったんです。橋さんは吉永小百合さんとの「いつでも夢を」のように、1960年代にデュエット曲をたくさん発表されているんだけど、この「今夜は離さない」は1983年リリースだから実はそこまで古い楽曲じゃないんだよね。加えて、今年のスーパーボウルのハーフタイムショーのバッド・バニーしかり、このところ第一線にいるアーティストたちがサルサの情熱的な表現に立ち返ってるじゃない? 鈴木雅之はああいう情熱的なアプローチはこれまでそんなにしてこなかったけど、橋さんのこの曲なら「鈴木雅之流バッド・バニー、いけるかも」と思ってチョイスしたんだ。サルサといえばオルケスタ・デ・ラ・ルス。ボーカルのNORA(SUZUKI)はラジオの収録とかでよく挨拶に来てくれる仲だし、デラルスと本気でサルサをやったら面白いかなと思ってオファーして、気持ちよくレコーディングできました。デュエットにはいろんなバリエーションがあっていいわけだから、すごく面白いものになったと思います。

知る人ぞ知る白石麻衣とのデュエット

──2019年放送の「FNS歌謡祭」で当時乃木坂46に所属していた白石麻衣さんと披露した楽曲が、「Necessary(2026 Ver.)<feat. 白石麻衣>」としてついに初収録となりました。

これは秋元康さんから「令和に新たなデュエットの楽曲を披露する場を作りたい」というオファーをいただいて、「FNS歌謡祭」で一夜限りのデュエットをするために作った楽曲です。本番は武部聡志さんのアレンジによる生演奏だったけど、その前に試しにレコーディングした音源があって。麻衣とはあの番組以来ほとんど会っていませんが、最近「アンダーニンジャ」とかの映画で演技をしている彼女がものすごく好きでね。こんな役やっちゃうんだ!みたいな。そう思ったときに、「そういえば麻衣と歌った楽曲、どうしたっけ?」とふと思い出した。それでうちのスタッフに探してもらって、ミックスし直して2026年版として入れることができました。知る人ぞ知る曲としてリリースを期待してくれていた人たちもけっこういたから、これも1つのプレゼントになったんじゃないかな。

鈴木雅之

──Disc 1の最後を飾る「月に願えば<feat. 国府弘子>」はピアノとのデュエットで、ボーカリスト鈴木雅之を堪能できる1曲です。

今回のアルバムでは古希を迎えるボーカリスト鈴木雅之から、みんなへのメッセージになる楽曲も絶対作らなければいけないと思っていて。そのためには通常のボーカリストとのデュエットではなく、ジャズピアニストの国府弘子──弘ちゃんと僕は呼んでるんだけど、弘ちゃんを迎えることが一番美しいと思ったんです。この曲は去年のツアーが終わって、まず最初に書いた曲なんだけど、歌ではなくジャズピアニストである彼女のアプローチの妙をこの時代に届けることができるのは大きいと思うね。彼女は、うちのバンマス(大坪稔明)の奥さんでもあるから、あまりに関係性が近すぎて逆にコラボする機会がなかなかなくて。だけど今回はソロ40周年と古希のアニバーサリーだから、ここはうちのツアーバンド、コーラス全員参加の鈴木ファミリーとして客演してもらったんだ。Disc 1を締めるには一番いい形になったと思います。