音楽ナタリー Power Push - Shout it Out
駆け抜けた半年間と、10代の青春を完結させたメジャー作
10代の青春を完結させたかった
──今作はボーナストラックも含めて全4曲の作詞作曲を山内さんが手がけています。全曲の作詞作曲を担当するのは今回が初めてですよね。
山内 初めてです。僕はこの作品を20歳の誕生日を迎える4日前にリリースしたんですけど、発売日が決まってから「青春のすべて」っていうタイトルだけが浮かんでいて。僕はこの作品で、自分の10代の青春を完結させたかったんです。10代で発信できるものを出し切りたかった。
──実際、曲に込めた今のリアルな10代の心の内はどのような感じなんですか?
山内 やりたいことも目標も明確にあるし、僕は恵まれた状況にはあると思うんです。でもなぜか情緒不安定なんですよね。すごくポジティブな状況なのに、考え方だけネガティブというか。自分が置かれてる状況と、心のアンバランスさにギャップがありますね。
──表題曲「青春のすべて」は「不確かなまま過ぎていく」や「不確かなまま生きている」といった不安な気持ちを表したサビの歌詞が印象的ですね。山内さんはネガティブだとは言いつつも、曲の中で「前に進む」と言い切っています。
山内 僕にとってのリアルな青春って、キラキラしたさわやかなものじゃなくて、さっき言った19歳の心のアンバランスさとかそういうものだと思うんです。それを表現しようとしてるのに、ネガティブなまま終わっちゃうと表現しきれてないというか。ネガティブな部分を表現しつつ、でも「前に進む」っていうポジティブさも入れて、やっと完結する青春だと思うんです。
──なるほど。
山内 ある意味この曲が自己暗示というか、自分を鼓舞してくれるんですよ。情緒不安定なまま終わりたくなかったのは、10代最後に出す曲で自分をしっかり20歳にしてあげたかったからなんです。ちゃんと自分が大人になるということを、まだ難しいけど受け入れられるように。この曲はリアルな感情でもあるし、理想も含まれているんですよね。
細川 僕たちみたいに高校生のときにバンドをやってるヤツらって、大抵学校で日の目を見ないし、けっこうモヤモヤとした青春時代を送っているヤツが多いけど、この曲はその感じをすごく赤裸々に表現してるなって思いますね。「得体の知れない憂鬱」っていう歌詞とか「すげえわかる! この憂鬱なんなんや!」って実際に思うし(笑)。同世代としてこの気持ちを言語化してくれたのはすごいなあって。
露口 僕は歌詞で言うと、「日常が思い出になっていく」っていうのが胸にグサッときて、「大人に近付いてるんだな」っていうのを実感しました。この歌詞をしっかり表現するためにはどうしたらいいのかなっていうのを考えて、エモいギターフレーズを付けました。
たいたい 僕はAメロで出てくる「溶けていく青いアイスキャンディー」が、大サビ前には「溶けてしまった」とつながってくるところが好きです。10代の青春は終わってしまったけど、最終的には自分の足で歩いて、明日に向かっていくという描写に背中を押されます。
メンバーの結束力を深めてくれた「ギターと月と缶コーヒー」
──カップリング曲「一から」はすごく柳沢さんらしさが出ている曲ですよね。
細川 そうなんですよ。溜めてたものがバーンって弾けるようなサビの転調が印象的ですけど、それは柳さんのアイデアです。
山内 この曲、もともと自分たちの中で単調というか、パッとしない曲だったんですよ。「どうしたらいいんやろ」って、3日間スタジオに入ってずっとこの曲について悩んでたんですけど、柳さんと一緒にスタジオに入ったら一瞬で「サビで転調してみれば?」ってアドバイスをくださって。それで1回やってみたら周りから「これリードトラックいけるんちゃう?」っていう声が上がってきて。でも僕としては「青春のすべて」をタイトルにしたいっていうのがあったので、「絶対あかん!」と思って(笑)。じゃあこのカッコよくなってしまった「一から」を超えていくには「青春のすべて」をどうアレンジしようかっていう。
細川 曲同士で切磋琢磨してたよな。
山内 だから僕は余計「青春のすべて」の歌詞に悩んでしまいましたね。ほんまレコーディング前日とかまで歌詞を書いていて「柳さんすみません、僕まだ歌詞に悩んでて」って言ったら前日にも関わらず、3時間ぐらいカフェで2人で歌詞と向き合って相談に乗ってくださって。
──メジャーデビューを発表した5月2日放送のTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」では、番組中に黒板に「一から」という文字を書いてましたよね。(参照:Shout it Outがメジャーデビュー「一から新しいステージを歩いていく」)この曲にもやはりメジャーに立ち向かっていくような思いが込められていますね。
山内 そうですね。この曲にはメジャーという新しいステージは「一から」だと感じるけど、実は今までを生き抜いて、積み重ねた結果立っている場所なんだという意味を込めてます。あのときラジオで書いた「一から」っていう言葉の真意っていうのは、曲を聴いてもらえればわかってもらえると思います。
──「青春のすべて」というタイトルを先に決めたという今作ですが、収録曲は全部それ以降に書き下ろしたものですか?
山内 本編の3曲はすべて書き下ろしですね。ボーナストラックの「ギターと月と缶コーヒー」だけ「Teenage」の制作のときに僕が弾き語りで作ったものです。歌詞の通り、一晩家出をして、真夜中の公園で書いた曲で。
──とてもノスタルジックな曲調ですよね。
山内 そうなんです。だからこの曲はバンドでやっても合わないだろうなあと思っていたんですけど、一応「Teenage」の制作時にメンバーに聴かせていて。それで今回「青春のすべて」の選曲をみんなでしてるときに、「『ギターと月と缶コーヒー』を入れないか」っていう意見がメンバーや周りのスタッフさんから出てきて。
細川 「彰馬が10代最後に出す作品で、この曲を入れないのはないだろう」って思ったんです。絶対に10代の彰馬じゃないと書けない曲ですし。
山内 その意見が周りから出たときにすごくうれしかったのが、「今しかできないことをやりたい」っていう気持ちは僕だけじゃなくて、みんなが共通意識として持ってくれてるんだなあっていうのを確認できたことなんです。この曲がさらにメンバーの結束力を深めてくれましたね。
──この曲は音の質感がちょっと粗い感じですよね。
細川 そうなんです。キャンプファイヤーをしながらみんなで楽しく演奏してるみたいな雰囲気を出したくて、レコーディングスタジオの照明を落として、いい感じの雰囲気の中でみんなで一発録りでレコーディングしたんですよ。粗さも生かしています。
露口 すごい楽しくて「青春!」って思いました(笑)。みんなで顔を見合わせながらやるっていうのがよかったですね。
山内 細川がコーラスで歌詞を間違えてるのもそのまま使ってますからね(笑)。
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- メジャーデビューシングル「青春のすべて」 / 2016年7月6日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / PCCA-04392
- 通常盤 [CD] 1200円 / PCCA-04393
CD収録曲
- 青春のすべて
- 列車
- 一から
<ボーナストラック>
- ギターと月と缶コーヒー
初回限定盤DVD収録内容
2016/04/05 at 新宿LOFT ライブ映像
Shout it Out presents “虎の威を借り、狩られる狐”
2016年8月3日(水)東京都 新宿LOFT
<出演者>
Shout it Out / Bentham
2016年8月30日(火)愛知県 池下CLUB UPSET
<出演者>
Shout it Out / and more
2016年8月31日(水)大阪府 OSAKA MUSE
<出演者>
Shout it Out / and more
Shout it Out(シャウトイットアウト)
大阪府堺市を拠点に活動するロックバンド。2012年4月に高校の軽音楽部に所属していた山内彰馬(Vo, G)、たいたい(B)、露口仁也(G)を中心にバンドを結成し、ライブ出演や、コンテストへの出場で注目を集める。2015年8月には「未確認フェスティバル」で初代グランプリを獲得。その後10月に前ドラマーがバンドを脱退し、新ドラマーとして細川千弘が加入する。12月にはタワーレコード内の新レーベル・Eggsから第1弾アーティストとしてミニアルバム「Teenage」を、2016年3月にはテレビドラマ「ニーチェ先生」主題歌の「ハナウタ」や「未確認フェスティバル2016」の公式応援ソング「逆光」などを収めた4曲入りCD「僕たちが歌う明日のこと」を発売。7月にはメジャーデビューシングル「青春のすべて」をポニーキャニオンよりリリースした。