音楽ナタリー Power Push - Shout it Out細川千弘・山内彰馬 SUPER BEAVER柳沢亮太
2人で進む決意、少年から青年への変化
Shout it Outが3月8日に1stフルアルバム「青年の主張」をリリースした。
2016年9月に露口仁也(G)とたいたい(B)がバンドを脱退し、山内彰馬(Vo, G)と細川千弘(Dr)の2人体制での活動をスタートさせたShout it Out。彼らがサポートメンバーと共に制作した初のフルアルバムにはプロデューサーとして、2016年7月発表のメジャーデビューシングル「青春のすべて」よりShout it Outの作品を手がけているSUPER BEAVERの柳沢亮太(G)が参加している。
音楽ナタリーでは山内、細川、柳沢の座談会を企画。柳沢がShout it Outの作品に携わってからこれまでの1年間を振り返ってもらい、さらにアルバムに込められた思いを聞いた。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 小原泰広
2人でやっていく決意
──前回のインタビューのときに、山内さんは「僕らの気持ちを理解してくれる、現役のバンドマンとして活動している方に(プロデュースを)お願いしたい」という気持ちから、ファンであったSUPER BEAVERのソングライター・柳沢亮太さんにオファーしたと話してましたよね(参照:Shout it Out「青春のすべて」インタビュー)。プロデューサーをやったことがなかった柳沢さんが、Shout it Outのオファーを受けた決め手はなんだったのでしょうか?
柳沢亮太(G / SUPER BEAVER) やっぱりSUPER BEAVERのことを好きだって言ってくれてたのが一番大きかったですね。それとメジャーにいた頃の自分と今のShout it Outの年齢が近くて、重なったところもあるし。Shout it Outはメジャーデビューをすることで関わる人や意見が増えることが不安だったみたいですけど、当時の自分は不安とかよりも、どちらかと言うと舞い上がってたような気がして。周りの人が増えることに対してなんの焦りも、戸惑いもなかった。
──それはネガティブなことを考えていなかったからですか?
柳沢 そうです。でも実際にやってみて選択肢が増え、意見が増えることに対して、かつての自分は首を縦に振ることしかできなかった。で、行き着いた先、残っていた感情が「つまらない」だった。Shout it Outはそれを最初から恐れていたらしいんですよね。「変わるのは絶対嫌だ」と言ってて、あんまり大人を信用してない感じ(笑)。
──2016年7月のメジャーデビューを経て、9月にはギタリストの露口仁也さんとベーシストのたいたいさんがバンドを脱退しました(参照:Shout it Outからギター露口&ベースたいたい脱退)。柳沢さんも近くで一連の流れを見ていたと思うんですけど。
細川千弘(Dr) というか、僕らがメンバー脱退をいち早く報告したのがヤナギ(柳沢)さんなんですよ。山内と3人でご飯を食べながら「実はメンバー脱退の話が進んでいるんです」って相談したら、ヤナギさんは「えー!」って驚いて(笑)。
柳沢 いや、だって急に「お話があります」って呼び出されて。そんな展開を聞かされるとは想像してなかったんですよ。
細川 とにかく真っ先にヤナギさんにこの話を聞いてほしかったんです。不安がまったくなかったっていったら嘘になるんですけど、僕らの中では2人でやっていく決意はけっこう固まっていて。そのスタンスでヤナギさんに話したら「でも2人は全然迷ってないんでしょ? だったらもう大丈夫だよ。なんの心配もいらないと思う」って言ってくださって。そこで「2人でやっていけるんじゃないか」っていう思いがさらに強まりましたね。
2人になったからこそできること
──柳沢さんが「なんの心配もいらない」と思った具体的な理由はなんですか?
柳沢 脱退した側、バンドを続ける側が、お互いの思いをちゃんと受け入れているっていうのが見て取れたからですね。Shout it Outはもともと友達同士という関係性から生まれたバンドだから、「インディーズ盤出してみよう」「メジャーデビューが決まった」というふうに展開が変わる中で脱退した2人は「あ、ここまでのことを求めてたわけじゃなかったんだよね」って感じたんだと思うんです。でも彰馬と千弘は「いや、ここまで来たら行くとこまで行きたいでしょ」って考えだったんですよね。その後オフィシャルサイトに掲載された辞めた2人のコメントも、「夢が叶いました! これで思い残すことはありません」みたいな感じであまりに潔かったから、バンドに悪い影響はないだろうと思って。
山内彰馬(Vo, G) ヤナギさんに相談させていただいたときにも、こういう感じでお話をしてくださって。僕らとしてはちょっと意外だったというか。
柳沢 「必死で止めろ!」みたいに言うと思った?(笑)
山内 (笑)。僕らのことなので僕らが一番考えるべきなんですけど、「考えすぎてたんかな」って思うぐらい、ヤナギさんはホントにスッと受け入れてくださったというか。
──「考えすぎた」というのは、メジャーデビューのプレッシャーもあって?
山内 たぶんそこまでは考えてはいなくて。そもそも4人でやってたものが2人になったらそのままでは活動ができなくなるっていう、シンプルな理由ですね。
──新体制で昨年12月にリリースしたCD「これからと夢」のレコーディングには細川さんの実兄であるthe unknown forecastの細川雅弘(B)さん、バンドと親交の深いSIX LOUNGEのヤマグチユウモリ(G, Vo)さん、climbgrowの近藤和嗣(G)さんが参加されていますね。
細川 はい。新曲3曲のベースは全部兄貴に弾いてもらって、そのうち2曲にユウモリと和嗣がギターで参加してくれて。「もう1曲どうしようか」って迷ってたときに、ヤナギさんが「別に2人になったからと言って絶対にギタリストを入れて、4人のサウンドで作んなきゃいけないっていう縛りはないし、2人になったからこそできることをやったらいいんじゃないか」って言ってくれたんです。それが彰馬が脱退したメンバーのことを思って書いた「これからのこと」っていう曲。その曲では彰馬がギターを弾くことにして。
山内 自分たちの考え方だけで活動を続けていたら、責任感も持てずに、ケジメを付けられずに、フワフワしたまま次に進んでしまったんじゃないかと思っていて。ヤナギさんのおかげで、メンバーの脱退を経て「どうやって2人で続けていくのか」っていうことをちゃんと考えられたと思います。
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収録曲
- 大人になれない
- 17歳
- 雨哀
- 道を行け
- DAYS
- 夜間飛行
- トワイライト
- 青春のすべて
- 影と光
- 青年の主張
- エンドロール
- 灯火
収録曲
- 美しい日
- 全部
- 27(LIVE ver.)
Shout it Out(シャウトイットアウト)
2012年4月に高校の軽音楽部に所属していた山内彰馬(Vo, G)らを中心にバンドを結成し、ライブ出演やコンテストへの出場で注目を集める。2015年8月には「未確認フェスティバル」で初代グランプリを獲得。同年10月に細川千弘(Dr)が加入した。12月にはタワーレコード内の新レーベル・Eggsから第1弾アーティストとしてミニアルバム「Teenage」を発売。2016年7月にはメジャーデビューシングル「青春のすべて」をポニーキャニオンよりリリースした。9月にはギタリストとベーシストがバンドを脱退し、山内と細川の2名体制にサポートメンバーを迎える形で、新体制での活動をスタートさせる。2017年3月8日に初のフルアルバム「青年の主張」を発売した。
SUPER BEAVER(スーパービーバー)
2005年に渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“28才”広明(Dr)の4人によって東京で結成されたロックバンド。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを敢行。2012年には自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げる。2013年、東京・shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、精力的にツアーや自主企画を開催。バンド結成10周年の節目に当たる2015年4月1日、フルアルバム「愛する」をリリースした。2016年4月にはバンド史上最大規模のワンマンライブを東京・Zepp DiverCity TOKYOにて開催。6月にフルアルバム「27」を発表し、10月にZepp DiverCity TOKYO公演の様子を収めたライブDVDと渋谷による書き下ろし小説「都会のラクダ」をパッケージした「10th Anniversary Special Set『未来の続けかた』」を発売した。同年11月には2度目となるZepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブを成功させる。2017年1月にはシングル「美しい日 / 全部」をリリースした。