Shout it Outが12月9日に大阪・BIGCAT、2018年1月20日に東京・LIQUIDROOMで自身最大規模のワンマンライブ「GOODBYE MY TEENS」を開催する。
「GOODBYE MY TEENS」は山内彰馬(Vo, G)が開催発表時に「いつまでも若さに頼っていられないし、そのつもりもないので、けじめのつもりでやります」とコメントしている、彼らにとって大きな意味を持つライブ。十代でメジャーデビューを果たし、楽曲「17歳」やミニアルバム「Teenage」といった十代をテーマにした作品をリリースしてきた彼らが、現在21歳のこのタイミングで“さよなら私の十代”という言葉を掲げる理由はなんなのか。音楽ナタリーでは山内と細川千弘(Dr)にインタビューを実施。これまであまり語られてこなかったバンドの道のりや、ワンマンライブの券売状況がよくないというバンドの現在、Shout it Outのこれからを語ってもらった。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 山川哲矢 ライブ写真撮影 / 南風子
ホーム・大阪でのライブが減った理由
──今回はShout it Outが12月9日に大阪・BIGCAT、2018年1月20日に東京・LIQUIDROOMで開催する自身最大キャパシティのワンマンライブ「GOODBYE MY TEENS」に向けてお話を伺います。聞いた話によると、あまり券売状況がよくないそうで……。
細川千弘(Dr) そうなんですよね……特に大阪が。今回に限った話じゃなく、いつもヤバいんですよ。
山内彰馬(Vo, G) 大阪でライブをするのが2、3カ月に1本ぐらいのペースになってしまったから、大阪の民から見捨てられたんだと思います。
──なぜホームの大阪でのライブが少なくなってしまったんでしょうか。
山内 地方に行くという技を覚えてから、バカの1つ覚えみたいに地方に行き続けて。ホームでのライブを減らそうと思ってたわけではないんです。あと、今年は「青年の主張」(3月発売の1stフルアルバム)からリリースがなかったし、自分たち主体の活動が少なくて。だから友達のツアーに呼んでもらってライブに出ることが多かったんですけど、だいたい地方だったんですよね。
──確かに、ツアーの東名阪公演はファイナルシリーズとしてワンマンライブを行うバンドも多いですからね。
山内 そうなんですよ。仲のいい友達が売れてきて、みんな対バン相手を呼んでやるって言うより、自分たちだけでやるように変わってきた。だから東名阪は呼ばれないんです。
──仲のいい友達と言うと、THE NINTH APOLLOの所属バンドでしょうか。
山内 そうですね。と言うかSIX LOUNGE、FOMARE、climbgrowとか、同い年のバンドがみんなどんどんTHE NINTH APOLLO関連のレーベルに入っていくんですよ。
──細川さんもその辺りのバンドと仲がいいんですか?
細川 俺はプライベートではそんなでもないっすね(笑)。別に仲悪いわけではないし会ったらしゃべるんですけど、そもそもバンドマンとあまり一緒にいないし、つるんだとしても先輩が多いです。もともと彰馬の好きな音楽とかライブの雰囲気が、ナインス(THE NINTH APOLLO)の同世代が持ってる感性と近いんだと思います。だから打ち解けられるのかなって。
山内 音楽性だけじゃなくて、人間性でもパンクスが好きですね。
細川 俺もそれが嫌いとかはないんですけど、彰馬と俺ってそのへんが全然違うんすよ。
テクニカルなドラムを叩くと山内が不機嫌に
──そもそも、細川さんはどんな音楽が好きなんですか?
細川 俺はもともと残響(レコード)ブームのときに音楽にハマりました。だから高校生のときはcinema staffとPeople In The Boxが大好きで……なんと言うか、演奏がちょっとゴチャゴチャしたバンドが好きなんです。
山内 だからほんまはテクニカルな演奏ができるんですよ、コイツは。
細川 別にやろうと思えばできるんですけど、Shout it Outでそれをやっても何も生まれないと思うので。
山内 スタジオでそういうドラムを叩くと俺が不機嫌になるんすよ。
細川 そうそう(笑)。
──なぜ不機嫌に?
山内 邪魔だなと思って。そういうときは「ただの8ビート叩いてー」って言います。
──(笑)。細川さんは自分好みのドラムを曲に入れたいと思ったことはあるんですか。
細川 思ってた時期もあって、彰馬とぶつかったりもしてました。
山内 メンバーが2人抜けて、千弘と2人になった頃めっちゃケンカしてましたよ。
細川 2人になって最初のCD(2016年12月リリースのCD「これからと夢」)を作ったときは、俺の兄貴(細川雅弘 / the unknown forecast)やclimbgrow、SIX LOUNGEのメンバーがサポートしてくれたんで、俺ら主体で動かなアカンくて。それもあってぶつかってました。
山内 今は千弘がすごくガマンして、俺に合わせようとしてる。がんばってうまさを隠してくれてます。
細川 そんなにガマンしてるっていう感覚はないんですよ(笑)。なんて言うんですかね……今はお互い、性格や好きな音楽とか、いろいろとわかってるんですよ。「コイツ、あれは好きやけど、こういうことはやりたくないやろな」みたいな。だから、彰馬に対して「もっとゴチャゴチャした曲やろうぜ」って言う気も全然起きてなくて。俺はやっぱ彰馬が作ってくる曲がすごく好きなので、その曲のよさを伸ばすことに徹してる感じですね。
山内 でもまあ、いい曲持って行ったらいい反応をしてくれるので。だからほんま、俺の作る曲次第です。
──そこで曲のよさを測れるのはいいですね。
山内 そうですね。明らかにノッてないときはノッてないんで。千弘は末っ子なんで、感情を隠せないんですよ。
──一見大人っぽく見えますが。
細川 俺めちゃくちゃ取り繕ってるんですよ、がんばって(笑)。けっこう嘘付けないしアホだし、フタ開けたらだいぶヤバいと思います。Shout it Outって、彰馬が型破りな性格で俺がしっかりしてるって見られがちなんですけど、実際は逆で。コイツももちろんパッパラパーな部分があるんですけど、ハードコアの箱出身やからか挨拶や礼儀がちゃんとしてるんです。
サーキットの動員は周りの人のがんばり
──話を戻しますが、2人はワンマンライブの券売状況がよくないことについてどう捉えていますか?
山内 悲しいです。
細川 悲しいっすね。大阪はぶっちゃけると3分の1ぐらいしか売れてないので(取材は11月頭に実施)。最近「ミナミホイール」(「MINAMI WHEEL 2017」)でBIGCATに立ったばかりで、そのときは入場規制がかかったんですけど……。
山内 でもそれって全然すごくないと思うんですよ。すごい自虐をすると、ワンマンでお客さんを集めるバンドはちゃんと実力があるバンドで、サーキットで人を集めるバンドはただ名前が知れてるバンドだと思うんです。それってバンドの実力は関係ないし、周りのスタッフのがんばりで名は知れる。だから俺はずっとサーキットの動員は周りの人のおかげだと思っていて。
──なるほど。
山内 大阪のサーキットに初めて出させていただいたのが高校生のときなんですけど、そのときは自分たちしかいなかったので前の年にチケットを買って観に行って、ビラをめっちゃ配りまくって、主催者にCD渡してっていうふうに動いたんです。それで次の年にちっちゃい箱やったけど出演できて、それなりに人も入ってくれて。そのときは自分たちの実力やなって実感がありました。でも事務所に入って大人が協力してくれるようになってからは自分が動いてないから、正直サーキットに人がたくさん入っても実感がないんです。
細川 もちろんたくさん人が入ってくれるのはうれしいんですよ。でも実際ワンマンライブのチケットは、サーキットで見たパンパンのお客さんがいる光景なんて遥か夢、ぐらいの売れ行きしかなくて。「なんでなんやろな」と思いつつ、よくも悪くもうちらの実力はそれくらいなんだということがわかりました。
山内 普通のことっちゃ普通のことなんですけど、サーキットって普段のライブハウスでのイベントより特別感があるしチケット代も高いぶん、お客さん側も「ちゃんと楽しまなきゃ!」っていう気持ちがあると思うんです。だから「名前聞いたことある」っていうだけで観に来てくれる。気になるからネットで音源聴いてみよう、CD買ってみようっていうのはあると思うんですけど、気になるからライブハウスに観に行こうっていうのは、今のご時世敷居が高いんじゃないかなと。でもサーキットは観に来てもらうのも普段のライブハウスより簡単だし、お客さん自体が楽しむ気持ちで来てるから普段のライブよりも盛り上がってしまう。そのジレンマはめっちゃ感じてました。
──5月に東京・TSUTAYA O-WESTで行われたワンマンライブはチケットがソールドアウトして満員でしたよね。
山内 はい。あの日を迎えたときに、ひさしぶりに「自分たちの実力だ」と実感できました。それまで……事務所に入ってからどんどんどんどん、活動自体の実感がなくなってしまっていたんです。
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俺たちはメジャーデビューを追いかけた
- Shout it Out「青年の主張」
- 2017年3月8日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
2800円 / PCCA-04474
- 収録曲
-
- 大人になれない
- 17歳
- 雨哀
- 道を行け
- DAYS
- 夜間飛行
- トワイライト
- 青春のすべて
- 影と光
- 青年の主張
- エンドロール
- 灯火
- Shout it Out(シャウトイットアウト)
- 2012年4月に高校の軽音楽部に所属していた山内彰馬(Vo, G)らを中心にバンドを結成し、ライブ出演やコンテストへの出場で注目を集める。2015年8月には「未確認フェスティバル」で初代グランプリを獲得。同年10月に細川千弘(Dr)が加入した。12月にはタワーレコード内の新レーベル・Eggsから第1弾アーティストとしてミニアルバム「Teenage」を発売。2016年7月にはメジャーデビューシングル「青春のすべて」をポニーキャニオンよりリリースした。9月にはギタリストとベーシストがバンドを脱退し、山内と細川の2名体制にサポートメンバーを迎える形で、新体制での活動をスタートさせる。2017年3月に初のフルアルバム「青年の主張」を発売。12月9日には大阪・BIGCAT、2018年1月20日には東京・LIQUIDROOMで自身最大規模のワンマンライブ「GOODBYE MY TEENS」を開催する。