音楽ナタリー Power Push - Shout it Out
駆け抜けた半年間と、10代の青春を完結させたメジャー作
Shout it Outがポニーキャニオンよりメジャーデビューシングル「青春のすべて」を発表した。山内彰馬(Vo, G)が20歳の誕生日を迎える4日前にリリースされた今作には、彼が10代の青春を完結させるために書き下ろしたという3曲と、ボーナストラックを収録。山内の憧れの存在であるSUPER BEAVERの柳沢亮太(G)がプロデューサーとして参加していることも大きなトピックの1つだ。
音楽ナタリーでは2015年12月発売のミニアルバム「Teenage」より、約7カ月ぶりにインタビューを実施。山内が完結させたかった10代の青春とはどのようなものだったのか。メンバー4人に話を聞いた。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 後藤壮太郎
「Teenage」の頃はこんな歌詞書けなかった
──前回は2015年12月発売のミニアルバム「Teenage」のタイミングでインタビューさせていただきました(参照:Shout it Out「Teenage」特集)。
山内彰馬(Vo, G) もう半年経ってますね……体感的にはほんまに2カ月ぐらいの感じです。濃すぎてうろ覚えな部分もあります(笑)。
細川千弘(Dr) あの日から駆け抜けてきた感はありますね。
──3月には4曲入りCD「僕たちが歌う明日のこと」を発表し、5月にはメジャーデビューの発表があって、濃密な半年間でしたね。Shout it Outは「若さを武器にする」ということをバンドのテーマとして打ち出していますが、今作を聴かせていただいたときに、ずっと10代の青春の真っ只中にいるんじゃなくて、成長していくうえでその時々の気持ちを歌っていくんだろうなと感じました。
山内 そうですね。それが自分がやりたいことで。意識して成長しようとか、考え方を変えていこうとは思ってないんですけど、日々を過ごして、年を重ねていくと、図らずも考え方は変わっていくと思うんです。
──現在19歳で、もうすぐ20歳を迎える年頃だと特に変わりますよね。
山内 おそらくすごく変わる時期なんだろうなって。自分のことをそんなに客観視できないんで、「変わったな」って思うような機会は少ないんですけどね。歌詞を書くうえでは過去にしがみついたりとか、背伸びしたりだとか、そういうことをせずに、ほんまにその時々の日記みたいな感じで、今しか感じられないことを意識的に入れてますね。
細川 彰馬はずっと「今しか書けない歌を書こう」っていうことを言っていて。メンバーから見ても「Teenage」からのこの半年間で彰馬の心境の変化を感じますし、表現力がより研ぎ澄まされたと思います。言いたいことがはっきり伝わってくるというか。
──今作では特にどんなところに変化を感じましたか?
細川 「Teenage」のタイトルトラックには大人に対する反感が込められてますけど、今回の表題曲「青春のすべて」では好きになれなかった大人に対して「それすら青春だと思える気がして 少しだけ許せたんだ」と言っていますよね。そういうところで心境の変化があったのかなって。
山内 この「許せたんだ」っていう言葉が一番、僕自身の心境の変化が表れてると思います。「Teenage」の頃だったら絶対にこんな歌詞は書けなかったし、この言葉が言えたことってけっこう大きいと思っていて。メジャーデビューが決まって状況が変わるにつれて、いろんな大人と関わっていく機会が増えて。もちろんなんですけど、大人もそれぞれちゃんと考えて、意思を持って生きているんだなということがわかったんです。知らなかったわけではないんですけど、それを受け入れることができたんだと思います。今作に柳さん(SUPER BEAVERの柳沢亮太 / G)がプロデューサーとして関わってくれたこともすごく大きいと思いますね。
理想が実体化していたSUPER BEAVER
──そもそもなぜ柳沢さんにプロデュースをお願いしたのでしょうか? 柳沢さんがほかのアーティストのプロデュースを手がけるのは今回が初めてですよね。
山内 今回メジャーデビューということで、スタッフさんから「プロデューサーを付けますか?」というお話をいただいて。そこで僕らの気持ちを理解してくれる、現役のバンドマンとして活動している方にお願いしたいなと思いまして。僕がもともとSUPER BEAVERのことが好きだということもあり、バンドの大半の楽曲を手がけている柳さんにお願いしました。
──SUPER BEAVERとはいつ頃出会ったんですか?
山内 高校生のときに初めてサーキットイベントで彼らのライブを観たんですけど、とにかく衝撃を受けて。最近はフェス受けするようなダンサブルな音楽が人気だけど、SUPER BEAVERはあんなにストレートな言葉と音楽で、時代の流れに逆らって人気を得ていて。僕が理想としている「こういうバンドがカッコいい」っていうのを全部やってたんですよ。それからライブに通うようになったんです。
──SUPER BEAVERは過去にメジャーデビューを経験して、現在はインディーズで活動しています。ボーカルの渋谷(龍太)さんはライブのMCでもメジャー時代のことを振り返って「大人と戦えなかった」と口にしていますよね。
山内 はい。僕もメジャーデビューが決まったときに「うまくできなくなるんじゃないか」っていう不安があって。そのときに渋谷さんがメジャー時代を回想するようなブログを書いてはって、共感する部分がすごく多くてグッときたんです。そういう同じ思いを持っている人が味方に付いてくださったら、いい方向に導いてくれるかもしれないと思って。正直プロデューサーってどんなものかわからなかったし、「曲ができました」って送ったらアレンジが加わって返って来るみたいなやりとりをするのかなあと思ってたんですけど、柳さんは一緒にスタジオに入ってくださって、真摯に相談に乗ってくれて。
細川 本当にフランクに、メンバーみたいな感じで接してくれたよね。
山内 顔合わせの一発目に柳さんが「わからないことを質問してくれたらどうにかするけど、自分から何かを発信することはない」っておっしゃって。それが僕らとしては、すごく自分たちのことを尊重してくれているというか、目線を合わせてやってくださっているなっていうことを感じて、この人にお願いしてよかったって改めて思いました。
──露口さんは同じギタリストですが、柳さんからアドバイスを受けるようなことはありましたか?
露口仁也(G) 「サビの1音目はもっとガッツリいくんや」とか、今後意識すべき弾き方を教えてもらって勉強になりました。あとは例えばレコーディングの最中にテックの方に「こんな音がいいんですけど」ってお願いしたときに、僕が感謝するのは当たり前だと思うんですけど、柳さんも「ありがとうございます」ってお礼を言ってたのを見て、1アーティストとして見習うべき姿だなあと思いました。
たいたい(B) 僕がフレーズが何個かあって迷っていたときに、柳さんが「自分はどうしたいのか」っていうのを1つひとつ紐解いてくれて。ここはベースが出たらカッコいいとか、歌詞を尊重しようとか。ベースを曲にどうマッチさせるかっていうのをわかりやすくご教示いただいて。あと今回メジャーデビューっていうことで、すごくワクワクしながら楽しく制作できている反面、プレッシャーとか不安もかなり大きかったんですけど、柳さんが丁寧に関わってくださったおかげで曲に対する確固たる自信が生まれました。安心感を与えてもらいましたね。
細川 僕はもともとドラムのテンポがちょっとずれると「ここは絶対に直したい」と思うタイプだったんですよ。でも今回柳さんとご一緒して、「あえてピッチを正しくするよりもこっちのほうがグルーヴィだし、バンドが一体になって音を鳴らしてる感じがちゃんと伝わるよ」っていうアドバイスをいただいて。バンド感をすごく大事にしてくださってましたね。
山内 技術面のみのアドバイスだけじゃなくて、そこに熱さとか気持ちを持って話してくれたよね。僕も気持ちを大事にするタイプなのでとても信頼できたし、やりやすかったです。
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- メジャーデビューシングル「青春のすべて」 / 2016年7月6日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / PCCA-04392
- 通常盤 [CD] 1200円 / PCCA-04393
CD収録曲
- 青春のすべて
- 列車
- 一から
<ボーナストラック>
- ギターと月と缶コーヒー
初回限定盤DVD収録内容
2016/04/05 at 新宿LOFT ライブ映像
Shout it Out presents “虎の威を借り、狩られる狐”
2016年8月3日(水)東京都 新宿LOFT
<出演者>
Shout it Out / Bentham
2016年8月30日(火)愛知県 池下CLUB UPSET
<出演者>
Shout it Out / and more
2016年8月31日(水)大阪府 OSAKA MUSE
<出演者>
Shout it Out / and more
Shout it Out(シャウトイットアウト)
大阪府堺市を拠点に活動するロックバンド。2012年4月に高校の軽音楽部に所属していた山内彰馬(Vo, G)、たいたい(B)、露口仁也(G)を中心にバンドを結成し、ライブ出演や、コンテストへの出場で注目を集める。2015年8月には「未確認フェスティバル」で初代グランプリを獲得。その後10月に前ドラマーがバンドを脱退し、新ドラマーとして細川千弘が加入する。12月にはタワーレコード内の新レーベル・Eggsから第1弾アーティストとしてミニアルバム「Teenage」を、2016年3月にはテレビドラマ「ニーチェ先生」主題歌の「ハナウタ」や「未確認フェスティバル2016」の公式応援ソング「逆光」などを収めた4曲入りCD「僕たちが歌う明日のこと」を発売。7月にはメジャーデビューシングル「青春のすべて」をポニーキャニオンよりリリースした。