清水翔太が6月27日にニューアルバム「WHITE」をリリースする。
「清水翔太と言えばラブバラード」。そんな印象を持っている人も多いと思う。だが、今の彼の作品を構成しているのは、オートチューンやリバーブのかかったボーカルであり、トラップのビートであり、低音が強調されたベース。つまり最先端のヒップホップだ。
今回は彼が「WHITE」という作品にたどり着くまでの道のりと、そこでどんな葛藤を抱えて、何を思っていたのかを聞いた。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 山崎玲士
歌い手としての自分はどうでもいい
──今回のアルバム「WHITE」は前作「FLY」(2017年6月発売)、前々作「PROUD」(2016年3月発売)以上に現行のUSヒップホップに寄った作品になりましたね。
基本的に、好きに曲を書いたらこういう感じになったんですよ。
──一部の楽曲のボーカルは自宅でレコーディングしたとか。
実は前作「FLY」でも1曲だけ自宅で録ってます。スタジオだとかしこまってしまって、自分の一番ナチュラルな歌が出てこないんですよね。それが嫌で自宅で録りました。前がけっこういい感じだったので、今回も「まあいいか」というノリで録ってしまいました。
──録音環境の違いで、音質に差が出たりはしないのですか?
もちろんスタジオで録ったほうが、音は断然いいですよ。いわゆるJ-POP的な曲を書いてた頃だったら、自宅で録ったりはしなかったと思う。より美しい歌声を聴かせることが重要だったし。けど、最近の僕はフランク・オーシャンみたいなわりとチルめの雰囲気が好きで、ボーカルテイクにリバーブやオートチューンを使ったりもしてる。そうなってくると、音質とかはあまり関係なくなってくるんですよ。自宅にあるマイクもそこそこいい機材だし。
──最近はアメリカのラッパーがフロウにメロディを取り入れることが多くなってきました。そういったトレンドは清水さんにどんな影響を与えましたか?
どうだろうな。昔はカッコいいフェイクを入れようとか、歌い方がどうだとかをすごく気にしていたんですが、最近は歌い手としての自分はどうでもいいと思っているんですよ。それよりも自分が書いた曲のクオリティを高めることを意識してる。もちろん声は僕の強みだから使うけど、曲が求めるものを歌うだけ、という感覚です。
──そこまで曲作りに注力するのはなぜですか?
それは自分が作った曲が評価されていないからです。歌に関してはある程度評価されてると思うけど、「清水翔太の作る曲はヤバいよね」「本当にいい曲を作るよね」と言われることはまだ少ない。「PROUD」以降は自分の書いた曲に対する評価がものすごく気になるようになりましたね。
「もうちょっとだけがんばってみよう」を繰り返した
──「PROUD」はそれ以前の作品と何が違うのですか?
「PROUD」は僕が腹を括ったアルバムなんです。ここから自分の個性を前面に出すようになった。それ以前は「こうしたほうが売れる」というスタッフの意見を聞いて作っていた。その頃は自分の音楽性を出すことが悪いことだと思っていました。「アルバムの収録曲のこの曲だけ好きにやらせてください」みたいな。そしたら2015年に出したベスト盤「ALL SINGLES BEST」が、自分が思ってたより売れなかった。それがすごくショックだったんです。自分の才能を疑ったことはなかったから、余計に何が正しいのかわからなくなりました。僕自身の資質が、音楽シーンや自分の置かれた環境とマッチしてないのかなって。あまりにショックで、休業まで考えたんですよ。アメリカで家を探して、実際に物件を見に行ったりもしました。
──実際に休業しなかったのはなぜですか?
それは自分の思い描いていたキャリアの中に、「休業する」という選択肢がなかったからです。だからもうちょっとだけがんばってみようと思ったんです。「PROUD」を作ると決めるまでの間が一番大変だった。なぜなら僕には、もう自分が好きな音楽を作るしか選択肢がなかったから。それで売れなかったらどうすればいいんだろうって。実際、レコード会社の人に「そんなの売れるわけない」とも言われたし。
──確かに日本のメジャーレーベルで活動するアーティストで、USヒップホップの要素を全面的に取り入れている人はあまりいませんからね。
あと単純に音楽性がものすごく変わるから、今までのファンがどう反応するのかもわからなかった。だけど、難しい場面に直面するたびに「もうちょっとだけがんばってみよう」を繰り返しました。信じれば夢は実現する、みたいな安易な綺麗事は言いたくないけど、僕はそうやっていろんなことを乗り越えてきたんです。そしたら「My Boo」という曲がヒットして、レコード会社も僕のスタンスを支持してくれるようになりました。
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もっといい曲をたくさん書いて、曲で評価されるようになりたい
- 清水翔太「WHITE」
- 2018年6月27日発売 / Sony Music Records
-
初回限定盤 [CD+DVD]
4212円 / SRCL-9852~3 -
通常盤 [CD]
3240円 / SRCL-9854
- CD収録曲
-
- dance with me.
- Good Life
- Friday
- (I'm fine)
- Silver & Gold
- 踊り続けよう
- Range Rover
- Beautiful
- alone feat. SALU
- Rainbow
- 初回限定盤DVD収録内容
-
「SHOTA SHIMIZU 10th Anniversary Event for Family」より
- Sorry Not Sorry
- My Boo
- HOME
- your song
- Tokyo
- SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2018 "WHITE"
-
- 2018年7月3日(火)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年7月13日(金)北海道 Zepp Sapporo
- 2018年7月19日(木)大阪府 Zepp Namba
- 2018年7月20日(金)大阪府 Zepp Namba
- 2018年7月30日(月)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年7月31日(火)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年8月4日(土)香川県 レクザムホール
- 2018年8月7日(火)岩手県 盛岡市民文化ホール
- 2018年8月9日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2018年8月11日(土・祝)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
- 2018年8月19日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)
- 2018年8月24日(金)広島県 上野学園ホール
- 2018年8月26日(日)島根県 島根県民会館
- 2018年8月28日(火)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年8月29日(水)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年9月4日(火)石川県 本多の森ホール
- 2018年9月10日(月)東京都 日本武道館
- 2018年9月11日(火)東京都 日本武道館
- 2018年9月17日(月・祝)大阪府 大阪城ホール
- 清水翔太(シミズショウタ)
- 1989年生まれ、大阪出身のR&Bシンガー。2008年2月にシングル「HOME」でメジャーデビューを果たし、同年11月に1stアルバム「Umbrella」を発表。2009年5月にリリースした加藤ミリヤとのコラボシングル「Love Forever」は同世代リスナーの大きな反響を呼んだ。2012年には小田和正をフィーチャーしたシングル「君さえいれば feat. 小田和正」やカバーアルバム「MELODY」、2013年1月には初の日本武道館公演の模様を収めた映像作品「Naturally Tour 2012」をリリースした。2015年2月、初のベストアルバム「ALL SINGLES BEST」を発売。以降もコンスタントにリリースとライブを重ね、デビュー10周年を迎える2018年1月にシングル「Good Life」をリリース、2月には10周年イベント「SHOTA SHIMIZU 10th Anniversary Event for Family」を東京・大阪・名古屋で開催した。5月にシングル「Friday」を発表し、6月に1年ぶりのアルバム「WHITE」をリリースする。