音楽ナタリー Power Push - SHERBETS

18年目の円熟が産んだ会心作

SHERBETSはすごく繊細で危うい

──福士さんは浅井さんのソロにも参加してますよね。SHERBETSとソロの違いはどんなところですか?

福士久美子(Key, Cho)

福士 人が違うから出てくる音も違いますよね。それは演奏してて感じるし、音ってその人そのものだと思うから。集まってるメンバーによって違う世界がある。それぞれいいし、同じ曲をやっても違う。生き物みたいな感じ。

──SHERBETSでは浅井さんのどういうところが出てくるんですか。

福士 ソロでやると穏やかな表現が、SHERBETSでやるとある意味ぎこちない、初々しい表現のようになるときがある。ソロの方がたぶん安定したベンジーが出てると思うんです。両方で一緒にやれたのは個人的に楽しめたなと。SHERBETSはすごく繊細で危うい。ギリギリな危うさとか必死さとか、そういう部分の絡み合いと、ベンジーの振り幅の広さと、思いもよらないような、ぶっ飛んだ表現力が出てる。

──前作、今作とひさびさにSHERBETSをやって、それまでの浅井さんとは違うものを感じた?

福士 みんなもそうかもしれないけど、たぶん成長してると思う。すごくキレるというか……もっと自由に泳いでる感じというか。前よりもしなやかになった部分もあるなと思いました。ほかのメンバーについても、「石の上にも三年」みたいな感じ(笑)。長い間もがいたり戦ったり一生懸命やり続けてると、あるとき急にポーンと、一瞬のうちに次の段階に上がるみたいな。そういうことがある。「きれいな血」のときはそれを感じましたね。

曲はそのときどきに自分の中から出てくるものでしかない

──今作の制作はいつから始めたんですか?

浅井 ツアーが終わってから作り始めた。

──作りためていたものはなかったんですか。

浅井 (曲の)破片とかはいっぱいあったけどね。ちゃんと作り始めたのはツアー終わって8月に週1ぐらいのペースでリハに入ってから。でもその矢先に俺が指折っちゃって。9月末に予定してたレコーディングを飛ばそうかと思ったけど、結局予定通りやった。4本あったライブもサポートの人を入れてなんとか乗りきって。ライブに関しては井ノ口さん(弘彦。元BLANKEY JET CITYの事務所社長)から電話かかってきて「ベンジー、ライブ飛ばしたらあかんよ」って。それまではライブ飛ばすつもりだったけど、そこは井ノ口さんの言葉で目が覚めた部分があって、スイッチが切り変わったかな。「よし、やったろう」って力が湧いてきたし。みんなにはすごく迷惑をかけたけど、やってよかったと思ってる。

外村公敏(Dr)

──なるほど。楽曲制作は元となるネタを浅井さんが持ってきて、それをバンド全体で育てていく形?

浅井 そうだよ。いつもと同じ。ギリギリのスケジュールだったけどね。

福士 よく間に合ったよね。自然に形になっていった。

浅井 まあねえ。俺は必死こいとったけど。

福士 おしりが決まってたから、みんななんとかしなきゃってがんばって。

──じゃあ「こういうアルバムにしよう」とか、そういうことは特に考えず。

浅井 相変わらずないね、そういうのは。曲はそのときどきに自分の中から出てくるものでしかないから。

バンドなんだからみんなも参加した方がいい

──前回、今回と福士さんの作詞作曲で、ご自分で歌われた曲が入ってますね。今作では「September」という曲です。

福士 今まではベンジーのバンドという考えがあったから、SHERBETSで歌うことはそんなに考えてなかったんです。でも「STRIPE PANTHER」ぐらいからちょっと考えが変わってきて。

浅井 それまでは俺ばかり曲を作って歌ってきたけど、バンドなんだからみんなも参加した方がいいじゃんって提案して、みんなもそれに賛同してくれた。そのほうが曲もバラエティに富んでいいかなと思うし。途中で福士さんの声が入ると、新鮮さもあるし。

──いいアクセントになってますね。

福士久美子(Key, Cho)

福士 そういうふうになったらいいなって思ってました。前作では書くんだったらメッセージを込めようと思って、メッセージ性のある歌詞にしたんですけど、今回はメッセージ性の強い「Stealth」もあるし、アップテンポの曲もけっこうあったから、最後にどんな曲があればいいかなと考えて。たまたまこの曲のメロディが先にできて、「September」って言葉が浮かんで、そこから紐解いていったらこの歌詞になったんです。

──じゃあ今回のレコーディングは、バンドとしての結束とか意義を確認する過程でもあったと。

浅井 そうだね!

福士 うん。

ニューアルバム「CRASHED SEDAN DRIVE」2016年1月20日発売 / SEXY STONES RECORDS/CRAZY MAD JOHNSON LABEL
「CRASHED SEDAN DRIVE」
初回限定盤[CD+DVD] 4320円 / VKCS-10059
通常盤[CD] 2916円 / VKCS-10060
CD収録曲
  1. JOLENE
  2. Stealth
  3. Crashed Sedan Drive
  4. COWBOY
  5. A BABY
  6. September
  7. 俺たちの季節
  8. Kinshasa
  9. Canberra Zombies Food Court
  10. Practice Hand
  11. JAKE
初回限定盤DVD収録内容
  • SHERBETS TOUR 2015「きれいな血」2015.7.7 LIVE at TOKYO LIQUIDROOM
SHERBETS TOUR 2016「CRASHED SEDAN DRIVE」
  • 2016年2月7日(日)千葉県 千葉LOOK
  • 2016年2月11日(木・祝)石川県 vanvan V4
  • 2016年2月13日(土)三重県 M'AXA
  • 2016年2月14日(日)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2016年2月16日(火)香川県 DIME
  • 2016年2月19日(金)福岡県 DRUM Be-1
  • 2016年2月20日(土)鹿児島県 SR HALL
  • 2016年2月26日(金)宮城県 仙台MACANA
  • 2016年2月27日(土)福島県 clubSONICiwaki
  • 2016年3月4日(金)北海道 cube garden
  • 2016年3月9日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2016年3月10日(木)大阪府 Shangri-La
  • 2016年3月16日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2016年3月19日(土)沖縄県 Output
SHERBETS(シャーベッツ)
SHERBETS

浅井健一(Vo, G)、福士久美子(Key, Cho)、仲田憲市(B)、外村公敏(Dr)からなるロックバンド。1998年結成。1999年にシングル「High School」2000年にアルバム「SIBERIA」をリリースし、精力的にリリースを重ねる。2008年には結成10周年記念のライブベストアルバム「SHERBETS GREATEST LIVE in TOKYO」を発表。2012年には8thアルバム「STRIPE PANTHER」をリリースする。2015年6月に3年ぶりのリリース作となる9thアルバム「きれいな血」を発表し、同月よりこの作品を携えた全国ツアー「SHERBETS 2015 TOUR『きれいな血』」を開催する。2016年1月に10枚目のオリジナルアルバムである「CRASHED SEDAN DRIVE」をリリース。2月からはツアー「SHERBETS TOUR 2016『CRASHED SEDAN DRIVE』」を実施する。