本物のことをやりたいんだわ。時間がそんなにたくさんあるわけじゃない

──改めて、バンドってどういうものだと思いますか？

浅井　バンドは……世の中に存在してる職業というか、やることがあるじゃん？ やることっていうか（笑）、いろんな役割が。政治家とかIT関係の人とか証券の人とか銀行マンとか農家とかうどん屋さんとか。すべて大事だと思ってるけど、そのあらゆる職業の中でも、バンドは自分たちの思想というか世界を一番表現できて、みんなに発表できるじゃん。全部自分たちで決めれてさ。自分たちが作り出したものがばーっと世界に広がる可能性もあるし。その……それってすげえことだよね（笑）。

──それはソロじゃダメなんですか？

浅井　ソロだと決めるのが1人になるでしょ。1人でももちろんいいんだけど、でもバンドはほかのメンバーの意見が入ってきて楽しいよね（笑）。

──以前、1人でやるときは打ち込みで作るって言ってましたよね。

浅井　うん。でもあれも気分次第で、しばらくそればっかやっとると、なんかつまんなくなってくるんだよね。長らくずっとバンドでやっとったから、コンピュータで1人で音を重ねていくって作業は新鮮ではあったんだわ。だからしばらくやってたんだけど、人間の作り出すリズムでやっとるほうが本物だしね。あと何年生きれるかわからんけど、残り少ない年月を……。

──ええ!?

浅井　（笑）。やっぱ本物のことをやりたいんだわ。時間がそんなにたくさんあるわけじゃないからね。

──そんな、残りの人生を意識するような年でもないでしょう？

浅井　いやあー、意識するでしょ、ミュージシャンとしては。「いつまでできるかな」とか、たまに考えるもんね。とにかく、バンドで人間が作るリズムは速くなったり遅くなったりして当然だし、それがバンドの個性じゃん。だからそっちのほうが聴いとって面白いと思うんだよね。うん。今はそういう感じかな。

──バンドでやる人間的なグルーヴと、1人で打ち込みで作り込む世界と、その両方がそれぞれに面白い。

浅井　うん。どっちかに決める必要はないもんね。

来るか来ないか

──SHERBETSのツアーのあとにソロをやるつもりだったという話でしたが、ソロの曲は今回のSHERBETSの曲とは全然違うものだったということですか？

浅井　うん。ソロ用の曲はあった。それとは別にSHERBETSの曲は作った。

──なるほど。その過程でバンドの面白さやだいご味を再認識した。

浅井　うん。今回すごくいい作品ができたと思っとって。いい作品ができるとこのバンドすごいと思えるよね。

──ヤボなこと聞きますけど、今回のアルバムはイマイチだなと思うことってあるんですか。

浅井　（笑）。それはないけど……いいことはいいけど、「きれいな血」のときは「熱量とかはあのときのほうがあったな」と内心思うことはあったね。今回は本当に自分の中で最高だと言い切れるなと初めて思ったかな。

──今作でポイントとなる曲というと。

浅井　「COWBOY」じゃないかな。

──どういう意味で？

浅井　カッコいいから。

──（笑）。これはいかにも浅井健一らしい曲ですね。手応えがあったんですね。

浅井　（手応えが）来るか来ないか、だね。「Stealth」もいいね。

──「Stealth」ができてアルバム全体の方向性が決まったということですか？

浅井　うーん、そういうことは全然考えてないね。必死になって毎日レコーディングスタジオに行ってやっとるだけだからね。全体像は途中で見えてくるけど。

──作ってる過程で「自分はこういうことを言いたかった」「こういうことを表現したかった」と気付くわけですか。

浅井　いや、それはないな。だいたい何が言いたいのかわからんもん、自分で。それは聴いとる人が感じ取ればいいと思うんだよね。今までアルバムをたくさん作ってきたけど、どんなことが言いたいとか、そんなこと考えながら作ったこと1回もないもん。そんなコントロールしてアルバム作れんわ。