椎名林檎「逆輸入 ~航空局~」 PR

椎名林檎|お客様の声に迅速にお答えした“直送便”

椎名林檎が12月6日にセルフカバーアルバム「逆輸入 ~航空局~」をリリースする。2014年発売の「逆輸入 ~港湾局~」(参照:椎名林檎初セルフカバー集に大友良英、前山田健一ら11人)の続編にあたる本作は、椎名が作家として2000年から2017年にかけて、石川さゆり、栗山千明、柴咲コウ、SMAP、高畑充希、ともさかりえ、林原めぐみ、Doughnuts Hole(松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平)、ICHIGO-ICHIE(深津絵里)に提供した楽曲のセルフカバーアルバムである。

このリリースに伴い、音楽ナタリーでは椎名本人にインタビューを実施。制作の舞台裏から楽曲への思いや提供時のアプローチ、さらに目前となった2018年のデビュー20周年イヤーまでを大いに語ってもらった。

取材・文 / 内田正樹

エゴサーチから重大なヒントをもらうこともある

──3年半ぶりに「逆輸入」がリリースされます。まずは今回の“航空局”というコンセプトからお話しいただけますか。

これは前回の「逆輸入 ~港湾局~」から考えていたことです。 「港湾局」はすべての曲のアレンジを異なるアレンジャーの方々にお願いすることで、“いろんな港を経由して帰ってくる”というイメージでまとめています。今回は、発注先へ提供する段階で、すでにこちらが構造を決め込んで作曲したものを中心に選曲しています。普段からお世話になっている諸先生方との必要最小限のリアレンジに留めた格好でセルフカバーしようと考えて取り掛かりました。“直行便”や“直送便”的な意味合いを冠して、お客様のもとへお届けしたいと思いました。

──“直送便”というニュアンスは、同じく多くのファンが待っているオリジナルの新作アルバムではなく、セルフカバーアルバムである本作を先にリリースした意図にも絡んでいますか?

そうですね。当初はオリジナル作品のリリースも考えたのですが、「目抜き通り」(参照:椎名林檎とトータス松本のデュエット曲が完成、CM&Mステでの共演も決定)をリリースしたとき、SNSで曲名を検索したら「セルフカバーアルバムが早く聴きたい」とのお声をかなりたくさん目にしました。こういう時代ですし、素朴なご意見へはなるべく迅速にお応えしたいと考えています。それと来年は、まずホールツアーで皆さまにお目にかかりたいと思っていました。各会場の規模や作りを想像したとき、そこに似合う曲が多いのは、このセルフカバーアルバムのほうかもしれないなと。

──相変わらずエゴサーチしていますねえ。制作中もチェックしているのですか?

します、します。むしろ制作中は重大なヒントをいただけたりもします。複数の選択肢が押し寄せてきたときなどはもちろん「どれが一番お好みかしら?」と参考にさせていただきます。楽しみに待ってくださるお客様の声が、最終的に決定打になる場合もままあります。こちらががんばっても実現できない事情があると、口惜しくてお1人お1人にダイレクトメッセージをしたくなります。いつも勇気をいただいております。

──でもすべての声に満遍なく応えるのも難しいですからねえ。

ええ。リリース情報が出るときは、まだ制作中と言うか、なんにも形になっていない時期だったりするでしょう? ただ曲目だけをご覧になっているお客さんが「うわ、楽しみ」「もう聞こえる。林檎の声で『おとなの掟』が余裕で脳内再生されている」などとおっしゃっていたりするでしょう。そういうときは慌てます。「ごめんたぶんその声は違う……キーも歌詞も変えちゃったし」と、申し訳なくてたまらなくなります。

──あはははは(笑)。

その線ですと「日本語詞じゃなきゃ意味ない」とか「この曲は英詞の予感、すなわち悪い予感」とか、そう言ったご意見を目にしたときは「悪い予感的中率、少なくするから! 的中しちゃっていたら申し訳ないけれど、品質を約束するから! 意図がわかっていただけるように仕上げるから!」などなど、iPhoneやMacへは適宜プレゼンをかけ続けていますね。

──そんなに会話してるんだ!?(笑)

はい。結果独り言にしかなっておりませんが。作詞の途中で、「これ、主格、誰よ?」などと迷いが生じた折にも、曲名を検索して「こんな、何か言っているようで何も言っていない歌詞、誰が口ずさんでくれると言うのだ? 一音たりとて無駄にしてはならない」と、泣いてはまた書き直すのです。さらに、録音を終えて、帰り際に立ち寄ったセブン-イレブンでふと耳にした店内BGMの「デイ・ドリーム・ビリーバー」にまた泣かされ。

──かつてのインタビューでは「(制作中に)デニーズで1人泣く」という発言もありましたね(笑)。でもこうしてエゴサーチを公言していると、海に投げたメッセージ入りの小瓶みたいに、「椎名さんに届くかも?」という前提でツイートやら書き込みをするリスナーも増えそうですね。

探します。お客さんのほうでも、ご意見くださった内容が反映された作品を見つけ出してくださったらうれしいな。

男は五十から

──全11曲の編曲クレジットを見ると、椎名さんが1曲、村田陽一さんが5曲、斎藤ネコさんが2曲(うち1曲は弦編曲)、名越由貴夫さんが2曲、朝川朋之さんが1曲、椎名・斎藤共同編曲が1曲という内訳ですね。

アンサンブルなどを書き換えていただいた曲はもちろんのこと、オリジナル版の作品から特に大きな変更点がなかったような曲についても、とにかく今回の録音時、現場監督を務めてくださった方のお名前を明記しています。

──“この曲はこの方に現場監督を頼もう”という采配はどのような基準で?

皆さん百戦錬磨の達人で、苦手なサウンドなどないような方々ですからね。うーむ……日頃皆さんの他所でのお仕事もチェックしていますし、ご自身の作品も拝聴しておりますし、まあそれを踏まえて、例えば村田先生には現代的な和声運びでトリッキーなセクションを求めがちだとか、ネコ先生には古典的な和声運びでエレガントなアンサンブルを求めがちだとか、傾向自体はなくもないと思います。無論エレキのことなら“名越電気”にお願いするとか。しかし、他所でまだあまりお見せになっていない先生方の側面にフォーカスしたいという欲求も大きくて。各先生の隠されたフェティシズムや罪悪感や羞恥心を刺激するようなセッションになってほしいというのが主軸ですかね。

──なるほど。椎名さんは基本的に編曲まで込みで作曲と公言されていますが、楽曲の構造と編曲者の関係性については?

椎名林檎

歌には歌のアーティキュレーションがありますよね。各音符の内容を具体的に説明するニュアンスです。クレッシェンドとかデクレッシェンドとか、スタッカートで実音はほとんど鳴らさないとか。声周りについて、私が子細にわたって指定するのと同じ作業を、各楽器でも行っていただくという目的が第一にあります。普通、作曲の段階で、こちらも各楽器をMIDIで鳴らしておきます。それを、弦ならネコ先生、管なら村田先生、エレキなら名越先生……と、それぞれ担当楽器を極めに極められた演奏家の方へお預けする。彼らは技術的な限界も真新しい可能性も熟知していらっしゃるわけです。1曲という広さの土地において建坪率と容積率いっぱいいっぱいまで贅を尽くすためには、いつも部門ごとにをより専門的に掘り下げておく必要があります。長くご愛用いただける曲を1曲でも多く作りたいです。

──ふと気付いたのですが、村田さんもネコさんも名越さんも朝川さんも全員五十代でした。

ああ、そうでしたか。そもそも「男は五十から」ですからね。ここ、ナタリーの小見出しにしてください。五十代って若い頃から永遠のタイプ。やっぱりカッコいいです。内田さん、おいくつでしたっけ?

──残念ながら四十代です。

あ、ごめんなさい。でもなんと申しますか……(しばし思案して)今ちょうど五十代の方々は、我々の知らない面白い時代を経験されていて、うらやましいです。しかもこちらの世代から遠すぎず、嫉妬と言うより憧憬の念に換えやすい。相性がいいと思いたいです。かつての東芝EMIでも、当時五十代だったおじ様方が面白かったです。実感として刷り込まれているかもしれませんね。

椎名林檎「逆輸入 ~航空局~」
2017年12月6日発売 / EMI RECORDS
椎名林檎「逆輸入 ~航空局~」初回限定盤

初回限定盤 [CD]
3780円 / UPCH-29274

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椎名林檎「逆輸入 ~航空局~」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / UPCH-20468

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収録曲
  1. 人生は夢だらけ
    (高畑充希 出演・歌唱 / かんぽ生命「人生は、夢だらけ。」CMソング)
  2. おいしい季節
    (栗山千明 / シングル「おいしい季節 / 決定的三分間」&アルバム「CIRCUS」収録曲)
  3. 少女ロボット
    (ともさかりえ / シングル「少女ロボット」収録曲)
  4. 暗夜の心中立て
    (石川さゆり / シングル「暗夜の心中立て」&アルバム「X -CrossII-」収録曲)
  5. 薄ら氷心中
    (林原めぐみ / シングル「薄ら氷心中」収録曲)
  6. 重金属製の女
    (ICHIGO-ICHIE[深津絵里]/ NODA・MAP 第17回公演「エッグ」劇中音楽)
  7. おとなの掟
    (Doughnuts Hole[松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平]/ 配信シングル曲)
  8. 名うての泥棒猫
    (石川さゆり / シングル「暗夜の心中立て」&アルバム「X -CrossII-」収録曲)
  9. 華麗なる逆襲
    (SMAP / シングル「華麗なる逆襲 / ユーモアしちゃうよ」&アルバム「SMAP 25 YEARS」収録曲)
  10. 野性の同盟
    (柴咲コウ / シングル「野性の同盟」収録曲)
  11. 最果てが見たい
    (石川さゆり / アルバム「X -CrossII-」収録曲)

ライブ情報

椎名林檎「ひょっとしてレコ発 2018」
  • 2018年3月2日(金)埼玉県 川口総合文化センターリリア
  • 2018年3月7日(水)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
  • 2018年3月8日(木)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
  • 2018年3月15日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2018年3月16日(金)栃木県 宇都宮市民文化会館
  • 2018年3月23日(金)静岡県 静岡市民文化会館
  • 2018年3月30日(金)兵庫県 神戸国際会館
  • 2018年3月31日(土)兵庫県 神戸国際会館
  • 2018年4月6日(金)富山県 オーバード・ホール
  • 2018年4月8日(日)新潟県 新潟県民会館
  • 2018年4月13日(金)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2018年4月16日(月)大阪府 フェスティバルホール
  • 2018年4月17日(火)大阪府 フェスティバルホール
  • 2018年4月20日(金)東京都 東京国際フォーラム ホール A
  • 2018年4月26日(木)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2018年4月27日(金)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2018年5月9日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2018年5月11日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年5月12日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年5月16日(水)東京都 NHK ホール
  • 2018年5月17日(木)東京都 NHK ホール
  • 2018年5月25日(金)広島県 上野学園ホール
  • 2018年5月27日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール
椎名林檎(シイナリンゴ)
1978年生まれ、福岡県出身。1998年5月にシングル「幸福論」でメジャーデビュー。1999年に発表した1stアルバム「無罪モラトリアム」が170万枚、2000年リリースの2ndアルバム「勝訴ストリップ」が250万枚を超えるセールスを記録し、トップアーティストとしての地位を確立する。2004~2012年に東京事変のメンバーとしても活躍したほか、2007年公開の映画「さくらん」では音楽監督を務めるなど多角的に活躍。2013年11月にデビュー15周年を記念してコラボレーションベストアルバム「浮き名」とライブベストアルバム「蜜月抄」を、2014年5月にはセルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」を発表する。11月には椎名林檎名義では約5年半ぶりのオリジナルアルバム「日出処」を、2015年8月には15枚目のシングル「長く短い祭 / 神様、仏様」をリリース。10月からはソロ名義としては12年ぶりの全国ホールツアー「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」を開催した。2016年8月にはリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーにて演出 / 音楽監督を担当。2017年1月からスタートしたTBS系ドラマ「カルテット」では、キャストの松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平が歌う主題歌「おとなの掟」を制作し大きな話題を集める。4月には椎名林檎とトータス松本名義の楽曲「目抜き通り」を発表した。5月には全国ホールツアー「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」の映像がBlu-rayおよびDVD化。2017年12月、セルフカバーアルバム第2弾「逆輸入 ~航空局~」が発売された。