関取花|推し曲そろえて決意のメジャーデビューへ

毒を笑いに変えた5曲目、ファンに決意誓った6曲目

──「カメラを止めろ!」は毒を笑いの方向に振った曲だと先ほど言っていましたが、料理の写真を撮ってSNSに上げたい彼女と、不粋なことしないで味わおうぜと言う彼氏のどちらかに寄りすぎず、シーンそのものをひとコマ漫画みたいに戯画化してありますね。花さん自身は花より団子派っぽいですけど……。

完全に団子派です(笑)。どっちかに寄っちゃうと意味が強くなりすぎるので、笑いで終われるように意識しました。今までは時代に寄り添いすぎる言葉やテーマは選ばないようにしてきたんですよ。でも今回、スマホとは言ってないけど「アップだけさせて」とかは言ってるし、曲名もそうですよね。そっちに振り切れたのは、メジャーデビューの後押しもあるし、テレビのお仕事を通して、みんなの共通言語はなんなのか、何がわかりやすいのかということを常に考えながらやっていくほうがいいなと思ったからなんです。とがった部分をいつ、どこで、どれくらい出したらいいか、そのバランスを学びました。あと、これを書きながらすごく考えたのは、また“ひがみソングの女王”としてバラエティ番組に呼ばれたとして、この曲だったらゲストとか観覧の方を巻き込んでライブみたいなことができるんじゃないかなって。ライブに持ってきちゃえばこっちの土俵だから。

──「嫁に行きます」は解説不要、お客さんへのメッセージですね。

曲間も少し空けてあるし、ボーナストラックぐらいの気持ちですね。クリックも聴かずにピアノとチェロと3人で「せーの」で録りました。「今までありがとうございました。行ってきます!」じゃなくて、私には帰る場所があると確信できたからこそ、次に行こうと思えたってことを伝えたいんです。これからは愛だけではやっていけないと思うんですよ。ビジネスだから、セールスが悪かったら切られるかもしれない。でも、もしそうなっても途方に暮れたり悲観したりせずにいられる自信があるし、逆にもしブレイクしても絶対に天狗にはならない自信もある。それは今まで、何者でもない私を見つけてくれて、かわいがってくれて、応援してくれた皆さんがいるからなんです。その人たちに「あのときから応援しててよかった」と思ってもらえるようになりたいですね。

目指すはお茶の間進出

──さっき「全部タイミングで判断する」と言っていましたけど、よかったんじゃないですか? メジャーデビューのタイミング。

そう思います。逆に今しかなかったなと。

──去年の「朝」のインタビュー(参照:関取花「朝」インタビュー)で「顔から邪気が抜けた」と言っていましたし。

邪気が抜けつつ、いい意味でまた攻めの姿勢がきてる感じもあるんですよ。今回、ひさびさにボブの髪型にしたんです。それもジャケット撮影の前日に。誰にも気付かれなかったから完全に自己満足なんですけど(笑)。髪はここ最近ずっと伸ばしてたんですね。テレビに出たとき、どうしても毒っぽいことをネタに話す機会が多かったので、少しでも優しく見えるように、悪い印象を与えないようにって。要は守りに入ってたんです。でも突然思い立って、美容師さんに「ボブにしてください」とお願いして、鏡を見たときに「戻ってきた!」と思ったんですよ。あの頃のとがってる私が。ライブ前にはピアスの穴を開けたい衝動にもすごく駆られましたし(笑)。学生時代に勢いで下北のミスドで友達に開けてもらったときの、あのアッパー感、攻め感みたいのがちょっとなくなってきてて、もし環境が変わらないままだったら、さらに邪気が抜けてどんどん丸くなって、次作ぐらいでもっとルーツミュージックに寄ったことをしてたかもしれないし。それはそれで美しいんですけど、自分の中では20代最後にこの感覚が戻ってきて、タイミングよかったんだなと思いました。

──20代のうちにもう一度ギラッとしておきたかった?

関取花

そうですね。このままいくと、優しくなるんじゃなくてあきらめが入った丸みになっていくんじゃないかな、というのはちょっと感じてました。人付き合いにしても仕事にしても、妥協して割り切って落としどころを見つけるのが上手になっていくじゃないですか。それとはまた違う道を見つけておきたいなっていうのは、ぼんやりとありました。「優しくなりすぎない」というのは、曲作りのテーマとしてもずっとありますね。

──最後に、メジャーデビューしたからこそやってみたいことはありますか?

「紅白歌合戦」にすごく出たいです。私、母方のおじいちゃんおばあちゃんっ子だったんですよ。おばあちゃんが亡くなったときは三日三晩泣いて、立ち直れなくなるくらいでした。おじいちゃんもすぐ亡くなったんですけど、当時、私は中学3年生くらいで、まだ音楽をやってなかったんですね。一人暮らしの部屋におじいちゃんとおばあちゃんの写真を持ってきてて、いまだに毎朝「行ってきます」って言うんですけど、そのたびに「2人は私が歌を歌ってることさえ知らないんだ」と思って。どうやったら天国まで「私、がんばってるよ」って届けられるだろうと考えたら、やっぱり紅白だなと思ったんです。いつか天国で2人に会ったときに「紅白に出たんだよ」と伝えたら喜んでくれるだろうなと想像しました。母の実家は東北の田舎で、ライブハウスは知らないかもしれないけど、紅白は絶対に知ってるじゃないですか。「紅白に出ないと届かないな」といつも思います。出ても届かないかもしれないけど、目標としてはありますね。

──お茶の間進出って、つまりおばあちゃんたちの生活圏に入るということですもんね。

あと去年の紅白を見てて、Suchmosとかあいみょんちゃんとか星野源さんとか、ずっとライブをやってきた人たちの強さをテレビで観たときにやっぱり超カッコいいと思って、ミュージシャンとして報われた気になったんですよね。歌い終わって「ありがとうございました! 星野源でした」って、あれライブハウスでライブやってた人じゃないとやらないことですよね。そういう人がお茶の間に入って、日本を代表する人気ミュージシャンになってるのはすごい希望だと思ったので、さらに紅白に出たい気持ちが高まりました。

イベント情報

関取花弾き語りツアー「60分一番勝負2019」(※終了分は割愛)
  • 2019年5月12日(日)岡山県 MO:GLA
  • 2019年5月15日(水)長崎県 長崎市旧香港上海銀行長崎支店記念館
  • 2019年5月16日(木)鹿児島県 Live HEAVEN
  • 2019年5月26日(日)福島県 THE LAST WALTZ
  • 2019年5月30日(木)京都府 someno kyoto
  • 2019年5月31日(金)兵庫県 旧グッゲンハイム邸
  • 2019年6月2日(日)香川県 SUMUS cafe
  • 2019年6月5日(水)静岡県 GARDEN CAFE LIFE TIME
  • 2019年6月8日(土)新潟県 GOLDEN PIGS YELLOW STAGE
関取花ライブハウスツアー「梅雨だくツアー2019」
  • 2019年6月14日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2019年6月15日(土)福岡県 Gate's7
  • 2019年6月28日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2019年7月7日(日)北海道 BESSIE HALL
  • 2019年7月12日(金)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2019年7月13日(土)大阪府 BananaHall
  • 2019年7月18日(木)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE