ナタリー PowerPush - SEKAI NO OWARI

シングル「INORI」で目指した境地

DJとピアノを擁する一方、ドラムとベースは不在、リズムトラックはすべてプログラミングで鳴らすという変則フォーピース編成。スタジオ兼ライブハウス「club EARTH」を自らの本拠地する独自の活動スタイル。そして、高純度のポップスとともに、生命やこの世界の矛盾といったヘビーなテーマを秘めた歌詞を歌い上げる唯一無二の音楽世界。SEKAI NO OWARIは、どこを取っても「バンド」という従来のフォーマットには当てはまらない特殊性を持っている。

全国発売の音源としては、アルバム「EARTH」(2010年4月)、ダブルリードシングル「天使と悪魔 / ファンタジー」(2010年11月)、そして8月17日リリースのトリプルリードシングル「INORI」のみ。そんな状況ながら、鮮烈な世界観を持つ楽曲を通して、各地のロックフェスをはじめライブシーンで熱烈な支持を集め、来る11月22日にはついに日本武道館ワンマン公演を敢行する。結成当初の「club EARTH」時代から、メジャー移籍作となる今回のシングル「INORI」まで、彼らが貫きとおしているものとは何か? ナタリー初登場となる4人に、その核心についてじっくり訊いた。

取材・文 / 高橋智樹

活動方針は「僕らにできることをちゃんとやろう」ということ

──これだけオリジナルの持ち曲が少ない状態で武道館に立つアーティストも珍しいと思うんですが。

4人 (笑)。

──逆に言えば、昨年リリースしたアルバム「EARTH」から武道館に至るまでのスピード感を表してもいるわけで。恐らく、自分たちのスタジオ兼ライブハウス「club EARTH」を作ったときには、「いつかは武道館で」とか考えてなかったと思うんですけど?

藤崎彩織(Piano) 考えてないですねえ。

──そもそも、バンドを始めると同時に「ライブハウスを回る」のではなく「自分たちのライブハウスを作る」という時点で、SEKAI NO OWARIはほかのバンドとは大きく違ってますよね。

深瀬慧(Vo, G) そうですね。そういう場所があったほうがいいなあ、そっちのほうが面白いだろうなあと思っていたので。普通のライブハウスでやって、少しずつお客さんが増えていって、武道館を目指してひた走る……みたいなのは、あんまり自分には向いてないなあと思っていたんですね。何か明確な目標があって、そこに向かって走っていくっていうのが、あんまり面白くないなあと思ったのもありまして……。「誰にもできなかったことをしよう」というより、「僕らにできることをちゃんとやろう」っていうのが結果的に「誰にもできないこと」になった、という。そうやって活動してたら、「武道館でやる?」みたいな話が出てきて。やる場所はどこでもいいんだけど、会場が大きくなるんだったらそれなりに準備をします、と。なので今は、この4人と、アートワークを担当してくれてる俺の友達とかを含めた全員で武道館をプロデュースしていこう、っていう話をしているところですね。

──このバンドのフォーマットや表現のスタイルを守っていくための場所としても、「club EARTH」は機能してきたんでしょうね。

深瀬 そうですね。もちろん、「club EARTH」を作るって言ったときはみんなから反対されたんですけどね。「そんな無意味なことをやるやつは絶対うまくいかない」とか「そういう無駄なエネルギーを使ってるから曲を作るのが遅いんだよ」とか。賛同してくれる人はメンバーと仲間くらいで……。でも、僕らにとって「club EARTH」が重要になっていくことを信じてきて、よかったと思いますね。

3人で作曲ができることを大切にしたかった

──恐らく、いわゆる“バンド幻想”に従って武道館を目指していたら、今頃LOVEさんはドラムにパートチェンジさせられてるんでしょうね。勝手な印象ですけど。

LOVE(DJ) そうですね(笑)。

深瀬 そういうことを考えた時期もありました(笑)。たくさん揉まれていた時期は「やっぱりドラムとベースが……」みたいなこともありましたけど、その辺はみんなで話し合いながら。僕らは「この4人でできることをやっていく」っていう目的を持って活動していく、というのははっきりしていたので。ちなみに中島は、SEKAI NO OWARIが始まるか始まらないか、サナギぐらいの時期にはドラムだったもんね?

中島真一(G) ドラムやってましたね。SEKAI NO OWARIを始めてからも、ドラムとベースを入れるスタイルを試してみたこともあったんですけど……やらないうちから否定するのは好きなことじゃないので。やれる可能性は試した上で、今のスタイルを選んだんです。

深瀬 そこでなかじん(中島)をドラムにしちゃってたら、なかじんが作曲から離れちゃってたと思うんですよね。SEKAI NO OWARIでは、なかじんがアレンジメントも全部やってるし。もちろん、バンドサウンドが好きな人もいるのは知ってたけれども、それよりも3人(深瀬、中島、藤崎)で作曲ができて、なかじんがギターで曲が作れる、っていうことを大切にしたかったので、そっちを優先した感じですね。それが今回のトリプルリードシングルにもつながっているんですけど。

──ライブのステージに生ピアノがあるのも、1つひとつ試行錯誤してきた上での必然なわけですね。

藤崎 はい。だからライブのたびに、男性が5人がかりで、私のピアノを一生懸命運んでくれています(笑)。

ニューシングル「INORI」 / 2011年8月17日発売 / 1260円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89337

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CD収録曲
  1. 花鳥風月
  2. 不死鳥
  3. Never Ending World
SEKAI NO OWARI(せかいのおわり)

深瀬慧(Vo, G)、中島真一(G)、藤崎彩織(Piano)、LOVE(DJ)による4人組バンド。2007年に結成され、その後バンドの拠点としてライブハウス「club EARTH」を作り上げる。メンバー全員がそこで共同生活を営みつつ、ライブを中心に活動を展開。2010年2月にタワーレコード限定シングル「幻の命」を、4月に1stアルバム「EARTH」を、11月にダブルリードシングル「天使と悪魔 / ファンタジー」を立て続けに発表し、音楽シーンから一躍注目を浴びる。同年、各地の夏フェス、イベントに多数出演したほか、年末には東京・渋谷C.C.Lemonホールにてワンマンライブを実施。2011年8月にはトイズファクトリーよりメジャーデビュー作品としてトリプルリードシングル「INORI」をリリースした。また11月には初の日本武道館公演を控えているほか、その直後から約1年振りの全国ツアーを行う。