ナタリー PowerPush - SEKAI NO OWARI

シングル「INORI」で目指した境地

大きいものを倒すときはでっかい針じゃなきゃいけない

──トリプルリードシングル「INORI」の3曲は、3人のソングライターが作詞作曲をそれぞれ対等な形で担当した作品であると同時に、「ポップな楽曲とメロディに、ヘビーだったり尖ってたりする言葉を乗せる」というこれまでの楽曲よりも、もっとスケールの大きなポップミュージックとしての訴求力を持っているような気がしました。

深瀬 前は結構、なんて言うか……トゲのようなちっちゃい針みたいだったと思うんですよね。僕らの曲が持つ“尖った感じ”って。身近な人も刺すことができる針。でも、それじゃ俺たちが行きたいところには行けないと思ったので、周りにいる人たちを傷つけないぐらいでっかい針にしようと(笑)。わかりづらいかもしれないですけど、大きいものを倒すときはでっかい針じゃなきゃいけなくて。で、でっかい針だと、身近にいる人には針先が向かないから、その人たちを傷つけることはないし。もちろん、トゲみたいな部分はなくしちゃいけないと思うし、それが僕らの主張でもあると思うんですけど、今回は針じゃなくて、ものすごく大きな槍みたいになればいいなと思ったんです。なので、そういうところのバランスは、言葉遣いも含めてすごく気を遣いましたね。

──それだけ、SEKAI NO OWARIが向き合うものが大きくなったっていうこと?

深瀬 そうですね。話し合ってわからない人に「なんでわからないんだよ!」って悲痛な叫びをぶつけるだけで終わりたくなかったので。わかってもらうためにはどうしたらいいのか?って考えたかった。それができるのが、今の僕らだと信じているので。

──1曲目は、藤崎さん作詞、深瀬さん作曲の「花鳥風月」。ポップなメロディと裏腹に「何も無くさずにここに居られるかな」と、歌詞の面ではものすごく葛藤してますよね。

藤崎 私たちは今、アートワークをやってる子とかも含めて7人でシェアハウスみたいに一緒に暮らしてるんですけど、その前に「club EARTH」に住んでた時期があって。去年はかなり忙しくて、メンバー同士で会って話してる時間があんまりなかったんですね。……ほかのバンドに比べたら多いとは思うんですけど……。「なかじんが今どんなことに悩んでるか」とか「深瀬が次にどういう作品を出そうとしてるか」とか、それまでは常に知っていることだったのに、離れる時間が多くなったことで、アルバム「EARTH」を作ってた頃よりは少しずつ、本当に少しずつですけど、距離が出てきたと思って。この歌詞はちょうどそういうことを感じてたときに書いた歌詞なんです。……音楽とか、仲間とか、すごく大切なものと距離ができちゃったような気がしてて。で、私、すごく感情的な人間なので、そういう状況に対してキレて。「ふざけんじゃねえ!」とか言いながら(笑)、深瀬にケンカを売ったり。なかじんは黙って見てて。LOVEも……ね?

LOVE 黙ってます。触れないようにしてます(笑)。

藤崎 私、すごく感情的なんですよ。それが自分のいい部分でもあるとは思ってるんですけど……。

深瀬 (笑)。

藤崎 いい部分もあるでしょうが! ありますよ!

深瀬 ええ、ええ(笑)。

藤崎 でも、そのせいで何かを壊してしまうような瞬間もあって。「もっと自分は理論的に生きなきゃいけないんだ」と思って悩んでたんですけど……何年も前からなんです、それは。でも「こうしちゃダメだ、ああしちゃダメだ、自分の感情をここで爆発させちゃダメだ」って自分を制しているうちに、感情ってだんだんなくなっていくものだな、とも思って。このまま行ったら何も感じなくなるんじゃないか?と。愛するために、みんなを大切にするために打ち出した理論なのに、その理論に今度は苦しめられる、っていう。それで結局、「花鳥風月」を書いたあとに「引っ越ししよう!」っていって、新しいところに移ったんです。でも、あのとき感じたことは、「感情的に生きればいい」とか「理論的に生きればいい」とか、どっちかに寄ればいいっていう話じゃなくて。忘れたり思い出したりしながら、ずっと持ち続けていかなきゃいけない気持ちなんだな、と思ってますね。

すごいラブソングを書きたいなと思って

──「不死鳥」は人間とロボットの壮大なラブソングですね。作曲は中島さん、作詞は深瀬さん。

深瀬 すごいラブソングを書きたいなと思ってて。頭の中で映画みたいなものを想像しながら、半年これだけ書いてましたね。昔、アルバム「EARTH」が出る前の夏から10月頃にかけてだったと思いますけど。

──「終わりあるもの」=人間と、「終わりのないもの」=ロボットがいて、それこそ不死鳥すら脇役にするくらいのストーリーが展開されていきます。これは時間かかりますよね、確かに。

深瀬 いやあ、これはもうシナリオみたいな感じなので。設定があって、そこからどういう話があって、最終的な到着地点はどこなのか、っていうのを考えなきゃいけなかったから。曲がいい、悪いじゃなくて、即興でできるものではないので。時間はとにかくかかりましたね。

──そんなストーリーに、この弾むようなメロディのグルーヴ感が合わさってくるのは面白いですよね。

中島 ある種ミスマッチと言いますか、結構ロマンチックな世界観になってるんですよね。2年前に作ってた頃から、後でBメロだけ書き換えたんですけど。メロウな感じを入れたことで、「聴かせる部分」を作れたというか。ラブソングのラブソングたるロマンチックな感じを演出できたとは思うんですよね。

ニューシングル「INORI」 / 2011年8月17日発売 / 1260円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89337

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CD収録曲
  1. 花鳥風月
  2. 不死鳥
  3. Never Ending World
SEKAI NO OWARI(せかいのおわり)

深瀬慧(Vo, G)、中島真一(G)、藤崎彩織(Piano)、LOVE(DJ)による4人組バンド。2007年に結成され、その後バンドの拠点としてライブハウス「club EARTH」を作り上げる。メンバー全員がそこで共同生活を営みつつ、ライブを中心に活動を展開。2010年2月にタワーレコード限定シングル「幻の命」を、4月に1stアルバム「EARTH」を、11月にダブルリードシングル「天使と悪魔 / ファンタジー」を立て続けに発表し、音楽シーンから一躍注目を浴びる。同年、各地の夏フェス、イベントに多数出演したほか、年末には東京・渋谷C.C.Lemonホールにてワンマンライブを実施。2011年8月にはトイズファクトリーよりメジャーデビュー作品としてトリプルリードシングル「INORI」をリリースした。また11月には初の日本武道館公演を控えているほか、その直後から約1年振りの全国ツアーを行う。