ナタリー PowerPush - SEKAI NO OWARI

シングル「INORI」で目指した境地

アーティストとして何かしなくちゃいけないと思った

──そして3曲目の「Never Ending World」。SEKAI NO OWARIでこういうマイナースケール(短音階)のドラマチックな曲って珍しいですよね?

藤崎 マイナースケールは「EARTH」に入ってる「世界平和」っていう曲以外なくて、これが2曲目ですね。これは……3月11日に震災があって、その次の日ぐらいに書いた曲で。震災が起きて、心が冷静ではなく、落ち着かなくて、衝動で書き上げたようなところがあって。どうしてもメジャースケール(長音階)にはならなかったんでしょうね。

──あの大変な状況の中でも、このメロディは形にしておきたかった?

藤崎 そうですね。震災が起きた瞬間に、やっぱり「アーティストとして何かしなくちゃいけない」と思ったんですよ、使命感として。「何かしたい」じゃなくて。自分のいる立場として、何か発言しなきゃいけない、と。自分たちが無事だったら、まず「無事です」ってファンのみんなに言わなきゃいけないとか、「私たちはこういうふうに思ってます」って表明しなきゃいけないとか、そういう使命感をすぐに感じて。その後、メンバー全員で宮城の石巻にボランティアで行って泥を掻いたりもしたんですけど……その前に、震災直後に私ができたことっていうのは、やっぱり曲を書くことで。それを形にしたいなと思いましたね。

深瀬 レコーディングまで、あんまり時間がなかったんですよ。ボランティアに行ったりしてたから、レコーディングのスケジュールをずらしたりして、時間が足りなくなって「やばいよ」っていうことになってたし。だからこそ、思ってることをそのまま吐き出してやろうって。歌詞を書いた時間は実質2日とか3日でしたね。

──「『人』と描いて他人という意味のこの国」というフレーズで震災後の状況を言い切ってるのもすごいし、何よりこの曲で、SEKAI NO OWARIが「Never Ending World」(終わらない世界)を歌う、というのがいいなと思って。

深瀬 タイトルも歌詞の一部だと思ってますね。例えばラジオで「それでは聴いてください。 SEKAI NO OWARIの『Never Ending World』」と響くことで名前のニュアンスが誤解なく伝わるかなと思って。ほぼセルフタイトルのような感じでつけた曲名です。

1曲だけPVを作るくらいなら、もう何も作らない

──深瀬さん、中島さん、藤崎さんがそれぞれ作詞作曲を担当しつつ、ビデオクリップではLOVEさんが堂々主役を張ってるわけですが。

LOVE いつの間にか主役になってたんです(笑)。

藤崎 撮影の日、私たちは朝10時に現場に入ったんですけど、夕方の6時まで何もしなかったんですよ。

深瀬 何かしてたのはこの人(LOVE)だけです。階段を下りたり、テレビを投げたり(笑)。

──(笑)。これは、「1曲ごとのPV」ではなくて、3曲のダイジェストをミックスすることでシングル「INORI」のPVになってるところに大きな意味がある気がしたんですが?

深瀬 ファンの人はさ、フルサイズのPVが別にあると思うよね?

LOVE ないんですよねえ。

藤崎 もう、どれか1曲をリードにして、ほかの2曲を後ろに引っ込める、っていうのがしっくりこなくて。全部、1曲1曲がリード曲だと思って作ったので。1曲だけPVを作るくらいなら、もう何も作らない!ってぐらいのテンションだったので(笑)。どうしても均等に、みんなに観られる機会を作りたかったんです。

深瀬 これが新しいスタートだし、スタートラインでは作詞作曲をする3人が同じでいたいなって気持ちがあったので。ここからどうなっていくのかは今後の展開次第なのかもしれないですけど……最初はみんなフラットに見られるのがいいなあって。

下半期は怒濤のリリースが……くるのかも?

──「この4人でできること」を貫いたがゆえの「INORI」であり、今回のPVであるというのがよくわかりました。改めて、11月の武道館が楽しみになってきました。

深瀬 どうなんですかね?「思ったとおりだ!」と感じるものにはならないと思いますね。僕らはアートワークも含めた世界観を考えてるんで、ライブまでにやれることはやっておきたいなと。

──「ロックバンドの晴れ舞台としての武道館」とは違うものが観れそう?

藤崎 そうですね。そういう感じにしようと思ってます。

──もう次のリリースに向けて曲作りは進んでます?

藤崎 まさに今、レコーディングが……いろいろ忙しくて一旦中断してたんですけど。

中島 上半期にあまりリリースがなかった分、ずっと曲作りというか、貯めてたものがあったので……。

藤崎 それも「録れ!」「録れ!」って言われて、ね?

中島 ええ、ええ(笑)。後半は夏フェスをやりながらレコーディングして、いくつか出していく感じで。下半期は怒濤のリリースが……くるのかも?

藤崎 録れたらですけど。このシングルも、最初「6月ぐらいまでに録って」って言われたのに、結局……ね?(笑)

深瀬 その前は「5月」って言われてたもんね。

マネージャー 4月だよ(笑)。

深瀬 4カ月押しな感じなので。

藤崎 なので、「下半期に怒濤のリリース」って言って、来年の上半期ぐらいまでずれ込むぐらいな感じですね、今までの経験から言うと(笑)。

SEKAI NO OWARI 『INORI』 MV

ニューシングル「INORI」 / 2011年8月17日発売 / 1260円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89337

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CD収録曲
  1. 花鳥風月
  2. 不死鳥
  3. Never Ending World
SEKAI NO OWARI(せかいのおわり)

深瀬慧(Vo, G)、中島真一(G)、藤崎彩織(Piano)、LOVE(DJ)による4人組バンド。2007年に結成され、その後バンドの拠点としてライブハウス「club EARTH」を作り上げる。メンバー全員がそこで共同生活を営みつつ、ライブを中心に活動を展開。2010年2月にタワーレコード限定シングル「幻の命」を、4月に1stアルバム「EARTH」を、11月にダブルリードシングル「天使と悪魔 / ファンタジー」を立て続けに発表し、音楽シーンから一躍注目を浴びる。同年、各地の夏フェス、イベントに多数出演したほか、年末には東京・渋谷C.C.Lemonホールにてワンマンライブを実施。2011年8月にはトイズファクトリーよりメジャーデビュー作品としてトリプルリードシングル「INORI」をリリースした。また11月には初の日本武道館公演を控えているほか、その直後から約1年振りの全国ツアーを行う。