King Gnu|激動の中でつかんだ自分たちのスタンスと未来 ニューアルバムに刻んだ新章の幕開け

King Gnuが3枚目のアルバム「CEREMONY」を完成させた。

激動の状況の中で、彼らはどんなことを感じ、何を考えてきたのか。そして、この先の未来に何を思い描いているのか。メンバー4人に制作の裏側にあった思いを赤裸々に語ってもらった。

また特集の後半には綾小路翔(氣志團)、内山拓也、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、Fukase(SEKAI NO OWARI)、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)というKing Gnuと関わりのある著名人による「CEREMONY」に対するコメント、バンドへのメッセージを掲載する。

取材・文 / 柴那典 ライブ写真撮影 / 上飯坂一

King Gnuインタビュー

デカい会場での鳴りを意識した

──新作、素晴らしい1枚だと思います。皆さんとしてはどんなものができあがった感覚ですか?

新井和輝(B) このアルバムの特色として、タイアップ曲の多さが挙げられると思うんです。それに伴って、1曲1曲がクリーンナップ級というか、パワーヒッターな曲がそろったアルバムになった感じです。

勢喜遊(Dr, Sampler) 「全曲、強い」という感じですよね。それで終盤の「壇上」に異質な存在感がある。そういうアルバムです。

井口理(Vo, Key) 「Sympa」もけっこうこってりしてるアルバムだと思うんですけど、今回のは博多とんこつラーメンの細麺が極太麺に変わった、みたいな感じですね(笑)。さらに食べ応えがある。

──おっしゃる通り、タイアップの機会も多かったし、それにすべてフルスイングで応えていったのが2019年のKing Gnuだったと思います。結果として、1曲1曲のキャラがとても強いアルバムになったと思うんですが。常田さんはどうですか?

常田大希(Vo, G) うーん……タイアップもそうですけれど、シングルとして切ってきた曲をアルバムにするところにすごく苦戦した感じがあります。

──アルバムを制作するにあたってのイメージはいつ頃からあったんでしょうか?

常田 去年の1月くらいです。「飛行艇」を作った頃からアルバムを意識するようになった。デカい会場での鳴りというか、そういうものを次の作品のテーマにしようということは決まっていました。

──アルバムはコンセプチュアルな作品ですよね。「CEREMONY」というタイトルで、「開会式」で始まり「閉会式」で終わる。これは最初から思い付いていたアイデアだったんでしょうか?

常田 最初は「OPENING CEREMONY」という名前にしようと思ったり、字面としてはいろいろ迷ったりしていたんですけど、大まかに「こういうようなタイトルを付けて、こういう枠組みで作る」というのは最初から決めてました。

──どういうイメージから考えていったんでしょうか?

常田 1stアルバムの「Tokyo Rendez-Vous」は男の子と女の子が東京でデートしているジャケットで“1対1の出会い”を表現して、次の「Sympa」でシンパを募って。それを経て、ようやく“開会式”をできる状態になった。バンドのストーリー的なところから付けています。

──そうなんですね。バンドのストーリーとしては、ようやくこれが始まりである。

常田 そうです。しんどいです(笑)。

1000の球が来たら全部場外まで飛ばしてやろうぜ

──1年前とはバンドを巡る状況は大きく変わりましたが、その変化について皆さんはどう感じていましたか?

勢喜 うーん、バンドはただガムシャラにやってきただけですけれど、音楽以外に考えることが多くなってきたのはありますね。そんなに注目されていない状態から、「紅白」にまで出るような状況になって。音楽のことだけを考えていればいいはずなんですけど、そういうわけにもいかなくなってきた。

新井 僕も同じですね。目の前にあるものを1つひとつ、持てる限りの力でやっていたらあっという間に1年が経っていた。「白日」を作ってたのが3、4カ月前くらいの感覚なんで。でも、音楽以外に考えることというか、ノイズが入ってきた感じはありますね。基本的にKing Gnuのこの4人は音楽だけやっていたいというスタンスなんです。なんで、そういう面倒くさいことが多い気もしつつ、「それが売れるということだ」と言われれば、それはそうなんですけどという……そういうので気を揉んでいるところですね。

井口 でも、メディアの出方ひとつにしても、音楽、ライブやアルバム制作に対してのことにしても、King Gnuは1000の球が来たら全部場外まで飛ばしてやろうぜという気概でやってきているバンドだから。それは音楽にしても、別のところの仕事にしてもそうで。だから僕はこの1年、激流に揉まれながらも、その中で大きくなれたのかなという気がします。

──King Gnuって、基本的に音楽至上主義の集団であると思うんです。それぞれの出自としても、いろんな音楽の素養を踏まえている。そのうえで、大衆性を持ったポップスに取り組むことを選択肢として選んだところからプロジェクトが始まっているわけですよね。

常田 そうですね。

──そういうことを踏まえて言えば、バンドの現状って、ちゃんと意味のあることを成し遂げてきた結果なんじゃないかと思うんです。そういう実感についてはどうでしょうか?

常田 まあ、このバンドが望んだような形になっていっている実感はあるというくらいの感じですね。それくらい俯瞰して見ているかな。