SCOOBIE DO 15thアルバム「Tough Layer」インタビュー|タフなバンドの無骨なレイヤー (3/3)

バンドは自由な表現の“媒体”である

──2曲目「今日の続きを」、3曲目「その声を」は先ほどのナガイケさんの「アルバムのリード曲を意識して作った曲」というのがよくわかる、SCOOBIE DOの真骨頂という感じがします。ファンにとっては「待ってました」感のあるソウルミュージックというか。

マツキ このあたりは「アルバムを出す頃にはもう声を出してもよくなってないかな」という希望を込めて作っていたんですけど……まだ難しそうですね。

──そうですね。どうしたってライブハウスのあの光景を想像してしまうので。「GEKIJYO」はナガイケさんのスラップベースが際立った曲ですが、同時に歌謡曲としての強度もある曲だなと感じました。ガレージバンドが到達した歌謡曲みたいな。

マツキ ええ。ちょっと後藤次利さんあたりを意識しながら作った曲です(笑)。ついつい口ずさんじゃうメロディというのは意識していたので、確かに歌謡曲と言えるかもしれないですね。これも裏シングルみたいな……裏シングルばっかりみたいなアルバムを作りたいという気持ちもあったので。

マツキタイジロウ(G)

マツキタイジロウ(G)

──SCOOBIE DOのガレージロックバンド出身という側面が強く感じられるのはこの「GEKIJYO」や、アルバム後半の「成し遂げざる者のブルース」「正解Funk」といったあたりですね。「ブルース」と銘打ってブルースを、「Funk」と銘打ってファンクをやっている直球さはちょっと新鮮な感じもありますが。

マツキ 一切裏切らない(笑)。

──「成し遂げざる者のブルース」はタイトル見ただけで絶対にいい曲に決まってる!と思いましたけど、最高でしたね。タイトルが浮かんだ段階で大成功と言えるんじゃないでしょうか。

マツキ どうなんだろう(笑)。バンドっぽいものを作りたいなと思っていて……もちろんいつもバンドっぽいものを作ってるんですけど、レコーディングでしっかり作り込まないと成立しないものではなく、スタジオでバーンと合わせた時点で興奮するものがある曲。こういうブルースロックは僕らがルーツに持っている部分で、実際今でもガレージバンドだと思ってますから、ガレージバンドの面目躍如というか。「これ、バンドのCDだぜ」っていうのをこのへんでちゃんとわかってもらっておいたほうがいいかなっていう。ギターソロが最後に延々続く曲っていうのは僕らの曲にもあまりなかったけど、The Rolling Stonesなんか聴いてると、後半は延々ソロを弾いてたりとかリフを刻んでたりとか……それってJ-POPの概念で言うとあり得ないなって思うんですよね。それがやりたいなと。この曲が入ってないとSCOOBIE DOのアルバムじゃないんじゃないかっていう、使命感を感じている1曲ですね。

──つい楽器を持ちたくなる曲というか、直接的に「わ、バンドって面白い」というエンジンをかけられちゃう曲ですね。

マツキ 「正解Funk」は文字通り、ファンクな曲が1曲は入ってないと申し訳ないかなと思って(笑)。“Funk-a-lismo!”を謳っているバンドとして。ただ、今回のアルバムの曲を作っていて、いわゆるジャンルとしてのファンクやロックはもちろんあるけども、そもそも「バンドってフォーマット自体にすべて入ってるよな」という思いもあって。もっと言えば、J-POP、ポップスって言うんですかね。聴いた人がパッと歌いたくなるとか、そういうコーティングはしてあるんだけど、楽曲の根本にはラテンだったりジャズだったり、いろんな要素が入っていたりする。それが歌謡曲ってものだと思うんですけど、バンドは歌謡曲を自由にデフォルメして表現している媒体なんじゃないかと。いろんなジャンルの音楽があって、それを自分たちの演奏と声でどうやってアンサンブルにして表現するか。それがバンドってものの一番の強みというか醍醐味というか、ほかの音楽と勝負していくうえでの一番の武器なんじゃないかなって。そんなことを考えながら曲作りをしていて……「正解Funk」は誰が聴いてもファンクだけど、ジャンルを表現したいんじゃなくて、ジャンルを飛び越えたところにある“間口”って言うんですかね。誰の耳にもストンと飛び込めるのは、このバンドアンサンブルがあるからこそできる部分じゃないかと思っていて。媒体としてのSCOOBIE DOの強みというのを、前よりも感じるようになりました。

──言語化しにくい話ですけど……すごくわかります。無骨なバンドアンサンブルとしての熟練を感じたのは、そういう部分なのかなと。

マツキ この4人の音じゃないとこれにはならない、ということなんですよね。そこは27年分の強度が嫌でも増していると思うし、それがアルバムタイトルの「Tough Layer」につながっていくところなんです。27年経ってまだ伸びしろがあるという部分も、我々の強さなんだと思うし。いろんなネタをぶっ込んで4人で鳴らすとどうなるか。それはソロシンガーやヒップホップのアーティスト、アイドルとかにはない、バンドならではの面白みだと思うんですよね。

SCOOBIE DO

SCOOBIE DO

せーのでやれば、バンドは無敵

──「スピード」と「荒野にて」は一連の配信シングルの流れでリリースされた楽曲ですけど、「スピード」にはこの時代ならではのメッセージが込められていますよね。

マツキ まあストレートに「スピードを落とすなよ」ってことですよね。そういうことをバンドが一生懸命伝えようとしているのって、なんかいいなと思うんです。不器用な感じで。

──アルバムのラストを締めくくる「荒野にて」も、こういうメッセージを長年続けてきたSCOOBIE DOが発することの説得力にグッとくるんですよね。言葉選びもすごくシンプルになっている気がして。

マツキ 言葉選びの部分もメロディの話と同じように、今のシュウくんならいろんな表現ができるよなという実感があって。メロディがよく聞こえる言葉、歌いやすい言葉をできるだけ選んで、そこから意味を持たせていくという作り方をした曲が多いですね。

──いろんな面でコヤマさんの伸びしろがこのアルバムに大きな影響をもたらしているんですね。

コヤマ ついにピッチの概念を理解したコヤマシュウ。恥ずかしくて見出しに使えねえよ(笑)。

──(笑)。長年活動を続けて、年齢を重ねれば、例えば以前よりも声が出なくなったりとか、“枯れ”を強みにした存在、その人たちがいて演奏してくれるだけでOKみたいな研ぎ澄まされ方もあると思うんですよ。でも今日の話を聞くと、SCOOBIE DOはなんならここからさらに複雑にいろんな要素を盛り込んだ、洗練とは真逆の進み方をしても面白いんじゃないかという可能性を感じました。

マツキ いろんな可能性があると思いますね。まだまだこれから、新人バンドのような気持ちでやっていきます。

──メジャーデビュー20周年を迎えて、改めてこうしていきたいという目標はありますか? まずはアルバムを携えてのツアーが目前に控えていますが……ここから先、また以前のような光景が戻ってくるのか、コロナ禍が収束したとて以前通りの「元に戻った」状態とはまた違ったものになるのか、先を見越すことが本当に難しくなっていますよね。

マツキ いやもう「わかんない」としか言いようがないですよね。また未知のウイルスが発生してこうならないとも限らないし。そういう不安定なものなんだと思いながらやっていくしかないですけど……少なくともライブができる状況が続くといいなと思いますね。ライブをやってないと本当にダメだな自分たちは、と思います。

ナガイケ うん。僕らは演奏するのが好きみたいですね。それは確実にわかったことで。

MOBY 前にも結成25周年というのがあって、いろいろ計画していたこともあったんですけどね。まあそれもコロナでなくなっちゃって……「やることに意義がある!」と言ってドーンと大きな会場でライブをやる、というのは僕らの場合は違うと思うので、あんまりいい言い方じゃないですけど「身の丈に合った」動き方をするのが、我々にできる最大限によい活動なんだろうと思います。

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)

コヤマ やっぱね、元の通りには戻んないと思うんですよ。それは今までだってずっとそうだったから。「あの頃に戻ってやり直す」なんてことは今までもやってこなかったし、俺はそのほうが好きですね。だけどまあ、とにかくライブはやっていきたいですね。4人でせーのでやったら、やっぱバンドって無敵なんですよ。SCOOBIE DOって。それを何度もやりたいなと。それだけですね。

マツキ そうだね。バンドは演奏してなんぼ、というのがよりリアルに感じられるようになって。僕らは音楽をやっているというよりバンドをやっているので、これがソロアーティストとかだったらまた違うのかもしれないけど……とりあえずはライブをいっぱいやれるようになったらいいなという、今のところはそれだけです。

SCOOBIE DO

SCOOBIE DO

公演情報

SCOOBIE DO「Funk-a-lismo! vol.13」

  • 2022年10月1日(土)千葉県 千葉LOOK
  • 2022年10月15日(土)香川県 DIME
  • 2022年10月16日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2022年11月3日(木・祝)福岡県 LIVE HOUSE CB
  • 2022年11月5日(土)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2022年11月6日(日)滋賀県 B-FLAT
  • 2022年11月12日(土)栃木県 宇都宮HELLO DOLLY
  • 2022年11月13日(日)長野県 LIVE HOUSE J
  • 2022年11月19日(土)神奈川県 小田原姿麗人
  • 2022年11月26日(土)秋田県 Club SWINDLE
  • 2022年11月27日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2022年12月3日(土)千葉県 新松戸FIREBIRD
  • 2022年12月24日(土)愛知県 CLUB UPSET
  • 2022年12月25日(日)大阪府 Shangri-La
  • 2023年1月14日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年1月15日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年1月21日(土)京都府 磔磔
  • 2023年1月22日(日)京都府 磔磔
  • 2023年1月29日(日)東京都 LIQUIDROOM

プロフィール

SCOOBIE DO(スクービードゥー)

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にKOGA Recordsから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' Our Scoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2019年には、2006年まで在籍していたレーベル・ビクターエンタテインメントと合同で8月に14thアルバム「Have A Nice Day!」をリリース。メジャーデビュー20周年を迎えた2022年8月には、同じくビクターと合同で通算15枚目のオリジナルアルバム「Tough Layer」を発表した。