SCOOBIE DO 15thアルバム「Tough Layer」インタビュー|タフなバンドの無骨なレイヤー (2/3)

20年後の「Get Up」を

──結成27年、そしてメジャーデビュー20周年のタイミングで出るアルバム、というのは意識しましたか?

マツキ ビクターさんと話している中で、僕らのメジャーデビュー曲「Get Up」から20年後、あれから20年経った今の僕らの「Get Up」をぜひ作ってほしいという話をいただいて。それはちょっと燃えましたね(笑)。好き勝手に考えていたアルバムの方向性がある程度見えた段階でその話をいただいたので、後半はそのテーマに合わせて曲を作ることを意識しながら、あと何曲かを作っていった感じですね。力強く突き抜けるような感覚があるのは、その後半に作った曲の力が大きいかなと思います。

──本人たちが強く意識していなくても、20周年となると周りの人たちの目もあって否が応でも意識しますよね。例えば最近だと過去のミュージックビデオが一気に公開されたりもしましたが、過去の自分たちを見てどういう気持ちになりますか?

マツキ いや、もう「老けたなー」という感想でいいんじゃないかな(笑)。「この頃は若かったな、今と全然違うな」でもいいんですけど、続けていないとそのギャップって楽しめないんですよ。

コヤマ そうだね。

マツキ 今の自分たちとあの頃の自分たちの距離感がすごく心地いいというか。愛おしささえ感じるというかね。

2002年、シングル「Get Up」リリース時のSCOOBIE DO。

2002年、シングル「Get Up」リリース時のSCOOBIE DO。

2022年、アルバム「Tough Layer」リリース時のSCOOBIE DO。

2022年、アルバム「Tough Layer」リリース時のSCOOBIE DO。

──アニバーサリーアルバムと言える作品ですが、すごく無骨な、ドラムがあって、ベースがあって、ギターがあって、歌がある。という、SCOOBIE DOの骨の部分がゴリッと見えるアルバムですね。その無骨さがより伝わるミックスになっているようにも感じました。

マツキ そうですね。何曲かはうっすらとキーボードの音を入れていますけど、基本的にはスリーピースのバンドサウンドを押していこう、というのは決めていました。「無骨」というのはこのアルバムにとってすごくいい褒め言葉ですね。

──無骨なんだけど、この音数で、こういうアンサンブルにすればこれだけの彩りが出るという、熟練のようなものをすごく感じるアルバムでもあります。シンプルな音で聴きやすいミックスだからこそ、それがダイレクトに伝わるというか。そんな中でも、1曲目の「明日は手の中に」は、まぎれもなくSCOOBIE DOの曲、SCOOBIE DOの音なんだけど、なぜかすべてが新しく感じる、不思議な新鮮さがありました。

マツキ 「明日は手の中に」がまさにさっき言った「20年後の『Get Up』」を意識した曲で。「Get Up」ってどういう曲だったかなと振り返ると、僕の中ではひと言、無防備なポジティブさというか。それがすべてを突破したんだと思うんです。世の中にはいろんなカテゴライズの枠があって……例えばロックだとか、シティポップだとか。そんなどの枠からも気持ちよくはみ出しているような。それがSCOOBIE DOの魅力なんじゃないかと思ったんです。「Get Up」のフォーマットを踏襲していくというよりは、いろんな枠を飛び越える勢いのあるもの。その結果SCOOBIE DOの勢いが色濃く出たものになれば、「20年後の『Get Up』」というオーダーに対しては自分の中では合格だなと思っていて。

──そうですね。単に音楽的に「Get Upアフター」になっているのではなく、気概の部分での共通項が多いというか。メロディの細かい動きやコードの展開はむしろこれまでのSCOOBIE DOにはなかった気がするし、不思議なキャッチーさがありますよね。

マツキ 僕の中ではシングル曲を作るつもりで作った曲なので、キャッチーで派手なサビを入れるのは絶対条件でした。それをバンドでドンと鳴らせばSCOOBIE DO節になるだろうという確信もあって。それが伝わっているとしたらうれしいです。

──「明日は手の中に」は皆さんにも今までと違うという感覚はありました?

MOBY 僕はありましたね。デモを聴いた段階では、コンペに出すつもりの曲かなと思ったくらいで。ジャニーズのどなたかに歌ってもらったら映えそうだなと(笑)。最初は「Get Up」のその後として出す曲がこれでいいのかな?という感じではあったんだけど、バンドでアレンジを固めて、レコーディングをしてようやく「なるほど」と納得できました。

ナガイケ 頭の3曲がアルバムのリード曲を意識して作った曲なんですよ。新しいコード進行やキャッチーなサビのメロディというのがデモの段階からすごく伝わってきたので、率直な印象としては「よく作ってくるなあ」という(笑)。「明日は手の中に」が今までになかった曲だというのは僕も思いました。じゃあほかに誰かがやってそうかというと、そういうこともない。ベースラインを追っていくと「ああ、こういうふうになってんだ」「次はこっちに行くんだ」みたいな面白さがあって。それはこのアルバム全体に言えることなんですけど、そういう新鮮さがありましたね。

ナガイケジョー(B)

ナガイケジョー(B)

コヤマ リーダーから「20年後の『Get Up』というお題で4曲作ったから聴いてよ」ってデモが届いたんですよ。中でも「明日は手の中に」は一番速くて元気のある曲だった。俺もすごく「新しいな」と思ったな。今までの俺たちになかった曲だし、「この曲やりたいな」とすぐに思いましたね。次のリハのときにリード曲を決めようということになって、俺は「この曲がいい」と伝えた記憶があります。

──皆さん一様に新しさを感じたんですね。

コヤマ そうですね。さっきのリーダーの話を聞いて思い出したけど、「20年後の『Get Up』」と言われて本当に「Get Up」みたいな曲ができてきたら、どうしようかなと思ってたんですね。

ナガイケ キメのリズムを同じにしたりね。

コヤマ そうそう。パロってみましたみたいな。それは作ろうと思えばすぐに作れるはずだし、歌詞の内容も「Get Up」をなぞったものにもできたはずだから。きっとそれもみんなで演奏すればよくなるのかもしれないし。でも、そんな曲だったらどういうテンションで挑めばいいのか、ちょっと戸惑っていたと思うんです。でも全然そうじゃなかったというところが、なんか、カッコよかったんですよね。

SCOOBIE DO

SCOOBIE DO

27年目の伸びしろ

──作詞作曲したリーダー自身は、「明日は手の中に」に今までになかった要素を感じるという意見に何か心当たりはあるんですか?

マツキ このコロナ禍で1つよかったこととして……僕が偉そうに言うのもあれだけど、シュウくんの歌がすごく上手になったんですよ。曲を作っていて、メロディの冒険が今まで以上にできるようになった。昔だったら「ここからここに上がると、歌いにくいかな」とか、気になるところはどうしても避けて作っていたんだけど、今回はそこらへんを全然気にせず、自分が思うままにメロディを考えて。「どうかな」と言って渡すと、ちゃんと練習してきてくれて、ちゃんと歌いこなしてくれるんです。今まで以上に歌を乗りこなしているっていうんですかね。一昨年、去年とレコーディングをするたびに、メロディの乗りこなしが上手になっているなと。それで「これはいける!」と思ったんですよ。実はそれが大きいんですよね。もっとポップな曲を作ってみようと思うようになった。だから僕1人の実力とかでは全然なくて。バンドがバンドとして、すごく成長しているんだと思います。

──……そういう話、直接メンバー間では話さないですよね?

コヤマ うん。今さら「うまくなったよね」なんて話はしないですよね(笑)。でも今の話を聞いて思ったのは……俺の中でドレミファソラシドみたいな概念ができてきたのがここ最近なんですよ。

マツキ 音階の概念が(笑)。

コヤマ 俺らはモッズバンド、ガレージロックの出身だから。いまだに俺はSCOOBIE DOのことをガレージロックバンドだと思っているんですよ。でもタイちゃんはそういう枠をとっくに飛び越えていて。ああ、いろんなメロディを作ってるんだ……ってことに最近気付いたんでしょうね(笑)。初めて音階があることを知ったというか。

コヤマシュウ(Vo)

コヤマシュウ(Vo)

──ずっと無調だと思って歌っていた(笑)。

コヤマ そうそう(笑)。強いか弱いか、もうちょっと上とか。みんなが言ってるドレミファソラシドの概念を俺がつかんだんだと思うんですよね。今の話を聞くと。そうなると面白いのが「ああ、このへんはタイちゃんこだわって作ってんだな」とか「こう行ってこう行くと、すげえいいな」とか、より幸せな気持ちを味わえるわけですよ。とは言ってもね、ずっと「俺らがやっているのは“歌モノ”である」という意識はあって。

MOBY それはシュウくん、ギターを弾き始めたのも大きいんじゃないの?

コヤマ どうだろうなあ……。新しい曲ができてきて、それを歌ったときに、ドレミファソラシドがあるとなんか楽しいな、幸せだなっていう。自分がわかっていれば、そこから外れるのもアリだし。

SCOOBIE DO

SCOOBIE DO

──ここにきてすごい発見ですね。でもそうすると、同じメロウな曲調でもいろんなやりようが出てくるというか。

マツキ そうなんですよね。今まで回避してきたところもためらいなくいける。エンジニアの中村宗一郎さんもシュウくんをすごく褒めていて。

コヤマ ホント?(笑)

マツキ 今のレコーディングって、どんなに上手な人も最後はピッチシフトをかけて修正することがあるらしいんですよ。でもシュウくんの歌録りは、歌を太く録れるからという理由でマイクを2本立てて、2本同時に鳴らしているんですね。ただ、その録り方だとピッチの修正ができないんです。だから修正しなくてもいいように、メロディをしっかり正確に歌う必要があって。ピッチの概念が昔よりしっかり出てきたんだろうね。

コヤマ 27年目にしてピッチの概念が生まれた(笑)。これからすげえことになるんじゃないかなっていう。

マツキ まあまあ来ちゃったけど(笑)。

コヤマ 伸びしろですね、なんて言って。あと27年くらい経てばなんか起こるんじゃないかな。