SCOOBIE DOがニューシングル「ensemble」をリリースした。2006年にメンバー4人だけで自主レーベル・CHAMP RECORDSを立ち上げ、翌2007年からコンスタントにアルバムを制作し続けてきた彼らだが、シングルを発表するのはメジャー在籍時以来、実に13年ぶり。SCOOBIE DOは今このタイミングでなぜシングルを制作したのか。
彼らの大先輩であるORIGINAL LOVE・田島貴男もまた、セルフプロデュースでアルバムを中心とした楽曲制作を長年続けてきたが、昨年6月におよそ10年ぶりのシングル「ゴールデンタイム」を発表した。また田島は今年1月、自身が企画するライブイベント「Love Jam vol.2」でSCOOBIE DOをゲストに招いている。これまで直接的な接点は少なかった2組だが、ソウルやファンクを独自に解釈しポップに表現するセンスや、ショーマンシップあふれるパフォーマンスで観客の心を鷲づかみにするライブスタイルなど共通点も多い。今回の特集ではそんな2組の対談をセッティングし、シングルの制作意図や音楽論についてたっぷりと語り合ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / cherry chill will.
目の前のお客さんを楽しませる熟練のテクニック
──今年の1月に行われたORIGINAL LOVE主催のライブイベント「Love Jam vol.2」はSCOOBIE DOとthe band apartがゲストでした。これまでこういう形での競演はなかったですよね?
田島貴男 はい。ずっと遠巻きに存在は気に留めてましたけどね。
マツキタイジロウ(G) 僕らは一方的にファンだっただけで(笑)。
──「Love Jam」は田島さんより若い世代のアーティストが毎回招かれていますけど、若手をフックアップするというよりは、田島さんが純粋に「一緒にやってみたいから」という動機でゲストを選んでいる印象です。実際はどういう基準で選んでるんですか?
田島 いや、その通りですね。スクービーに声をかけたのは……やりやすそうだったから。
SCOOBIE DO アハハハハ!(笑)
コヤマシュウ(Vo) 間違いない。うれしいですよ。
マツキ 光栄だし、感無量ですよ。僕らも「Root & United」という対バンイベントをずっとやっていて、実はこれまでも何度か田島さんにオファーしたことがあったんです。そのときはたまたまタイミングが合わなかったんだけど、逆に誘っていただいて。田島さんには胸を借りる気持ちでいながらも、イベントとしては盛り上げたいし、少しでも力になれたらと思って全力でがんばりました。
田島 彼らのライブを観てよくわかったけど、自分らで企画して、目の前のお客さんを楽しませることをずっと続けてきたスクービーの熟練のテクニックはすごいね。そういうのはね、やっぱ観ていてうれしいですよ。メディアを通じてアーティストのイメージを作って楽しませる芸もあるけど、スクービーの場合は目の前のお客さんを喜ばせる技を積んできた人たちだから。テレビに出ないで寄席で笑わせ続けてる落語家みたいなさ。
オカモト“MOBY”タクヤ(Dr) あはは(笑)。うれしいね。
田島 僕も同じようなところがあるからさ。ライブを通して共感するところは多かったです。
「チンピラ版オリラブに出会ってしまった」
──コヤマさんはバンドのフロントマンとして、先輩田島さんをどのように見ていますか?
コヤマ 俺がORIGINAL LOVEを知ったのは「月の裏で会いましょう」(1991年11月発売のシングル)で。兄貴が大好きだったんですよ。バンドブームが下火になって、渋谷系がガーッと盛り上がってたときに兄貴から「お前、これからはこういうの聴かなきゃダメだぞ」って渡された中に、フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴ、ORIGINAL LOVEがあって。
田島 その3組の中では僕が一番スクービーに近いかもね(笑)。
コヤマ そんで「月の裏で会いましょう」を聴いたときに「すげえカッコいい、日本語でソウルを歌うバンドが現れた」と感動したんです。そのあと「サンシャイン ロマンス」(1993年5月)を自分で買いました。当時の田島さんのイメージは、シュッとした、クールな人という印象だったんですよ。まだライブを観たことがなかったので、きっと汗1つかかずにライブやってんだろうなと。でも、のちにライブを観たらものすごく弾けていて。さっき俺らに言ってくれたことをそのまま思ったというか、目の前のお客さんを全力で楽しませる、「今日一番楽しいことをここでやりますよ」みたいなエネルギーに、いい意味で裏切られた。たぶん、俺たちがレコードでしか知らない60'sのソウルマンたちは、きっとこんなライブをやってたんだろうなっていう。その場のソウルと人間力でみんなを夢中にさせる感じ。明るいパワーっつうんですかね。太陽のようにみんなを照らすフィジカルなパワーがあって。
田島 昔からそういう気持ちでやってたんだけど、若い頃はまだ身に付いてなかったかもしれない。レコーディングも楽しいけど、やっぱライブで培われたものが自分の芸が音楽をやるうえで一番重要だと思ってるし、スクービーにもそれは感じますね。
──SCOOBIE DOはデビュー当時「チンピラなオリラブ」と呼ばれたそうですが。
コヤマ 僕らがインディーズで最初のアルバム「DOIN' OUR SCOOBIE」(1999年11月発売)を出したときにインタビューしてくれた方が序文で「チンピラ版オリラブに出会ってしまった」と書いていたんです。当時はよくほかにも「○○に似てる」と書かれてたんだけど、どれもピンとこなくて。誰とも違う音楽をやってるつもりだったから。でも「チンピラ版オリラブ」っつうのはグッときましたね。ORIGINAL LOVEとチンピラってパブリックイメージではほど遠いはずなんだけど、その2つが合わさることで本質を見抜かれたっつうか。
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バカで楽しい現場主義
- SCOOBIE DO「ensemble」
- 2017年4月12日発売 / CHAMP RECORDS
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通常盤 [CD]
1200円 / HICC-4408
- 収録曲
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- ensemble
- Funki"S"t Drummer
- Last Night
- SCOOBIE DO シングル「ensemble」発売記念ツアー「ファンキ“S”ト・アンサンブル」
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- 「CHAMP RECORDS 10周年記念」Funk-a-lismo! ベッシースペシャル
2017年5月3日(水・祝)北海道 BESSIE HALL - 「CHAMP RECORDS 10周年記念」Funk-a-lismo! 函館スペシャル
2017年5月5日(金・祝)北海道 函館club COCOA - Funk-a-lismo! 宇都宮スペシャル
2017年5月7日(日)栃木県 LIVEHOUSE KENT - Funk-a-lismo! 梅田スペシャル
2017年5月25日(木)大阪府 Shangri-La - Funk-a-lismo! 名古屋スペシャル
2017年5月27日(土)愛知県 池下CLUB UPSET - Funk-a-lismo! 小田原スペシャル
2017年5月28日(日)神奈川県 小田原姿麗人 - Funk-a-lismo! キネマスペシャル
2017年7月1日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
- 「CHAMP RECORDS 10周年記念」Funk-a-lismo! ベッシースペシャル
- SCOOBIE DO(スクービードゥー)
- 1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にKOGA Recordsから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' Our Scoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。バンド結成20周年を迎えた2015年は4月にベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」、2016年1月にはCHAMP RECORDS通算8枚目となるオリジナルアルバム「アウェイ」を発表。2017年4月にはおよそ13年ぶりとなるニューシングル「ensemble」をリリースした。
- ORIGINAL LOVE(オリジナルラブ)
- 1985年結成のバンド・THE RED CURTAINを経て、1987年よりORIGINAL LOVEとしての活動を開始。1991年7月にアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」でメジャーデビューを果たす。同年11月発売の2ndシングル「月の裏で会いましょう」がフジテレビ系ドラマ「BANANACHIPS LOVE」の主題歌に採用され全国的に注目を集めた。その後も「接吻 kiss」「朝日のあたる道」などのシングルでヒットを記録し、1994年6月発売の4thアルバム「風の歌を聴け」はオリコン週間アルバムランキング1位を獲得。以降もコンスタントに作品を発表し、柔軟な音楽性を発揮している。近年はバンドスタイルでのライブのみならず、田島貴男1人での「ひとりソウルツアー」や「弾き語りライブ」も恒例化している。2016年6月にはメジャーデビュー25周年記念シングル「ゴールデンタイム」をリリースした。