SCOOBIE DO×田島貴男(ORIGINAL LOVE)|バカで楽しい現場主義

バカで楽しい現場主義

──ソウルミュージックが持っているスマートさと油っこさ、その両方を日本語のポップス、ロックにして表現しているという意味で、ORIGINAL LOVEとSCOOBIE DOは共通する部分も多いのかなと思います。

田島 彼らはブリティッシュロックを経由してソウルに行ったのかなと思うんだけど、そういうところも僕と似ている。僕の場合はパンク / ニューウェイブだったけど、そこからオールディーズ、60'sに行って、黒人音楽に流れたというルーツがあって。

──スクービーには「ロックとファンクの最高沸点“Funk-a-lismo”」というキャッチコピーがありますが、皆さんが考えるロック、ロックンロール、ソウル、ファンクとはどういうものですか?

田島 あれだよね、スクービーも単にソウルマンというよりも、ロックンローラーがやってるソウルだと思うんだよね。僕もたぶんそうだと思う。久保田利伸さんがやるソウルやファンクとは全然違うもん。

MOBY あー、なるほど。

田島 久保田さんはきっと音楽を始めたときからずっと本当に黒人音楽が好きでしょ。そこをひたすら追求してる。

──ロック、ロックンロールに対するスクービーの見解は?

コヤマ ムキになっちゃうもの、みたいなことかなあ。

田島 それだな、うんうん。

コヤマシュウ(Vo)

コヤマ 目の前にいる人に向けて音楽を鳴らそうというとき、それまでのしきたりやルールはどうでもよくなっちゃって、そのときの気持ち、ソウルのおもむくままに突っ込んでいくのがロックンロールじゃないかなと思っていて。そういうことじゃないですかね。

田島 キース・リチャーズ(The Rolling Stones)が「ロックはあるけどロールはどうした」ってうまいこと言ってたけど、あれもつまり「目の前のお客さんを踊らせてんのか?」って言い方だったよね。「ロックンロールは生き様」とか言うけど、現場。

マツキ フフフフ(笑)。

田島 チャック・ベリーが昔、初めてテレビショーに出たとき、白人のお客さんばかりを前にやったんですよ。5曲ぐらいやっていて、最初はお客さんが全然おとなしかったんだけど、最後のほうになるとこんな(踊りながら)でさ。いかにも白人の紳士なお父さんみたいな人が思わず踊り出すの。それがロックンロールなんだと思う。

──ではファンクは?

田島 ファンクは文字通りFUN、楽しいというか、バカになる音楽。最近はそう思ってる。タガが外れる音楽というか。ファンクやってる人ってみんなバカじゃない?

SCOOBIE DO アハハハハ!(笑)

コヤマ イッちゃってますよね、いい意味で(笑)。

田島 ブーツィー・コリンズとかさ、バカだなーと思ったでしょ。ブーツィーとかジョージ・クリントンのライブを観て、一番に思ったのはそれだよね。なかなかステージに出てこないとかさ(笑)。

ナガイケジョー(B) イントロが長すぎるとか(笑)。

田島 本当のバカじゃないんだよ。バカだとあんな音楽できない。

──そんなロックとソウルの最高沸点を目指してるのがSCOOBIE DO。

コヤマ バカで楽しい現場主義(笑)。今の話を総合して直訳するとね。

シングルは気合い

──根っこの部分で共通項が多いORIGINAL LOVEとSCOOBIE DOですけど、そんな2組が同じようなタイミングでシングルCDを出したのが興味深いんですよね。どちらもここ数年はアルバムベースで作品を出し続けてきたのに、なぜシングルなんだろうかと。

マツキ ああそうか、確かに。僕らは4人で立ち上げたCHAMP RECORDSから作品を出し始めてこの4月で満10年なんですけど、作品を出してライブをやるというサイクルの中で、シングルを出す流れがなかったんです。でも「今俺らがシングルを出したらどうなるかな、俺らがシングル出すのも面白いかな」という。きっかけはそれだけですね。だから「シングルを出す」という前提で曲作りを始めたんですよ。

──アルバム用に書き溜めておいた曲ではなく、シングルありきで曲を書こうと。スクービーは今回13年ぶりのシングルで、ORIGINAL LOVEは昨年6月発売のデビュー25周年シングル「ゴールデンタイム」(参照:ORIGINAL LOVE「ゴールデンタイム」インタビュー)が、一般流通のCDシングルとして実に10年ぶりでした。

田島 シングルは気合いだね。意気込み見せるぞみたいな。スクービーが自分たちのレーベルでシングルを作ったのは偉いと思う。気骨があるところを見せてくれたと思いますよ。

──今は単純に新曲を1曲届けるだけなら配信という手段があるので、シングルを出す意味合いも変わってきているかもしれません。皆さんは自身の作品に限らず、シングルというものにどんな印象を持っていますか?

ナガイケジョー(B)

ナガイケ 案外「裏切ってくるもの」という側面もありますよね。シングルだからこういうのを出してきたんだな、みたいな。僕らも今回はそういう作品になったかなと思います。

田島 そうだね! シングルっぽかったもん。「シングルを作る」というコンセプトがあったから、こういう曲が書けたんじゃないかな。

ナガイケ うん、結果的にそうですね。

田島 ポップでしたよ、すごく。最初聴いたときは誰かなと思ったもん(笑)。SuchmosのYONCEくんがやってるラジオを聴いていて「なんかよさそうな新人がいるな。誰だろう?」と思ったらスクービーでさ。「えっマジ!? こんなことになってんだ!」って。

コヤマ こんなことになってんだ(笑)。やったー。今まで言われた中で一番うれしい言葉ですよ。

──スクービーがシングルを出すと聞いて、例えば13年前の「パレード」みたいな軽快な曲を想像していたので、「ensemble」を聴いたときは驚きました。「こっちで来たか!」と。

マツキ 「こっちで来たか」「こう来たか」と思われたいというのは、僕らも最初から考えてましたね。それを出すことで、僕らのイメージの伝わり方も今までと違うものになればいいし、僕らの歩みとしてもここから違う幅が出きたら、25年、30年と続けていくうえでいいことだなと思って。

プロデューサー・マツキが開けた新しい扉

──ではここから少し具体的に、「ensemble」の制作過程を教えてください。

マツキ 僕らは4人だけでやってるから、自分たちで次のリリースを決めないことには、予定が立てられないんですよ。ライブバンドなので、ツアーのスケジュールを組まなきゃいけない。これまではずっとアルバムを出してツアーを回って……というサイクルで動いてきて、1年に1枚アルバムを出すのも大事なんだけど、それがルーティンワーク化してないかという自問自答があって。莫大なセールスを上げなくても活動は可能なんだけども、ルーティンにならず、なおかつ自分たちに新しい風を巻き起こせるものは何かと考えたとき、まずは「プロデューサーを立てようか」という話が挙がったんです。プロデューサーを立ててシングルを切る、というのはCHAMP RECORDSでやってこなかったから。そのアイデアから、僕がまずプロデューサーとして立って「SCOOBIE DOがこんな曲をこういうふうに演奏したらどうだろう」という考え方で作ってみたんです。

田島 なるほど。ちょっと発想を変えてみたんだ。

マツキ はい。自分の中ではまず「SCOOBIE DOがまだ開けていない扉を開ける」というのが第1にありました。2017年に音を鳴らすうえで……さっき田島さんが言ってくれた「新人バンドの音」みたいな、そういう音楽をスクービーがやったら面白いだろうなと。

──表題曲「ensemble」は比較的ゆっくりしたテンポでメロウに聴かせる楽曲ですけど、このテンポ感、BPMはどのような判断で?

マツキ デモの段階からまったくあの通りのテンポ感なんですよ。いつもはギターと鼻歌程度のデモだけど、今回は全部のパートをしっかり作って、あとからそのまま生楽器に差し替えるような感じで。

田島 へえー。

マツキ アルバムのときはある程度全体的なバリエーションを考えながら作っていくけど、シングルの場合は1曲まず面白い曲ができればいいから。1曲に対する集中力は、アルバムを作るときよりも高かったかもしれないですね。

SCOOBIE DO、田島貴男。

田島 しんどいよね、シングル作るの。

マツキ しんどいですね。より時間がかかるし、正解がわからないんですよ。アルバムだと全体を通してSCOOBIE DOの色が伝わればいいけど、シングルだと1曲で全部出さなきゃいけないんで。

ナガイケ デモを聴いた段階で、その気合いは伝わってきましたよ。

──女性コーラスを入れるというアイデアもデモ段階から?

マツキ 入れたいと思ってました。

田島 あのコーラスはどなたですか?

マツキ 佐々木詩織さんという、山下達郎さんのバックバンドでコーラスをやっていた佐々木久美さんの娘さんです。まだ20代前半の若い方なんですけど、すごくセンスがよくて。コーラスアレンジも彼女が考えてくれたんですよ。

田島 歌詞の雰囲気、ちょっと変わった?

マツキ 表現の仕方はちょっと変わったかもしれないですね。僕はいつも「落とし前付けすぎ」と言われることが多くて……。

田島 アッハッハ!(笑)

マツキ この歌は何について歌っているとハッキリわかる曲が多い。わかりやすいほうがいいと基本的には思っているんですけど、「ensemble」はちょっと抽象的なんですよ。すべてを言い切ってしまわない……それは僕にとってアダルトな表現なんですけど、この曲はそっちのほうが合うと思ったんです。

SCOOBIE DO「ensemble」
2017年4月12日発売 / CHAMP RECORDS
SCOOBIE DO「ensemble」初回限定盤

通常盤 [CD]
1200円 / HICC-4408

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収録曲
  1. ensemble
  2. Funki"S"t Drummer
  3. Last Night
SCOOBIE DO シングル「ensemble」発売記念ツアー「ファンキ“S”ト・アンサンブル」
  • 「CHAMP RECORDS 10周年記念」Funk-a-lismo! ベッシースペシャル
    2017年5月3日(水・祝)北海道 BESSIE HALL
  • 「CHAMP RECORDS 10周年記念」Funk-a-lismo! 函館スペシャル
    2017年5月5日(金・祝)北海道 函館club COCOA
  • Funk-a-lismo! 宇都宮スペシャル
    2017年5月7日(日)栃木県 LIVEHOUSE KENT
  • Funk-a-lismo! 梅田スペシャル
    2017年5月25日(木)大阪府 Shangri-La
  • Funk-a-lismo! 名古屋スペシャル
    2017年5月27日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
  • Funk-a-lismo! 小田原スペシャル
    2017年5月28日(日)神奈川県 小田原姿麗人
  • Funk-a-lismo! キネマスペシャル
    2017年7月1日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
SCOOBIE DO(スクービードゥー)
SCOOBIE DO
1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にKOGA Recordsから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' Our Scoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。バンド結成20周年を迎えた2015年は4月にベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」、2016年1月にはCHAMP RECORDS通算8枚目となるオリジナルアルバム「アウェイ」を発表。2017年4月にはおよそ13年ぶりとなるニューシングル「ensemble」をリリースした。
ORIGINAL LOVE(オリジナルラブ)
ORIGINAL LOVE
1985年結成のバンド・THE RED CURTAINを経て、1987年よりORIGINAL LOVEとしての活動を開始。1991年7月にアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」でメジャーデビューを果たす。同年11月発売の2ndシングル「月の裏で会いましょう」がフジテレビ系ドラマ「BANANACHIPS LOVE」の主題歌に採用され全国的に注目を集めた。その後も「接吻 kiss」「朝日のあたる道」などのシングルでヒットを記録し、1994年6月発売の4thアルバム「風の歌を聴け」はオリコン週間アルバムランキング1位を獲得。以降もコンスタントに作品を発表し、柔軟な音楽性を発揮している。近年はバンドスタイルでのライブのみならず、田島貴男1人での「ひとりソウルツアー」や「弾き語りライブ」も恒例化している。2016年6月にはメジャーデビュー25周年記念シングル「ゴールデンタイム」をリリースした。