Saucy Dogが新作ミニアルバム「ブルーピリオド」を10月2日にリリースした。
前作「サラダデイズ」から約1年4カ月ぶりのCDリリースとなる本作には、すでに配信シングルとしてリリースされている「雀ノ欠伸」や「ゴーストバスター」など夢や自分らしさがテーマの7曲に、せとゆいか(Dr, Cho)歌唱のボーナストラック「煙草とコーヒー」を加えた全8曲を収録。また「ブルーピリオド」というタイトルには、石原いわく“原点を忘れずにSaucy Dogらしく、でも少しずつ変わっていく”という意味が込められており、バンドの未来への意志が感じられる1作となっている。
音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューを実施。初の野外ワンマン「YAON de WAOOON」やツーマンツアー「One-Step Tour」を振り返りつつ、「ブルーピリオド」に込めた思いを語ってもらった。
取材・文 / 酒匂里奈 撮影 / 後藤壮太郎
野音がバンドマンの聖地と呼ばれる理由
──まず今年の4月に大阪・大阪城音楽堂と東京・日比谷野外大音楽堂で行われた「YAON de WAOOON」(参照:Saucy Dog、雨の中で幸せ噛み締めた日比谷野音初ワンマン)についてお話を聞かせてください。
石原慎也(Vo, G) 大阪公演と東京公演はまったく違う空気感でしたね。
──大阪は皆さんの地元でもありますよね。
石原 はい。だから大阪城音楽堂にはずっと出たいと思っていました。「KANSAI LOVERS」(2008年から毎年大阪城音楽堂で開催されているライブイベント)などでステージに立ったことは何度かあるんです。でもワンマンをやったことはなくて。初めての野外ワンマンを大阪城音楽堂でできたのはすごくうれしかったです。(秋澤)和貴と(せと)ゆいかのご両親も来てたし、特別な1日だったよね。
秋澤和貴(B) うん。いろいろ面白かったね。
石原 東京公演は雨が降っていて寒かったし客席のことも気になっていたんですけど、俺は雨や風の音がまるで演出のように聞こえていて、天気も楽しみながら演奏していました。
秋澤 野音はバンドマンの聖地、というか自分の大好きなバンドが野音でライブしている映像を観て「俺もバンドがんばろう」と思っていた場所です。そんな舞台でワンマンができるということが決まったときは、「憧れの人たちと一緒の場所でワンマンできるんや」と感動しました。しかも大阪と東京両方だし。野音公演をやることで、昔の自分と同じように「バンドがんばろう」という気持ちになってくれたり、もしかしたら「バンド始めたい」と思ってくれたりするお客さんもいるかもしれない。そう思うと感慨深いです。あとさっき慎也が言ったように野外ならではの自然の演出も素敵だったし、何回でもやりたいですね。
せとゆいか(Dr, Cho) 私は野音がバンドマンの聖地と呼ばれる理由が、ライブを終えてからわかったような気がしていて。もちろん野音ワンマンが決まったときはうれしかったし、当日は緊張もしていたしウキウキもしていました。でも終わってからのほうが「あの日は本当に特別な日やったんやな」と感じました。Saucy Dogの活動の中で、印象に残り続けるライブになったと思います。
──会場にシャボン玉が舞う演出などは皆さんが考えられたんですか?
石原 そうですね。メンバーで「演出どうする?」と話し合って、その中で「シャボン玉を飛ばしてみるのいいんじゃない?」という意見が出て。
秋澤 きれいだったんですけど、大阪公演のときは風が強かったからめちゃくちゃ自分たちのほうにシャボン玉が飛んできて(笑)。
せと あとシャボン玉を出すための機械の「ガーッ」って音がうるさかったらしくて……。
秋澤 「ブオーン!」って音してたね。なので東京公演のときは気持ちシャボン玉の量を少なめにしたんですけど、雨と混ざってステージの床がすごく滑りました。
石原 滑ったね。
秋澤 でもギリこけなかったです!
──そんな苦労をされていたんですね(笑)。客席から見ていると、本当にきれいな光景でした。また「YAON de WAOOON」では、タイトルは未定でしたが「ブルーピリオド」に収録されている「Tough」や「月に住む君」も初披露されていました。
石原 緊張したな。大丈夫だったかな?
秋澤 まあ、うん(笑)。
石原 録音した音源を聴き直してもよかったなと思うし、野音で初披露できてうれしかったです。
秋澤 特に「月に住む君」は野音の雰囲気にめっちゃ合ってたよね。
バンドの個性は自分たちで見つける
──「YAON de WAOOON」のあとには、7月に東名阪でSaucy Dog企画の対バンツアー「One-Step Tour」もありました。04 Limited Sazabys(参照: Saucy Dog、“先輩”フォーリミに噛み付く!? 対バンツアー「One-Step Tour」大阪公演)、クリープハイプ(参照:Saucy Dogが憧れのクリープハイプと対バン、それぞれのカバーにも沸いた名古屋の夜)、SUPER BEAVER(参照:Saucy Dog 、SUPER BEAVERと“バチバチ”に火花散らした対バンツアー東京公演)という先輩バンドと対バンライブを行われて多くの刺激を受けたのではないかと思いますが、吸収したことや感じたことはありますか?
秋澤 3バンドとも本当に息が長いバンドで。もちろん技術面で学んだ部分もありますが、メンバー同士の付き合いが長く関係性が深くて、演奏を含めてお互いのことをわかってるんだろうなと感じましたね。あとはもう対バンというよりは“自分たちのワンマンライブ”みたいな気迫を感じたというか、皆さん僕らに容赦ないライブをしていました(笑)。今まで僕たちが対バンに出るときはほかのバンドのライブを観て「あ、こういうふうに寄せようかな」みたいに考えていたんですけど、「寄せなくていいんや」と思いましたね。自分たちらしさとはなんなのかを考えさせられたというか。
せと バンドの個性は周りのバンドを真似するんじゃなくて自分たちで見つけるべき、っていうのは私も思ったな。あとは努力してきたバンドのすごみをめちゃくちゃ感じて、そこはもっと私たちも培っていくべきやなと思いました。
石原 ライブが始まる前はすごい3バンドを呼んだなと思っていて、実際にライブをしてみてもやっぱりすごかったです。和貴も言っていたように真似をしたり寄せたりはしたくはないんですけど、後輩バンドとして吸収できるところはしっかり吸収して、それをちゃんと自分たちなりに嚙み砕いて次に生かせた対バンツアーでした。
──ちなみに上京直後はほとんど外出しないとおっしゃっていた石原さんですが、「One-Step Tour」の最終公演ではライブ前に渋谷(龍太 / SUPER BEAVER)さんと飲みに行かれたと明かされていましたね。
石原 そうなんです。
──上京されて2年経って、環境や心境の変化などはありましたか?
石原 飲みに行くようになったのは、単純に引っ越したということが大きいかもしれません。ご飯とかも誘ってもらったら行くし、こっちから誘わせてもらうこともあるし。あと今年は、フェスのときとかに先輩や周りの人にちゃんと挨拶をすることを心がけていて。去年はなぜかあまりできていなかったんですよね。今年はがんばっています。周りの人と仲良くなりたいけど、自分から話しかけなければ仲良くなれるものもなれないと気付いたからというか。今年は要だなと思ったので、積極的になっていますね。
──要というのはバンド活動においての要ということですか?
石原 そうですね。今年というか、今年度かな。バンドにおいて来年の3月ぐらいまでがけっこう重要になってくるんじゃないかなって。まあ来年度になったらなったで、来年度も重要になると思うんですけど(笑)。
──私生活や人付き合いなどの変化もありつつ、バンドとしてもこの1年で動員数などの大きな変化があったかと思います。そのあたりについてはどう感じていますか?
せと 実はそのときそのときは、自分たちはあまり実感が湧いていなくて。周りの人に言ってもらって、「そっか、すごいことなんか」と思う感じですね。この前単独ホールツアー「はじめてのホールツアー」の情報解禁をしたときに(参照:Saucy Dog、はじめてのホールツアー)、自分のTwitterアカウントで引用リツイートをしようと思って文章を考えていたんです。そのときにふと、今年の頭にホールツアーの話題が出たときには、「いやいやいや! え、大丈夫?」と言っていたことを思い出して。当時は不安100%みたいな感じやったんです。でもそこから9カ月くらい経って、もちろんまだ不安はありますけど、「絶対無理」とはまったく思わへんし、それより「楽しみやな」と思えていて。ちゃんと前に進んでるんやなって実感しました。いっぱいライブをしたから自信がついたというよりは、メンバー1人ひとりが成長したからだと思います。
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「ブルーピリオド」に込めた自分らしさ、未来、夢