ちょっとワルになった気持ちで
──続いて、naotyu-さんが手がけた「It's Show Time!」についても話を聞かせてください。
naotyu- meganeさん派、けんいち派の2大派閥を意識してるわけではないんですけど、第三者目線で見たときにどちらも四つ打ちの曲が多くて。逆に生ドラムっぽい曲が少なかったので、そういうタイプの曲を作ってみようと思ったんです。あと、ちょびっとだけワルな感じを足してみました。ワルと言ってもかわいいもので、10代の子が門限破ったくらいの感じで、その門限も22時くらいのやんちゃ具合なんですけど、そういう要素も今までの曲にはなかったので、ファンがドキドキしてくれたら面白いかなと意識しました。
小町 最初に曲を聴いたとき、シャ乱Qさんの「ズルい女」が思い浮びました。ライブではちょっとワルになった気持ちでパフォーマンスしています。
naotyu- 小町さんのその感じをファンの方たちは喜んでくれるだろうなと思ったんです(笑)。
夏芽 naotyu-さんの曲は「真夏の匂い」や「Step by Step」みたいにキラキラした曲調のイメージが強くて、今回もそういうアイドルらしい曲を勝手に想像していたんですよ。でも「It's Show Time!」を聴いたら、音の使い方が今までの曲と違ってびっくりしました。あと、ダンスにも初めてジャズっぽい要素が入っていて面白いんです。
藤井 振り付けをいつもと違う新しい先生に担当してもらったんですよ。「Magic All Night」というライブでいつも盛り上がる曲があって、この曲がきっかけで応援してくれている人が多いんですけど、「It's Show Time!」も同じようになるのかなと期待しています。
──ファンを増やす入り口になりそうな曲ですよね。
ちば オープニング感というか、開けたイメージがありますね。
naotyu- Aメロ、Bメロがかなりトリッキーな展開なので、サビはなるべくシンプルにしていこうと意識しました。振り付けの先生については僕のほうからは要望は出してないんですけど、ジャズに初挑戦するということで、それに合わせて新しい先生を付けてくれました。そういう考えの制作チームはすごく面白いですね。
リミックスバージョンは頭の中がこんがらがる
──今作にはカップリング曲として既発曲のリミックス音源「ワンダーランド(Kenichi Chiba Remix)」「Sleeping Beauty(Kenichi Chiba Remix)」も収録されます。けんいちさんはこれまでもサンダルテレフォンのリミックスを多く手がけていますが、毎回どういう狙いで曲を再構築しているんでしょうか?
ちば 作家3名全員に共通していることは、メロディがよくて、覚えやすく歌いやすいところだと思うんです。なのでリミックスに関しては、すごくいい素材がある中で、原曲ファンに怒られない仕上がりにすることを意識してます(笑)。今回は2曲ともmeganeさんの楽曲で、特に「ワンダーランド」は僕も原曲が大好きなんですよ。ポップスシーンの中でのリミックスって、クラブユースに振り切ってDJが使いやすいようにしてる作品が多いと思うんですけど、このグループのリミックスについてはそこはまったく考えずに作ってるんです。テンポは絶対変えないし、ライブでパフォーマンスするときの尺も同じ。要はリミックス曲もライブの戦力にしようということをプロデューサーさんと話しているんです。今回もテンポは維持しつつ、リミックスするというよりリアレンジするくらいの気持ちでやりました。
──リミックス音源をライブでやる前提で作るのは珍しいですね。グループのもう1つの顔を見せるための手段にしているという。
夏芽 私の中でもリミックスの概念が変わりました。
naotyu- リミックスバージョンをこんなにライブのセットリストに入れてるグループは珍しいと思います。
──しかも、オリジナルとリミックスバージョン両方を同じライブの中で披露することもありますし。
ちば ここのライブ会場だとこっちのバージョンのほうが似合いそう、みたいな会話をプロデューサーさんとできるのも楽しいです。その選択肢があるのはすごくいいことだと思ってます。
──今、サンダルテレフォンの現場にはいい音楽を求めるリスナーが集まって来ていて、どんどん面白いことになってますよね。メンバーの皆さんはライブの中で1つの曲を2バージョン披露することにもう慣れましたか?
小町 (無言で何回も首を横に振る)
──あ、違うんですか(笑)。
小町 バージョンによってダンスが全然違うので、めっちゃ間違えるんです。頭の中がこんがらがって。
ちば 尺をあまり変えない結果として、混乱が生じてしまったんです(笑)。
藤井 踊っているときに、「あれっ、どっちだっけ?」ってわからなくなるときがあります(笑)。
夏芽 ライブが楽しくなっちゃってると、間違えてることに気付かないまま最後まで踊っちゃうんです。
西脇 毎回誰かしら間違えるよね。ほかのメンバーを横目で見ながら「あれ、間違えてる」って(笑)。
1人ひとりの個性の確立が必要
──結成3年目ともなると、新人グループという認識が周りからなくなり、シーンの中で“中堅”として見られることが多くなると思います。「1回はライブを観てみようかな」という人も少なくなってきた3年目くらいの時期がアイドルグループとしての勝負どころだと個人的に感じているんですが、さらにファンを拡大していくには何が必要だと思いますか?
夏芽 サンダルテレフォンは曲とともに成長しているグループだと思っているんですけど、もう1つ上に行くためにはメンバー1人ひとりの個性の確立が必要だと感じていて。お客さんが私たちを見たときの「このメンバーはこういう子」という認識をはっきりさせていかなきゃいけないと思うんです。私はメンバーのことをよく知っているから、それぞれに違う個性があることがわかるんですけど、それを第三者に伝えていくのは難しくて。私自身もそれが課題ですね。
藤井 私は以前、“楽曲派”というくくりがそんなに好きじゃなくて、「私たちメンバーのことを見て」と思っていたんですけど、最近はその考えがちょっと変わってきたんです。かなりのスピードで新曲を出していて、楽曲派と評価されている中、スキル的にもそこに追い付いていかなきゃいけないなって。
ちば 作家としては楽曲派リスナーに好かれるグループに関われることはうれしいんですが、あくまで歌っているのはメンバーで。4人に合うメロディを組んだあとに、やりたいジャンルのサウンドを付けているんですよ。クラブミュージックを主に作ってきた僕としては珍しいことなんですが、このグループでは先にメロディを作っていて。いい曲を作り続けつつ、メンバーの個性がより目立ってきたら、それに合う曲を乗せていきたいですね。今はこの年齢の4人に合う曲、みたいに考えて書いてますが、もっとオーダーメイドして作っていけたら魅力がどんどん増していくと思います。今ある曲もどんどん成長していて、盤にない魅力が現場にはあるので、ぜひとも多くの方にライブを観に来ていただけたらうれしいです。
naotyu- サンダルテレフォンは向上心のあるメンバーばかりで。「It's Show Time!」の初披露は定期公演だったんですけど、本人たちは「あまりうまくいかなかった」と言っていたんですよ。ライブ後に全員納得いかない、悔しそうな顔をしていて。でも、結成2周年ライブではよりうまくパフォーマンスできていて、それは向上心があるからこそなのでホントに素晴らしいと思います。皆さんとても真面目なので、さらにはっちゃけたらより個性が見えて面白いかもしれないですね。親心みたいな感情として、このまま変わらないでいてほしいという気持ちもあるんですけど(笑)。
ちば メンバー側からもやりたいことがどんどん出てくるようになって、制作陣と対等になっていったらもっと面白くなると思います。
──結成2周年ライブはすごく充実したライブだと感じましたが、メンバー自身の手応えはどうだったんですか?
夏芽 私は1stワンマンで自分のパフォーマンスにあまり納得ができなかったんですが、2周年ライブは納得いくものにできたと感じています。会場の規模が大きくなってお客さんが増えたことも実感できて、自分の満足度は高いです。課題だった曲つなぎのMCもうまくできて。
西脇 MCを事前にガチガチに作りこんだわけではなく、そのときの感情の赴くままに楽しくできました。
──パフォーマンス以上にMCや進行に課題を抱えていたんですね(笑)。
夏芽 でも、パフォーマンス面でもしっかりいいものを見せられたという思いがあります。
naotyu- もっと大きなところでライブをやりたいよね。今はイベントに出たときに、場所によっては会場が狭いなと思うときもあって。それは最初には感じていなかったことなので、どんどん上を目指してもらいたいです。
ライブ情報
- サンダルテレフォン 1st TOUR 2021 - "TINY TURN"
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- 2021年7月1日(木) 東京都 TSUTAYA O-WEST
- 2021年7月10日(土) 大阪府 BananaHall
- 2021年7月11日(日) 愛知県 RAD HALL