SANDAL TELEPHONE「Lightsurfer / レビュープレビュー」特集|新体制の見どころは振付師・いどみんが手がけるダンスにあり

SANDAL TELEPHONEが5月10日に両A面作品「Lightsurfer / レビュープレビュー」をリリースする。

2021年末に西脇朱音が卒業し、3人体制になるとともにグループ名をサンダルテレフォンから英語表記に変更したSANDAL TELEPHONE。新体制初の作品である「Lightsurfer / レビュープレビュー」には、ドラムンベースのサウンドで“フューチャー×ノルタルジック”な世界観を表現した「Lightsurfer」、ファンキーなシティポップ風のトラックに叙情的な歌詞を乗せた「レビュープレビュー」が収録される。音楽的にこれまでと一歩違うところに踏み込んだ作品となった本作だが、新たな挑戦は音だけでなく、ステージ上のダンスにもある。音楽ナタリーではメンバー3人のほか、多くのアイドルグループの振り付けを手がけ、SANDAL TELEPHONEにも初期から関わっているコレオグラファー・いどみんも交えてインタビューを実施。振り付けの観点から新体制と新曲の注目ポイントを語ってもらった。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 斎藤大嗣

打ち解けるまで2年かかった

──いどみん先生は初期の頃からずっとSANDAL TELEPHONEの振り付けを担当してきたんですか?

夏芽ナツ 私とまいがいどみん先生と初めて会ったのは、SANDAL TELEPHONE結成よりも前ですね。前身グループで活動していたとき。そこからのお付き合いです。

いどみん 2019年にサンダルテレフォンとしての活動がスタートしたあと、「TOKYO IDOL FESTIVAL」で初めて新グループとしてのライブを観たんです。そのときは違う先生が振り付けを担当されていて、セトリも前のグループの曲と新しい曲が混在した状態でしたが、こういう方向にいくんだなと、なんとなく未来が見えて。そのあと2ndシングルの「Magic All Night」から振り付けを頼まれるようになりました。

左から藤井エリカ、小町まい、いどみん、夏芽ナツ。

左から藤井エリカ、小町まい、いどみん、夏芽ナツ。

──メンバーから見て、いどみん先生の第一印象はどうでした?

夏芽 今でこそいどみん先生は有名ですが、そのときは先生のことを知らなかったし、調べても名前が出てこなかったんですよ。「どんな人なんだろう……」って。

いどみん 当時は名古屋に住んでいて、ご当地アイドルの振り付けだけやっていたんです。

夏芽 私たちのために東京に来るということで、かなりドキドキしていました。最初は怖い人というイメージがあって……。

いどみん 背が高いし、黙ってると圧があるからね。

夏芽 でも、振りを付けてくださるときはノリノリで。ダンスを教えるときのクセが強すぎて驚きました(笑)。

いどみん 最初のレッスンのときに私もナツもモーニング娘。さんのTシャツを着ていて、そこで打ち解けました。それに対し、まいちゃんとはあまりしゃべらなかったね。警戒されました。

小町まい 私、そのとき尖ってたんで(笑)。

いどみん 打ち解けるまで2年くらいかかったね(笑)。

夏芽 ようやく最近ね。

小町 でも、当時からいどみん先生にはレッスン中に「できなーい」とか言いやすかったんです。私も最初は怖く感じていたんですけど、優しい人だということはすぐにわかりました。

いどみん まいちゃんはソツがないというか、当たり障りないことをしていれば怒られないと思ってそうな印象でした。

小町 やだなー(笑)。

いどみん 変わったこともしたくないし、個性的なこともしたくないみたいな。まいちゃんが「できなーい」と言ったら、私も「寝て起きればできるようになってるよ」とか返して、お互いにその場しのぎでレッスンをしてる感じでした(笑)。

──藤井さんはこのグループでアイドル活動をスタートさせたわけですが、いどみん先生には最初どんな印象を抱きましたか?

藤井エリカ 会う前に「どんな人なんだろう」と思って全部のSNSを調べました(笑)。レッスンが始まったら私ができないことが多すぎて、集中攻撃されて泣きそうになりました。

いどみん 2人(夏芽と小町)がすでに器用にできている中、エリは右手と右足が同時に出ちゃったり、ターンを1周回れなかったりして。同期(西脇朱音)も入った当初はポンコツだったので、お互いに励まして支え合ってましたね。そのときは今のような負けず嫌いなオーラはそんなになくて。ここ半年くらいで、負けん気の強さが出てきました。

藤井 昔の動画を観返すと、ポンコツすぎて嫌になります(笑)。振り入れが1日で終わらなかったら、次の日にはできるようにしようと今は思うんですけど、以前はできなくて当たり前のように思ってました。そういうところは変わったかなって。

いどみん 「だって初心者だもん。アイドルになって振りを覚えるの、まだ3曲目なんです」みたいな姿勢だった中、だんだんと完璧に覚えてくるようになって。それで次のステップの指導をできるようになったし、負けず嫌いな性格に助けられていますね。

SANDAL TELEPHONE

SANDAL TELEPHONE

「無理です!」「いやできて!」

──グループ全体に対しても同じように変化や成長を感じますか?

いどみん 変わったと思います。メンバーも私もお互いに変わったと感じてるんじゃないかな。最初は楽しい音楽をやって、楽しく毎日が過ぎていけばいいやみたいな空気だったんですけど、ここ半年ぐらいでお互いに顔つきが変わってきて。それまで「なんでできないの!」と思っても楽しければいいやという気持ちで練習して、ライブ後も「あそこ間違えてたよ」と話すだけだったのが、それで済まなくなってきたんです。お互いに感情をぶつけ合うようになってきました。「なんでできないの!」って言葉に出して言うし、3人も「そんな難しいのできません!」「歌いながらは無理です!」とか、ちゃんと感情的なぶつけ方をしてくれるようになったんですよ。私はさらに「知らない! こっちは歌わないもん」とか言っちゃうんですけど(笑)。後ろ向きで2メートルくらい移動しなきゃいけないという無茶な振りに挑戦してもらおうとしたときも「無理です!」「いやできて!」という応酬があって。

──メンバーがスキルの面でも成長してきたから、今まで無茶だったことを要求できるようになったんでしょうか?

いどみん 自分に厳しくなった分、相手にも対しても厳しくなった感じですかね。

藤井 ライブのあとにみんなでステージの動画を観るときも、以前は「(動きが)そろってないねー」くらいの感想で終わってたんですけど、今は反省して次からちゃんとそろうように意識するようになりました。前がヤバかったのかな(笑)。

夏芽 3人体制になったことも大きいですね。4人よりも3人のほうがほかのメンバーと動きを比べられやすいから、みんなで踊りをそろえようという意識が芽生えたんだと思います。フロアからステージを見たときの印象も4人と3人ではすごく変わるんですよ。お客さんから迫力がなくなったと思われたくない、というのはメンバーみんなの悩みでした。

小町 最近はTwitterでも「ダンスがレベルアップした」という声を見かけるのでうれしいです。

夏芽 以前も、ライブを初めて観てくれた人が「すごい」と言ってくださることはあったんですけど、今みたいにファンの方たちが私たちの成長を褒めてくれることはあまりなかったんです。

SANDAL TELEPHONE

SANDAL TELEPHONE

──前回のインタビューでも「今のサンダルテレフォンのよさを残しつつ、グループの雰囲気をガラッと変えたいなと考えているんです。『いい意味で変わったな』『3人体制もいいな』と感じてもらえるようになりたいです」と話していましたね(参照:サンダルテレフォン「REMIXES」特集)。

夏芽 4人時代は悪く言うとバラバラで、よく言うとみんながそれぞれ全力でダンスして表現するという感じでした。それを3人で続けていたらどうしても迫力が減っちゃうので、みんなの動きをきれいにまとめるという新しい形に挑戦したんです。今までのやり方で削るところは削って、残すところは残すっていう。

いどみん 4人だとステージ上で散っても大きな隙間はできなかったんですけど、3人だと全力で踊ってもちょっとスカスカに見えちゃうんですよ。そのバラバラ感が嫌だったので、バミリを狭くして。例えるなら角を切り落として磨いてきれいな形にして、1つの塊としての見え方にこだわるような。メンバー3人にもその気持ち、考えが伝わって、みんなで作り上げたのが「レビュープレビュー」なんです。