RYUCHELLが新曲「Diversity Guys!」を10月17日に配信リリースした。
「Diversity Guys!」は前作「Link」に続いてヒャダインこと前山田健一を作詞・作曲に迎えたナンバー。RYUCHELLは1980~90年代のユーロビートを彷彿とさせる楽曲に乗せて、「他人の目など気にしないでありのままのなりたい自分を表現し、新しい人生を切り開いてほしい」とポップに楽しく訴えている。
アメリカ・ロサンゼルス発のコスメブランドNYX Professional Makeupと組んだ、ド派手メイクを施したジャケット写真とYouTubeで公開されたハロウィンメイク動画も話題の本作。アーティスト・RYUCHELLの看板を背負いつつ、プロデューサーとしてプロジェクト全体を主導する彼に、新曲に込めた思いを聞いた。
取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 映美
「多様性」とか言っても、みんな「えー?」ってなっちゃう
──前作「Link」のときはヒャダインさんに宛てた作文を書いてRYUCHELLさんの考えを歌詞に反映させてもらったそうですが、今回はどんなふうに?(参照:RYUCHELL「Link」インタビュー)
今回も作文をお渡ししました。「Link」のとき、最初は子供のことを歌うって本当にありなのかな……って思ってたんですけど、作ってくださった曲がめちゃくちゃよくて。ヒャダインさんって僕を自分で見えていない世界に連れて行ってくれる人だなって印象がありました。だからまたご一緒できたのはすごくうれしいです。今回はぺこりんや子供のことから、いつも応援してくれるみんなに伝えたいことに視点を戻した感じですね。「自分らしく、自分の色で生きてほしい」っていう核の部分はデビュー曲(「Hands up!! If you're Awesome」)と同じですけど、今回はダイバーシティ、多様性というテーマなので、「性別や年齢や肩書きにとらわれずになりたい自分になろう」っていうところにポイントを置いて歌いました。
──9月に東京・渋谷区で開催された複合カンファレンスイベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2018」にて「渋谷ダイバーシティエバンジェリスト」に任命されましたが、そのことと関係があるんでしょうか。
昔は「男の子なんだから」、今は「パパになったんだから」みたいに、僕も肩書きにとらわれた意見を言われることがすごく多くて。そこに疑問を抱いてたからこそ今は自分らしさを大切にしてるので、エバンジェリストに選んでいただいたのはすごくうれしかったんですね。ただ、ダイバーシティっていう言葉がどれくらいみんなに届いてるかっていったら、やっぱりまだピンとこない方も多いと思うので、そこを表現していこうと。
──「多様性」と訳しても、日常的な言葉からはちょっと距離がありますもんね。
普通に話してて「もっと“多様性”じゃない?」とか言っても、みんな「えー?」ってなっちゃう。なんか頭よさそうじゃないですか(笑)。そういうことをシンプルにハッピーに届けられるのが歌のいいところなので、今回もいい感じになったんじゃないかなって思います。
──理屈っぽくなりかねないメッセージを、すごく親しみやすく伝えていると思いました。
難しい言葉を並べたり、いろんな喩えにして表現するよりも、いろんな世代の方に聴いていただけて、ストレートに伝わるようにがんばりました。ヒャダインさんのお力はもちろん大きいし、僕はとにかくみんなに届けたい!っていう気持ちでしたね。配信シングル第2弾の「Link」のときは感動してくれた方がすごく多かったので、自分の中で3曲目はもっと激しくバンバンバン!と楽しみたいなって気分があって、メッセージはしっかり伝えつつ、みんなで騒げるような感じも意識しました。
僕らしく、かわいく、あくまでもハッピーに
──ヒャダインさんもRYUCHELLさんの思考を理解してくれているんですね。
すごくわかってくれます。頭がよくてセンスがよくて仕事が早くて、何もかもがすごい方なんですけど、言葉の1つひとつに優しさを感じるんですよね。僕のこともすごく優しい目で見守ってくれてて、アーティストとしての僕をしっかり愛してくれてるからこそ書ける言葉なんじゃないかなって思います。みんなが明日を自分らしく、キラキラがんばって生きられるようにと思って歌を作ってますけど、「どこにこだわって、どこで折れるべきか」っていうところで悩んでいたときにスタッフさんの紹介でヒャダインさんと出会えたんです。僕の気持ちをすごくうまく表現してくれて、「こうしたらみんなに伝わるのか!」って思いました。ヒャダインさんとの出会いは本当に大きいですね。
──「理解はできなくても 認めてほしいんだよ 多様性(ダイバーシティ)」というフレーズが印象的です。理解し合おうと言うと難しくなってしまうけど、まずは共存を、と現実をしっかり見据えた歌だなと感じました。
それは本当によく思います。例えば僕がすごくカラフルなファッションをしているからって、モノトーンのコーデばっかりの人を否定するのは違うし、「いろんな生き方があっていい」っていうことを伝えるいい言葉を書いてくださったと思います。
──RYUCHELLさん自身の言葉もたくさん入っているんですよね。
「Link」のときと同じ感じで、例えば「教科書は自分の中にある」っていうところは僕の作文から抽出して使ってくれています。前例のないことをやるのは勇気がいるけど、怖がってやらないのはもったいないと思うんです。もちろんマナーやルールは守りつつ、そのうえで自分を表現できればウキウキ、キラキラできるし、次のステップに行けるし、そういう考えは常に大事にしてるので。あと「僕が 歩いた 足跡にはラメが輝くよ」も、そのまんま僕が書いた言葉ですね。険しい道でも自信を持って前に進んでいこうよっていうことを表現したかったんですけど、ただ伝えるんじゃなくて、僕らしく、かわいく、あくまでもハッピーに……と心がけてこう表現しました。
──まじめなメッセージをポップに伝えたこの曲を象徴する、素敵な表現です。
僕が1980~90年代の洋楽が好きなのは、ただ明るいだけじゃなくて、ちょっとした寂しさとか不安とか苦しさみたいなものが漂ってるからなんです。そういう曲をヒャダインさんに送って、参考にして作っていただくんですよ。
──ちなみにRYUCHELLさんの好きなアーティストって誰ですか? 前に別のインタビューでカイリー・ミノーグやジェイソン・ドノヴァンに触れていたのは見たことがあるんですが。
その人たちはもちろん好きです。あと、この間ラジオに出たときにディヴァインさんの曲を聴いて気に入りました。やっぱりユーロビートみたいなのがすごく好きですね。僕の楽曲のダンスにも合うので、その要素を取り入れるために聴いたりします。1980~90年代の洋楽をずっと聴いてると、「あっ、これ次の曲に使いたい!」の連続なんです(笑)。
──世代的には昔の音楽ですよね。好きになったきっかけは?
小学校6年生ぐらいのときに映画「ヘアスプレー」(2007年公開)を見たんです。あの映画に使われているのは1950~60年代の曲ばっかりですけど、それから60年代の、例えばThe Supremesとかをよく聴くようになって。その後ミュージカルにハマったんだけど、例えば「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年製作)を見て「あ、僕、ディスコは好きじゃない……この時代は違う」って思ったりして。そうやってだんだんと昔のファッションや音楽を知っていく中で、好きなのが80~90年代だってことがわかっていきました。それからはYouTubeで当時の映像を見て勉強したりしてどっぷりハマって、テレビに出るときもエアロビボーイを意識してヘアバンドをして、カラータイツを穿いてチークも入れて、乗ったこともないくせに「得意なもの:ローラースケート」とかプロフィールに書いたりして(笑)。だからずっとその時代が好きですね。いろんなものを見た過程で「これは好き、これは嫌い」っていうものを育てられたと思います。「これもいい、あれもいい」となってたら、音楽もいろんなジャンルをやりたすぎてゴチャゴチャになっていたと思うんですけど。好きなものが明確になったときに音楽活動を始められたから、そこにこだわれたのはすごくよかったなって思います。
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僕がメイクをする理由