緑黄色社会「風に乗る」インタビュー|劇場アニメ「パリに咲くエトワール」と重なるバンドの軌跡 (3/3)

曲の世界をぶち壊しに来るエレキ

──歌詞は、例えば「おそら」という言葉が出てきたり、ちょっと子供っぽい言葉遣いになっているところも印象的でした。その人の中にずっと残り続けている子供の頃の心が表れているような歌詞ですよね。

長屋 まさに幼心みたいなものを描きたくて。この挿入歌が流れるのが、主人公が行き詰まって、壁にぶち当たるシーンなんです。自問自答しながらも、自分が少女だった頃のこと、無邪気に絵が好きだった頃の憧れを思い出して、でも「それだけでは先に行けない」という葛藤がある。そういう部分を表現したかったんです。なので、歌詞は言葉遣いを幼くしたり、ひらがなを多くしたり。そういう部分は意識しました。

──「風に乗る」と「étoile」は、ともにクラシカルな生楽器が使われているという点では音楽性の共通項はあるけど、想起させるものは対照的で。そんな2曲がシングルの中で並んでいるというのがいいですね。

長屋 そう思います。テーマも相まって、太陽と月みたいなシングルだなと。「風に乗る」は青空やさわやかな情景が浮かぶし、「étoile」は夜空が思い浮かぶような、対比的な作品だなと思います。

長屋晴子(Vo, G)

長屋晴子(Vo, G)

──「étoile」はエレキギターのようなロックバンド的な音も聞こえてきますが、レコーディングはいかがでしたか?

穴見 この曲は、まずストリングスチームとpeppeが一緒に録って、そのあとに僕がコントラバスを弾いて、壱誓がエレキを入れるという感じで。

小林 映画で流れる部分にはエレキは入ってないんだけどね。

長屋 映画で使われるのはワンコーラスくらいの尺で、そこが終わったあとにエレキが出てくるんですけど、そのエレキがいいんだよね。

小林 いきなり曲の世界をぶち壊しに来るエレキ(笑)。

長屋 でも、音単体で聴いたらぶち壊すような音だけど、曲の中でうまく混ざり合っていて。「これって合うんだ!」という驚きがありました。ごはんにレタスを乗せてタコライスにする、みたいな(笑)。

peppe あはははは。

小林 ここのエレキギター、自分は「まずはかなりエグめに作ったものをみんなに聴いてもらって、そこから徐々にエグみを減らしていこう」と思っていたんですけど、意外と最初の一番エグい状態をみんなが「いい」と言ってくれたんです(笑)。

長屋 思いのほかいい感じで混ざっちゃったんだよね(笑)。私は好きです。

──僕も素晴らしい味わいのエレキギターだと思いました。映画を観て、挿入歌として流れるものを聴いたあとに音源でフル尺を聴くと、よりたくさんのものが聞こえてくる、という体験もできそうですね。

長屋 そうなんです。「étoile」は、映画と音源で「印象が変わる」というよりは「より膨らむ」感じの曲だと思います。

緑黄色社会

緑黄色社会

まだまだ私たち、音楽できるな

──最後に、ライブの話も聞かせてください。前回の音楽ナタリーでのインタビューはアジアツアーが始まる直前に行いましたが(参照:緑黄色社会「My Answer」インタビュー|「緊急取調室」新主題歌で描く“選択”と“迷い”)、そのアジアツアーは、結果的にどんなものをバンドにもたらしましたか?

長屋 本当にアジアツアーがあってよかったなという気持ちでいっぱいです。日本以外にも、こんなに緑黄色社会の音楽を求めている人たちがいるんだって、目の当たりにできて。それまでSNS上のコメントとかでしか感じられなかったことを、その場で直接感じられました。ずっと待っていてくださったからこそ、熱量もすごかった。涙をグッと堪える場面が何度もありました。楽しみ方は場所ごとに違っていたけど、みんな本能のままに音楽を受け取って楽しんでくれているような気がして。それが、私たちがちょっと忘れかけていたものでもあったなと。音楽の本質みたいなものに立ち返るようなツアーでした。

小林 お客さんのノリ方やライブの楽しみ方の常識が、地域によって全然違うんです。

長屋 人気の曲も違うしね。印象的だったのはインドネシアで、最前列の人たち……きっとその場で知り合った人たちなんですけど、その人たちが肩を組んで足を上げて、ダンスをしながら「Mela!」を聴いていて(笑)。今までそんなことは一度もなかったんですよ。ほかにも、普段はシンガロングが起きない曲でシンガロングが起こることがあって。

小林 「花になって」の長屋だけのパートでも、みんな歌ってたからね(笑)。

長屋 一番面白かったのは「Shout Baby」。これもインドネシアだったかな。私がアカペラになる部分があって、尺も拍も気にせずフリーで歌うんですけど、そこもみんな一緒に歌ってくれたんです(笑)。あえて間を開けた部分でもみんな歌っていて。そこはちょっと笑いそうになりました(笑)。

穴見 あとインドネシアは、2階席の真ん中にいる人が1人でめちゃくちゃ踊っているのが見えて。

peppe 私も見えた!

穴見 で、終演後に「媒体の人が楽屋挨拶に来ます」と言われて来たのがその人だった(笑)。汗びっしょりで。

穴見真吾(B)

穴見真吾(B)

長屋 関係者もめちゃくちゃノッてるんだよね。そんなこと、日本ではあまりないじゃないですか。本当に刺激的な日々を短期間でギュッと過ごせたなと思います。

peppe 私は、このアジアツアーで音楽寿命が延びたなと思いました。いつか困難が降りかかっても、あのときのみんなの顔を思い出せば大丈夫だなって。「まだまだ私たち、音楽できるな」と感じました。

長屋 団結力も増したよね。スタッフさんもコンパクトな編成で行ったんです。その中で機材トラブルや体調不良が起こるし、自由時間もあまりないタイトな日程だったけど、みんなで力を合わせて強くなった気がします。いい経験でした。

──4月には対バンイベント「緑黄色夜祭 vol.13」と「緑黄色大夜祭2026」が開催されますね。この2つのイベントに向けての意気込みは?

長屋 今回の「緑黄色夜祭 vol.13」は、大阪が鈴木愛理ちゃん、東京がjo0jiさんとのツーマンなんですけど、「夜祭」は「大夜祭」に比べてもより“VS感”が強いし、ツーマンだからこそ世界観が濃くなるし、私たちには欠かせないイベントなんです。鈴木愛理ちゃんは私が個人的に友達で、いつも仲よくしているけど、思えばずっと友達として会ってきただけで、ミュージシャンとして会ったことはなかったんです。だから、「同じステージに立ちたいな」とずっと思っていて。なので、この機会でツーマンできてすごくうれしい。

小林 jo0jiくんは、何年か前から僕がライブを観に行っていて。挨拶もしていたし、僕としてはずっと競演したい相手だったんです。

──それぞれ毛色が違うツーマンでいいですよね。そして「緑黄色大夜祭」が2年ぶりに開催されるということで。

長屋 前回、横浜アリーナで開催した「大夜祭」が、私たちにとって大きなものになっていて。すごく楽しかったけど、楽しいだけじゃなくて刺激をもらった。前回も両日ともにいろんなジャンルのアーティストをお呼びしたけど、ちょっと本当に嫌になるくらい(笑)、みんなすごいライブをしたんですよ。

小林 途中、いきものがかりさんのワンマンライブを観ているのかと思ったもん(笑)。

穴見 「もう俺らの出る幕はないな」って(笑)。

長屋 でも、そのくらいのものを目の当たりにして、コテンパンにされたからこそ、みんな立ち上がって強くなれたし、私たちだけじゃなく、来てくださった方たちの満足度の高さも感じられた。しかも今回は、地元・愛知県での開催で。私たちとしては「緑黄色大夜祭」のお祭り感をもっとパワーアップさせていきたいんですよね。それを実現できる力が付いてきていると思うからこそ、楽しみにしていてほしいです。出演してくださるアーティストも、なかなか同時に観られない組み合わせだし、初めてご一緒する方もいるので。その“新しい組み合わせ”も楽しんでほしい。

小林 僕らができることって、ジャンルレスに、いろんなものの壁を取っ払っていくことなので。それをバンドの生身のエネルギーでまとめて、パッケージして、お祭りにする。今回の「緑黄色大夜祭」も、僕らにしかできないことができると思います。

公演情報

緑黄色夜祭 vol.13

  • 2026年4月13日(月)大阪府 Zepp Osaka Bayside
    <出演者>
    鈴木愛理 / 緑黄色社会
  • 2026年4月16日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
    <出演者>
    jo0ji / 緑黄色社会

緑黄色大夜祭2026

  • 2026年4月25日(土)愛知県 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
    <出演者>
    ORANGE RANGE / CUTIE STREET / 大塚 愛 / 緑黄色社会
    スペシャルゲスト:見取り図
  • 2026年4月26日(日)愛知県 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
    <出演者>
    スキマスイッチ / BE:FIRST / 礼賛 / 緑黄色社会
    スペシャルゲスト:ジェラードン

緑黄色社会アリーナツアー2026

  • 2026年9月19日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
  • 2026年9月20日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
  • 2026年10月10日(土)福岡県 マリンメッセ福岡A館
  • 2026年10月11日(日)福岡県 マリンメッセ福岡A館
  • 2026年10月23日(金)大阪府 大阪城ホール
  • 2026年10月24日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2026年11月13日(金)愛知県 IGアリーナ
  • 2026年11月14日(土)愛知県 IGアリーナ
  • 2026年12月5日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2026年12月6日(日)神奈川県 横浜アリーナ

プロフィール

緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)

高校の同級生だった長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G)、peppe(Key)と、小林の幼馴染・穴見真吾(B)によって2012年に結成された愛知県出身の4人組バンド。2013年に10代限定のロックフェス「閃光ライオット」で準優勝したのを皮切りに活動を本格化させる。2018年に1stアルバム「緑黄色社会」をリリースし、それ以降、映画・ドラマ・アニメの主題歌を多数手がけるなど躍進。2020年発表のアルバム「SINGALONG」は各ランキングで1位を獲得し、リード曲「Mela!」はストリーミング再生数が5億回を突破するバンドの代表曲に。2022年9月には初の東京・日本武道館公演を2日間にわたり開催し、同年12月に「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2025年2月に5thアルバム「Channel U」を発表。翌2026年3月にシングル「風に乗る」をリリースし、4月に対バンイベント「緑黄色夜祭 vol.13」「緑黄色大夜祭2026」を開催。9月から5都市を回るアリーナツアーを開催する。