ナタリー PowerPush - ROTTENGRAFFTY

13年の歴史を振り返る“金閣銀閣”ベスト

ROTTENGRAFFTYが初のベストアルバム「SILVER」をリリースした。本作にはライブで人気の高い楽曲を中心に、シングルやアルバムからピックアップした初期ナンバーを多数収録。さらに、新曲「銀色スターリー」も含まれており、ROTTENGRAFFTY入門編にふさわしい内容になっている。

ナタリーではメンバーのNOBUYA(Vo)とKAZUOMI(G, Programming)にインタビューを実施。ベストアルバムを制作した理由や選曲の基準をはじめ、曲作りについてやバンドのスタンスまでさまざまな話を訊いた。

取材・文/高橋美穂

京都のバンドだから金閣銀閣はどうだろうって

──まず、なぜ今のタイミングでシングル&ベストアルバムを出すことになったんですか?

KAZUOMI 僕ら、4年間くらい音源を出せなかった時期を経て、去年に「This World」を、今年は「FAMILIARIZE」を出したんですね。だから、この2枚を通じて僕らのライブに来るようになったり知ってくれたりした人は多いと思うんですよ。それに対して、僕らのライブって昔の曲もずっとやり続けてるので、そういう人らに向けて過去のロットンもわかってもらえたらなって思ったのが、ベストを出した大きな理由ですね。

──今冬には、同じコンセプトの「GOLD」もリリースされる予定ですが、2部作になったのはなぜですか?

ライブ写真

NOBUYA バンドを13年間やってきて曲も多いので、1枚には収めきれないから2部作にしました。で、2部作にするならタイトルはどうしようって考えたときに、僕らは京都のバンドなんで、金閣銀閣みたいな感じはどうだろうって。そこから銀っていうテーマで新曲「銀色スターリー」もできあがっていった感じです。いろんな意味を持たそうっていう気持ちはあるんですけど、紐解けば金閣銀閣だと。

KAZUOMI 昔、金閣銀閣をモチーフにしたグッズを作ったりしていて、そんなの面白いんちゃうかって。ベストアルバムでも作品性を持たせたかったんですよ。新曲も入れたし、曲順も年代ごとじゃなく流れを考えたし。

──なるほど! 今作に限らず、ROTTENGRAFFTYからは京都のバンドであることに誇りを持っているように見えていたんですけど、どうですか?

NOBUYA ロットンを始めたのは23~4歳くらいなんですけど、その頃は京都を背負ってるとは考えてなくて。ただ、ライブを続けて、CDも出し続けてるうちに、支えてくれるファンの認識が“京都のバンド”になっていって、逆に教えてもらったみたいなところはあります。「俺は夢を諦めたけど、お前らに夢を託したからがんばってくれ」っていう仲間も京都にたくさんいたし、京都でのロットンのライブを観たいっていう人も多いし。

──選曲は「GOLD」らしい曲、「SILVER」らしい曲って分けていったんですか?

KAZUOMI そこまでは考えてなかった(笑)。

NOBUYA どの曲を収録しようって候補曲を上げていったんですよね。それから2つに分けるのがすごく難しくて。最終的には、ライブのセットリストを決めるように考えてたんです。ワンマン2DAYSがあるとしたらって例えて。あと、同じ作品からの曲は3曲以上入れないようにしようっていうところも意識した気がしますね。

──ライブバンドのならではの発想ですね。

NOBUYA そうですね。しばらくライブに来ていなかったお客さんもいると思うけど、このベストを聴いてまたライブに行きたいなって思ってくれたらいいなって。

100点よりも120点か0点か

──ライブで新しいお客さんが昔の曲でも盛り上がれるように、そして昔のお客さんが再びライブに来るようにっていうところで、このアルバムはすべてライブにつながっていますね。

ライブ写真

KAZUOMI サウンドも、レコーディングに使ったスタジオや楽器も作品ごとに全部違うから、写真のアルバムを見てるみたいな感じ。でも、ここに入ってる曲はライブでやり続けている曲が多いから、そこまで過去のものとは思えないんですよね。

──音楽性はかなり変遷を経てきたバンドだと思いますが、そのときどきに興味があるものを純粋にやってきた感じなんでしょうか?

KAZUOMI そうですね。ただ、それを取り入れつつも、すごく完成度の高いものにすることが目的ではなくて。平均的な合格点の曲になっても面白くないと思うし、自分らなりに解釈したへんてこな形がすごくオリジナリティになると思うんです。ロットンってそうやって曲を作ってきたなって、今回昔の曲を聴いて思ったんですよ。「100点よりも120点か0点か」って極端なことをロットンでやりたいっていう意識は、メンバー全員にあったと思う。そういう気持ちは今も変わってないですね。

──だから、毎回驚かされてきたんですよ(笑)。

KAZUOMI そうですよね(笑)。「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence」みたいな4つ打ちをやったかと思えば、パンキッシュな曲もやったりするから、ジャンルで括りにくいっていうか。ジャンルって宗教に似ていて、自分が何を信じるかだと思うんですけど、僕らは「ROTTENGRAFFTYというジャンル」になりたいと強く思っていたから、へんてこな曲ばっかりできていったんですね(笑)。

──パンクを極めるとか、打ち込みを極めるとかじゃなく。

KAZUOMI それも素晴らしいと思うけど、そうなれへんし、追求する人には勝てへんし。

NOBUYA KAZUOMIがデモを制作してきて「うわっ、超カッコいい!」って思う曲って、みんな一緒なんですよ。どこか突出していて、誰もやってないような曲で。それって、中学生くらいのときにいろんな音楽を聴いて「この曲、めっちゃカッコいいな!」って思った感覚と一緒なんですよね。そこに対して、どんなメロディを付けて、どんな歌詞を書いて、ライブでどんな感じになってって考えて作っていくやり方だと、ロットンはいい曲ができやすいなって。型にはまったものに対して「こうしないといけない」って感じで作った曲は、ライブでもそんなにお客さんに反応してもらえなかったりするんです。以前は衝動だけでやったんですけど、プラス、今はスキルが付いてきていて、いろんなジャンルを取り入れてうまく曲につながっていってると思います。誰もがROTTENGRAFFTYって思えるような音楽を「This World」や「FAMILIARIZE」で作れるようになったかなって。

KAZUOMI そうかもしれない。

──すごくわかります。今作に収録されているような楽曲を経たからこそ、オリジナリティが濃い2作品が完成したんでしょうね。

KAZUOMI ありがとうございます。ベスト盤に入っている曲って客観的になれないまま作ってたんですけど、「ようわからへんけどええやろ!」って押し切るパワーは感じますね。

NOBUYA 「俺らカッコええやろ!」って訊いたら「ああ、カッコいい!」って言わせてたというか(笑)。納得せざるを得ないような威圧感はめちゃめちゃ放ってたと思いますね。

ベストアルバム「SILVER」 / 2011年7月6日発売 / 2980円(税込) / PINEFIELDS RECORDINGS / PINE-0014

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CD収録曲
  1. 銀色スターリー
  2. 切り札(CLASSICK)
  3. 毒学PO.P 革新犯(Synchronicitizm)
  4. 零戦SOUNDSYSTEM(えきさぴこ)
  5. 悪巧み~MerryChristmas Mr.Lawrence(CLASSICK)
  6. RATMAN(えきさぴこ)
  7. ASIAN MARKET POW(Synchronicitizm)
  8. フロンティアスカンク(CLASSICK)
  9. イノセンス(未収録音源)
  10. 「緑と青のコントラスト」(GRIND VIBES)
  11. あ・うん(RadicalPeace×Radical Genocide)
  12. 075GRAFFITY(GRINDVIBES)
  13. Bubble Bobble Bowl(SILVER Ver.)
ROTTENGRAFFTY(ろっとんぐらふてぃ)

NOBUYA(Vo)、N∀OKI(Vo)、KAZUOMI(G, Programming)、侑威地(B)、HIROSHI(Dr)により1999年に京都で結成された5人組バンド。パンクやラウドロック、打ち込みなどさまざまな要素を取り入れたミクスチャーサウンドが魅力で、関西を中心に精力的なライブ活動を行う。2001年2月にミニアルバム「RADICAL PEACE×RADICAL GENOCIDE」をリリース。2003年3月発売のミニアルバム「SYNCHRONICITIZM」ではIKUZONE(Dragon Ash)をプロデューサーに迎え、楽曲に更なる厚みを加えた。同年11月にシングル「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence」でメジャーデビュー。その後も数々の作品を生み出し、2006年にJ(LUNA SEA)が立ち上げた新レーベル「INFERNO RECORDS」に移籍してシングル「マンダーラ」をリリースした。2008年7月には10-FEET主催フェス「京都大作戦2008 ~去年は台風でごめんな祭~」にオープニングアクトとして出演。2010年に約4年ぶりとなるアルバム「This World」を発表し、ロックファンに健在ぶりをアピールした。