くるり|試行錯誤で見出した新たな音と手法

歌うの、楽しくなりましたよ

──このアルバムは本当に音色がいいですよね。

岸田 谷川氏が持っているスタジオにいろんな機材が置いてあって。いくつかビンテージギターやベースをお借りしたんですけど、録るときにはその年代の鳴りに近くして、使い勝手と再現性がいい最新のプラグインなんかをうまく組み合わせてたんです。実機にこだわる人なんで、メロトロンとかはローランドのS770っていう、今使ってる人がいたらヤバい1990年代の16ビットのデジタルサンプラーを使ったりして。それぞれの楽器の鳴りだったり、マイクプリを通したときのいいなじみ方だったり、けっこうこだわって作りました。

──「この線は水平線」も音がよくて。ギターの音だけですごい驚いたと言うか。特別に新しいことをしているように聞こえないんだけど、ギターの音色とその配置と鳴らし方ですごく新鮮に響いてる。

岸田繁(Vo, G)

岸田 この曲に関しては、いろんなミュージシャンにどうやってるのか聞かれたんですよ。実際のところは、ギターをリアで弾こうと思っていたのをセンターになったままで弾いてて。あとで録り直そうと思ってたんだけど、そのままパッケージされた感じでしたね。たまたまうまくいったんです。リードギターは想定していたキーだと高すぎて全然歌えなくてどんどんどんどん下げていったんですけど。最初はC#にしようって言ってたけど、カポタストを使うとキーが上がっていくから、リードギターだけはC#まで下げて。さらに柔らかいピックで弾いたりしてるんです。パッと聴いた人は「シンプルなロック」とか言いそうな感じやけど、実は未整理なもんがバーッと入ってたりするんです。

──なるほど。

岸田 あと、ツアーのメンバーの松本大樹くんがレスポールのギターっぽい音でリードギターを入れてくれたんです。全体のピッチ感の揺らぎみたいなのを、ハルモニウムとかピアノオルガンとか、電動アコーディオンみたいな音でずーっとドローンを重ねて。2度とか4度とかの倍音を重ねて、全体のチューニングの悪さの間を取ったと言うか。そうしたら思い描いていたような世界観にグッと近付いたんです。そのときは「このレコーディング成功したかも」って思いました。

──想像以上に変なことしてますね。このアルバムは全体的にいろんなことをやっているんですけど、聴きようによってはすごくシンプルに聞こえる作品だと思います。

岸田 そう。山で何日も藪に入って、毒蛇とかから逃げたりしながら獲物を待ち伏せして、キジとか撃って絞めて。全身かぶれながら野草とか採ってきて、何日も煮詰めたりして出汁を取って……最終的に「小鉢です」ってあっさり出したみたいな感じかな。

──(笑)。僕は複雑なはずのものが、シンプルに聞こえるのがこのアルバムの面白さだと思ってます。あとボーカルは曲ごとにかなり質感が違いますね。

岸田 2カ所で録った違いですかね。マイキングも2種類あって。小泉大輔くんが録ったのと谷川さんで録ってもらったのも違うとは思います。

──曲ごとに時期なのか、体調なのか、気分なのかわかりませんが、そこらへんも歌に出ている気がしました。

岸田 やる気のバロメーターかな(笑)。

佐藤征史(B, Vo)

佐藤 わりとデモの段階のテイクを使ってるのが多いからだと思います。本チャンで気合いが入ってるテイクより、デモの素朴な歌のほうがいいってなったものもありましたね。本人を横にして言うのもあれなんですけど、年齢のせいかたっぷり歌うようになってきたんです。「もうちょっとサクっと歌ったら、曲と合うと思うねんけど」って言っても本人はたっぷりと……。

岸田 わざとそうやって歌ってるんだよ……。

佐藤 いやいや、あとで聞いたら「あ、なんかこれクサいわー」って自分で言うたりするんですよ(笑)。そういうのもあって、デモの段階のものを使ったりしてます。それを聴きながら自分らもレコーディングしてるので、より演奏に合ったりしてるのかもしれない。

岸田 もともと僕は歌に興味がなくて、上手なほうじゃないんで、昔はあまり歌いたい気持ちもなかったんです。叫んでるもの以外はずっと直線的な棒歌いやったんですよ。それがアルバム5枚目か6枚目くらいから、語尾に小さーいビブラートが付き始めて。最近はけっこうビブラートかかってるんです。これどんどん年齢と共にかかってくるなっていうのは痛感してるんですよね。

ファンファン なんか、最近歌うの楽しそうですよね。

岸田 楽しくなりましたよ(笑)。だいぶ、去年も布施明さんからインスピレーションを受けましたからね。昔に比べて、楽しく歌ってます。

くるり
京都音楽博覧会2018 in 梅小路公園

2018年9月23日(日・祝)京都府 梅小路公園芝生広場
OPEN 10:30 / START 12:00(予定)

出演者くるり / ASIAN KUNG-FU GENERATION / クラウド・ルー / STARDUST REVUE / 手嶌葵 / never young beach / ハナレグミ

くるりワンマンライブ2018
  • 2018年10月8日(月・祝)東京都 中野サンプラザホール
  • 2018年10月9日(火)東京都 中野サンプラザホール